第6章 大公爵

044 大侯爵への道

 モンテマニー侯爵こうしゃく屋敷やしきなかで。


メクバール執事しつじ

「侯爵様、ルナ殿たちと御縁ごえんが有って幸いでしたね。」


モンテマニー侯爵

「そうだな。

 わたしたちは、てんに愛されているかもしれないな。」


メクバール執事

「これからも手を貸して頂ければ助かりますね。」


モンテマニー侯爵

「だが、我々に我々の目的があるように、

 ルナ殿たちには、ルナ殿たちの目的があるだろう。」


メクバール執事

邪魔じゃましない範囲はんいで、協力を求めてはいかがですか?」


モンテマニー侯爵

「ルナ殿たちは優しいから、イヤとは言わないだろう。

 だが、面倒くさいと距離きょりかれたりしたら、かなしくなるだろうが。」


メクバール執事

「侯爵様は、大侯爵だいこうしゃくになる夢を、あきらめたのですか?」


モンテマニー侯爵

「いいや、それだけは絶対ぜったいかなえて見せる。

 そうでなくては、父よりも私の方が正しいと証明しょうめいできなくなる。」


 モンテマニー侯爵は、壁に掛けられた地図を見た。

 3つの領地が区分けされている。

 北が、Cunning《カニング》侯爵領、

 西が、Wider《ワイダー》侯爵領、

 東が、MonteMoney《モンテマニー》侯爵領。


 3人の侯爵が競い合って、国への納税額が一番高い者が大侯爵に成れる。

 父であるMonteTsuwamo《モンテツワモ》侯爵が強さだけを追い求めた理由でもあった。


メクバール執事

「侯爵様、あなたはうちにもそとにも戦うべき相手がいます。」


モンテマニー侯爵

「分かっておるわ。

 だから、地図を見ているのではないか?」


メクバール執事

「いいえ、分かっておられません。

 特に、侯爵様の領地にいるうちの敵たちは、ずるがしこくて裏表うらおもてがあるから、更迭こうてつする証拠しょうこを手に入れられません。

 だから、いじめや嫌がらせをたお正義せいぎ大義名分たいぎめいぶんとして、解任かいにんして侯爵様に味方する者たちに入れ替えなければならないのです。」


モンテマニー侯爵

うちの敵たちを調べて倒すことができる才能さいのうは、ルナ殿たちしかいないことは分かっている。」


メクバール執事

「じゃあ、今すぐ連絡して、つぎに会える日を確認しましょうか?」


 メクバール執事は、モンテマニー侯爵の前に、【大きなたてがはまった板、親機】を置いた。

 これは、ルナたちと交信こうしんするための通信機の親機である。


☆ 033 青紫の商才(12)モンテマニー公爵は良いひとだった 参照


モンテマニー侯爵

「わかった。

 覚悟を決めよう。」


 親機を操作して、ルナたちが持つ【小さなたて紋章もんしょうバッジ、子機】を呼び出した。


【大きな盾がはまった板、親機】

「ただいまのところ、おつなぎできません。

 なお、位置情報OFFです。

 ブツン。」


モンテマニー侯爵

「残念だが、ルナ殿たちを友達と思っていたのは、わしだけだったようだ。」


メクバール執事

「そんなことはないでしょう。

 ルナ殿たちは裏表もないし、社交辞令しゃこうじれいを言うようなひとたちにも見えませんでした。

 こちらから連絡があったことは、【小さな盾、会員バッジ】を見れば分かります。

 そのうち、いいえ、少なくとも、4人のうち誰かは気付くでしょう。」


モンテマニー侯爵

「そうであれば良いがな。

 わしは、良太郎りょうたろうの様子を見てから、眠ることにしよう。

 メクバールも休んでくれ。」


メクバール執事

「きっと、明日は連絡がありますよ。」


 モンテマニー侯爵は、さみしそうな後ろ姿で、右手を振って去っていった。



 翌朝、メクバール執事は、ルナたちの家と店の両方を見に行ったが、両方とも留守だった。



 3日後も連絡がなく、留守のままだった。


 モンテマニー侯爵は、何事もなかったように仕事をしていたが、気落ちしていることが誰の目にも明らかだった。


モンテマニー侯爵

「メクバール、すまんが、【大きな盾がはまった板、親機】は宝物庫ほうもつこに戻しておいてくれ。」


メクバール執事

「かしこまりました。」


メクバール執事 こころの声

『それでも、わすれたころに連絡が取れるかもしれない。

 だから、私の部屋の机においておこう。


 ルナ殿たちは、どうしているのだろう?


 お強い方々だから、どこかで倒れてしまったとは、考えにくいのだが。』

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