034 監察官(2)剣士紅丸の腕前

紅丸

「ルナ様? なぜですか?」


ルナ

「紅丸に怪我けがをしてしくないからだ。」


紅丸

「ルナ様に信じていただけないことがとてもかなしいです。


 5人ぐらい、まばたきするうちにたおしてみます。

やらせてください。」


ルナ

「わかったよ、紅丸。

 モンテマニー公爵こうしゃく様、あなたの警備員5人を連れてきてもらえますか?」


モンテマニー公爵

「メクバール、呼んできてくれ。」


メクバール執事

「はっ、ただちに。」





 警備員5人がやってきた。


警備隊長

「お呼びでしょうか。 公爵様。」


モンテマニー公爵

「6人分の竹刀しないと防具を持ってきてくれて、ありがとう。


 すまぬが、あなたたち5人で、あそこに座っている剣士紅丸殿の腕前をためして欲しい。」


警備隊長+警備員4人

「一対一でも、私達に勝てるものはそうはおりません。

 それを5人がかりなどと。」


 彼らは、紅丸と目を合わした途端とたんに、顔中から脂汗あぶらあせをかいていた。


紅丸

「お相手つかまつる。

手加減無用てかげんむようでお願いしたい。」


警備隊長+警備員4人

まいりました。

 お見逸みそれしました。

 勘弁かんべんしてください。」


メクバール執事

「あなたたち職務怠慢しょくむたいまんですよ。

 戦う前から楽しようとして!」


警備隊長+警備員4人

「メクバール、いい加減にしろ!

 俺たちが30人いても、かないっこない相手だぞ。」


メクバール執事

「普段から紳士的な言葉づかいをするあなたたちがそこまで動揺どうようするなんて。

紅丸殿の実力は本物なのですか?」


警備隊長

「べ、紅丸べにまる

 ま、まさか、そのカタナは、【妖刀斬ようとうざん 紅丸べにまる】ですか?」


紅丸

「くわしいですね。

 どこかで、お会いしたことが?」


警備隊長

「い、いいえ、剣士の間では有名だから知っているだけです。」


モンテマニー公爵

「そうか、有名なのか?

でもせっかく来てもらったのだから、紅丸殿の剣の腕をこの目で見せてもらえないだろうか?」


 モンテマニー公爵は、残念そうな表情で警備員たち5人とベニマルを交互こうごに見つめた。


警備隊長+警備員4人

「紅丸殿、手加減てかげんお願いします。」


紅丸

「竹刀を使って防具を付けた時点で、十分な手加減だと思うが?


 ルナ様、私のカタナを預かっていただけますか?」


モンテマニー公爵

「おお、見せてくれるか?

 剣道場に移動しよう。」





紅丸

「モンテマニー公爵、警備員5人を倒せばよいのですね。」


モンテマニー公爵

「ふむ、そうじゃのう?

 む、どうしたのだ。

 わたしがほこる警備員5人衆にんしゅうふるえておるのか?」


警備隊長+警備員4人

「紅丸殿、手加減てかげんお願いします。」


紅丸

「戦ってみる前から手加減を求められても、どうしたものか?」


メクバール執事

「それでは、こういうのはいかがでしょう。

 彼らの攻撃を3度ずつ、竹刀しないで受け止めて頂いた後で倒すというのは?」


紅丸

指導試合しどうじあいですか?

 1対1なら何度でも受けてあげられますが、乱戦の場合は、本番でのリズムがくるうからダメですね。」


モンテマニー公爵

「もし良ければ、一度手加減なしで、紅丸殿の腕前を見せてくれますか?」


紅丸

「心得た。

 では、始めてもらおうか?」


 警備員5人は覚悟を決めて、紅丸を取り囲んだ。


警備隊長+警備員4人

「「「「「やあーー!」」」」」


紅丸

「むん。」


 警備員5人の竹刀がくだり、警備員5人の防具が割れて、5方向に警備員たちが飛び散った。


紅丸

「ルナ様、モンテマニー公爵様、以上いじょうでございます。」


メクバール執事

「なぜ、紅丸殿の竹刀しないは無傷なのに、わが警備員たちの竹刀は砕け散ったのですか?」


紅丸

「剣を持つときに、闘気とうきまとわせたからです。

 剣の達人たつじんが持つ扇子せんすや割りばしは、素人しろうとが持つ真剣と変わりません。」


モンテマニー公爵

「紅丸殿、気を悪くしないで欲しい。

 メクバールは、素人のわたしのために、代わって質問してくれただけなのだ。


 少し休んでから、警備員たちに稽古けいこをつけてやってくれるか?」


紅丸

「今すぐでもかまいませんが?」


モンテマニー公爵

「はは、警備員たちが目を覚ますまで待ってやってくれ。

 メクバール、介抱かいほうを頼んだぞ。」


メクバール執事

「ははっ。」


 ボクたちは、お茶菓子ちゃがしを食べながら、待つことにした。





 警備員たちが目を覚まして、紅丸が剣の相手をしている。


 警備員が攻撃した結果は、2種類あった。


 1.攻撃する前に、剣を飛ばされる。

 2.攻撃を剣で受け止められる。


 ひらの警備員たち4人は、1.の割合が多かった。

 警備隊長は、2.の割合が多かった。


メクバール執事

「良くない攻撃は剣を落とされて、本番で通用する攻撃は剣で受けておられるのでしょうか?」


モンテマニー公爵

「そうであろうな。

 凄腕すごうでの警備員たちなのだが、紅丸殿には遠くおよばないということか?」


ルナ

「すごいよ、紅丸。

 物語の主人公みたいだ。」


 しばらくして・・・


警備隊長

「みんな、紅丸殿にお礼の言葉を。」


警備隊長+警備員4人

「「「「「ありがとうございました!」」」」」


紅丸

「気持ちの良い剣術でした。

あなたたちの心がきよらかであることがよくわかります。」


モンテマニー公爵

「お疲れ様でした。

 メクバール、警備員たちに、風呂と食事、休憩をとらせてやってくれ。」


メクバール執事

「旦那様の心遣いに敬服けいふくするばかりです。」


警備隊長+警備員4人

「「「「「公爵様、ありがとうございます!」」」」」


モンテマニー公爵

「うむ、今後ともよろしくな。」


警備隊長+警備員4人

「「「「「ははっ!」」」」」

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