3話 勉強会(凛視点)その1

 ――鐘の音が鳴る。


「はい、これにて授業が終わります。号令…あぁ、委員長の神々君!」

「はい。起立、気をつけ、礼」

「ありがとうございました」


 クラスメイト皆で挨拶をした。


 放課後の勉強会に思いをはせながら、帰宅の準備をする。


 すると、

「おわったー!」


 気の抜けるような無邪気な笑顔浮かべた親友、玲奈が抱き付いてきた。


「もう、抱き付くのはやめてって何度も言ってるでしょ!」

「だってぇー、長年の癖は抜けないよ」


 しょうがないなぁ。


 そう思いながら、玲奈の頭を撫でる。こうやって甘やかしているせいだとは分かっているが、ついつい、そうしてしまう。


「ねえねぇ、この後の勉強会に神々君を呼ぶって本当?」

「そうだけど……?」


 それがどうしたの?という意を含ませて言った。


「いやさぁ、あの、凛が男の子を家に呼ぶんだよぉ。何かあるのか疑っても仕方なくない!」


 確かに、男の子を呼ぶのは初めてかもしれない。だけど、あのって何よ――。


「それでぇ、実際どうなの?」

「別になんともないわよ」


 これは本当なはずだ。朝のは、ちょっと緊張して変な方向に思考が向いてしまっただけ。


「ふぅーん、どうだか」


 玲奈がニヤニヤとむかつく顔をしたので、なでるのを少し強くしてやった。それでも、ニヤニヤはやめず、それと合わせて気持ちよさそうな顔をしていた。


 解せない…次はもっと強くしよう。


 そんなこんなで話をしていたら、神々君がホームルームを始めた。今の会話、聞かれてたかな――。


「皆さんー、静かにしてください」


 彼がそう言うと、たくさんのしゃべり声が一斉にやんだ。ほんと、人望に厚いなぁ。


 この後は、明日の予定、委員会からの連絡、先生の話と続いた。


 その後、「起立、気をつけ」と彼がいい、皆で「さようなら」と言ってホームルームが終わった。

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