サンキューサバンナ

 …ここで衝撃の事実を発表しようと思う。私の連載中作品・「いつも通り宝石を壊していたら、変な後輩ができた件について」は、とあることから出来上がった。


 当時私は中3で、受験終わりの開放ムードでいっぱいだった。そして思いついた。異世界ファンタジーが書きたい、と。

 でも異世界ファンタジーと言っても色々ある。ダンジョン行く?もふもふたちと戯れる?いきなり王子様に溺愛される?あ、最強能力でスローライフ?…どれもあるあるな気がしてしまった。なんか違うのがいい…。


 息抜きに何か食べようとリビングに向かうと弟が何かを真剣に見ている。なんと動物系の番組だった。「サバンナの動物たち」みたいな動物ドキュメンタリー。あいつ、動物好きだからな…。でも嫌に気になって、隣でヨーグルトを食べながら見ることにした。

 ちなみにプレーンヨーグルト。私的に1番美味しいと思っているのだ。なぜヨーグルトにフルーツを入れる?そのままで食べた方が美味しいだろ。


『あっ、ライオンがシマウマを捕まえた!』


 テレビからのナレーションと共に、ライオンがシマウマにかぶりつく。シマウマも抵抗したが、最終的には倒れてしまった。


「ライオンすごいね!かっこいい!」


 弟がライオンの強さに感嘆の声をあげる。でも私は思った。


「…シマウマがライオンに勝ったりはしないのかな。」

「しないでしょ!ライオン最強だもん!」

「………。」


 考えたことはないだろうか。ライオンに狩られるシマウマの気持ちを。きっととても怖くて、怖くて、死にたくないと思っているだろう。


 その感情を、描きたいと思ってしまった。異世界と共に。


 本来ならないであろう、人間が食われる側の世界。人間を食うのは、何かも分からない悍ましいものたち。でも主人公たちは立ち上がる。人間を守るために。


 もし数匹のシマウマにライオンを殺せる力が宿ったら?仲間を守ろうとするだろう。


 シマウマからライオンへの下剋上。

 かっこよくない?


 ちなみに宝石は、怖さを和らげるために入れた。いちいち心臓やら脳やらを狙っていたら怖すぎるだろ。『何か』にもコミュニティがあるから綺麗に死なせてあげたいし。


 つまりは、サバンナの動物たちからあれは生まれているのだ。…サバンナありがとう。サンキューサバンナ。

 気づけば私は、ヨーグルトを食べるのも忘れて弟と2人、動物ドキュメンタリーを真剣に見てしまった。


 ダンジョンやら魔王やらの異世界とは違うが、あれも立派な異世界だと言いたい。サバンナがベースの異世界…他にあったら教えて欲しいくらいだ。多分見つからないだろうから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る