それからは逃げられない

 気づけば、舞台に立っている。

 小さい頃からピアノを習っていて、舞台には小さい頃から立っていた。一時期嫌いになった時期もあったけど、その時はHIPHOPダンスも習っていたので舞台には立っていた。

 HIPHOPをやめてチアダンスにシフトしても、そこは舞台。なんなら小学3年生からは小学校の合唱団にいたので、そっちでも舞台に立っていた。

 中学生になって、合唱団とチアダンスはやめたのに、私の部活は演劇部。なんなら合唱祭では指揮者か伴奏者に必ずなっていた。

 高校に入った今。ピアノもやめたというのに、次の部活はバトン部。そして今年の音楽祭も指揮者だ。

 

 私を舞台がはなさない。

 逃さず、私の心の中でいつまでも光続ける。いつまでも私を魅了し続ける。


 ある日、友達とアイドルのライブを見に行った。割と大きな、ドームでのライブだ。友達は「かっこいい」だとか「曲がいい」だとか盛り上がっていた。だけど私の感想は…「私もあんなふうになりたい」だった。

 どんなライブに行っても、ミュージカルを見ても、私はそれを思ってしまうのだった。


 だがそれは、かなりチャレンジなこと。まあ安定を求めるお母さんは許さないだろうな。お父さんも止めるだろう。

 でも私はいつまでも考え続けている。あのキラキラと輝く舞台に立ちたい。

 もはや舞台の呪い。いつまでも私の心に居座り続ける。

 それに、私はもう味わってしまったのだ。


 ピアノの演奏が終わり、お辞儀する。するとたくさんの人が拍手してくれる嬉しさ。

 ダンス中に段々と増え始め、ゆくゆくは全員が一丸となる手拍子。

 カーテンコールに「おもしろかった」と言ってもらえる安心。

 全て最高。


 これは、魔法と言うべきか、呪術と言うべきか。

 たぶん私は、いくつになっても惹かれるのだろう。

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