018 黄花はどこだ(4)妖刀との闘い

 月夜つきよ ルナと、

紅姫べにひめ 外では紅丸べにまるは、

夜ご飯を食べて、食休みをしていた。


月夜つきよ ルナ

「家の中だから、紅姫と呼んでいいよね。

 ギルドのクエストお疲れまでした。


 クマと戦えるなんて、紅姫は本当に強いね。」


紅姫べにひめ 外では紅丸べにまる

愛刀あいとうの【妖刀斬ようとうざん 紅丸べにまる】のおかげです。」


妖刀斬ようとうざん 紅丸べにまる

拙者せっしゃを振るえる力が有るのは、紅姫だけでござる。

 紅姫がいなければ、拙者はただのかざりでござる。」


月夜 ルナ

「お互いにたたえる関係は素敵すてきだね。」


紅姫、紅丸

「「いやあ、れる。」」


 部屋に、ぴこーん、ピコーンという警報音けいほうおんが流れだした。


紅姫

「なんの音ですか?」


月夜 ルナ

「掲示板に、緊急きんきゅうクエストが入ったみたいだね。」


紅姫

「クエストって、なにですか?」


月夜 ルナ

「神様からの司令しれいかな?」


紅姫

最優先さいゆうせん課題かだいですね。」


月夜 ルナ

「もう寝たいんだけれどなあ。」



 月夜と紅姫は、家の中の掲示板の前に移動した。


<<緊急クエスト>>


 黄花おうかはどこだ。


 ※今夜中に、黄花を探して助け出せ!



月夜 ルナ

「うわあ、今夜中かあ。」


紅姫

「きっと生命せいめい危機ききせまっているのですよ。

 身支度みじたくととえてきます。

 少々しょうしょうちください。」


 紅姫は、部屋に向かって走り出した。


月夜 ルナ

「こころ強いな。」


イウラ《ガイド音声》

「ルウナ、聞こえますか?」


月夜 ルナ

「イウラ、ひさしぶりだね。」


イウラ《ガイド音声》

「そうね、本当はもう少し余裕よゆうがあるはずだったんだけど、事情じじょうが変わっちゃったの。

 悪いけれど、急いでくださいね。

 この家は、黄花のいる町までワープしたわ。


 黄花の居場所については、【妖刀斬ようとうざん 紅丸べにまる】が探し出せるわ。

 ただし、半径10m以内に近づかないとダメだから、聞き込みが必要よ。」


月夜 ルナ

「名前は黄花おうかだと分かっても意味があるのかな?」


イウラ《ガイド音声》

「どうして、そう思うの?」


月夜 ルナ

「紅姫だって、紅丸という偽名ぎめいを名乗っていたよね。

 黄花も偽名を名乗っているから、苦労くろうしそうだね。」


イウラ《ガイド音声》

「ねえ、ルウナ。 今夜は月がきれいよ。 月明かりの散歩を楽しんでね。

 じゃあ、がんばってね。」


 イウラとの通信が切れてしまった。


月夜 ルナ

「イウラ、その反応はんのうって、YESって意味いみだよね。」


 紅姫が戻ってきた。


紅姫 剣士 紅丸モード

「月夜。 待たせたでござる。」


月夜 ルナ

「ありがとう。 紅丸。

 よろしくたのむよ。


 扉を開けたら、3つ先の黄花がいる町だよ。」


紅丸

「いつのまに? でござるか?」


月夜 ルナ

「紅丸が着替えているあいだに、かな。」


紅丸

「月夜の屋敷やしきは、不思議ふしぎでござるな。」


月夜 ルナ

「そうだね。

 本当に不思議だよ。


 今回は、ひとの方だけでなく、カタナの方の紅丸の力”も”必要なんだ。」


妖刀斬ようとうざん 紅丸べにまる

「どういうことでござるか?」


月夜

「半径10m、具体的には、ちょっと待ってね。

 紅丸、そこに立っていてね。」


 月夜は、紅丸から5,6歩はなれた所まで歩いて行った。


月夜

「いまのボクと紅丸くらいの距離が、10mだよ。

 このくらいまで、黄花に近づくことが出来たら、カタナの方の紅丸が気づけるそうなんだ。」


妖刀斬ようとうざん 紅丸べにまる

「なにか気付いたら、お伝えします。」


月夜

「よろしくね。 紅丸。

 紅姫、行こうか?」


紅丸

「いまは、紅丸でござる。

 まあ、ややこしいですね。」


月夜

「そうだねえ。

 じゃあ、よろしくね。」



 扉を開けて、町で聞き込みをした結果、黄庵おうあんという医者が奉行所ぶぎょうしょつかまったと分かった。


月夜

「黄花との共通点は、黄色だけだね。」


紅丸

拙者せっしゃのときと似ているでござるな。」


月夜

「そうだねえ。 男性でないことをいのるよ。」


紅丸

「月夜殿は、本当に男性が嫌いなのですね。」


月夜

「ひと言で言うとてきだからね。

 味方のふりをした敵のこともあるから、気分が悪い。」


紅丸

「男性だったら、どうされますか?」


月夜

「助け出すまでは同じだよ。

 だけど、男性の場合は、遠くの安全な町まで連れて行って、おわかれするよ。」


紅丸

「たすけてくださるなら、ほっとします。」


月夜

「わたしやわたしの大事な人たちが同じ立場だったら、助けて欲しいからね。」


紅丸

「そうでござるな。」



 ふたりは、奉行所に着いた。


紅丸

「夜分失礼する。

 そちらで捕まっている黄庵殿の知り合いでござる。

 開門かいもんを願いたい。」


門番もんばん

「うえの者に聞くので、しばし待たれよ。」


 しばらくして、門番が戻ってきた。


門番もんばん

「残念ながら、通すわけには行かない。

 お帰りください。」


紅丸

「ひと目だけでも会わせて欲しい。

 そして、ひとことだけでも話をさせてはくれないか?」


門番もんばん

「だめだ、だめだ。 帰れ。

 うっ、やられた。」


 門番は、とつぜん倒れた。


月夜

「紅丸?

 【意識飛ばし】を使ったの?」


紅丸

「いえ、なにもしていません。」


門番

「神よ。 地下牢に閉じ込められた黄庵様を御救いください。」


 倒れた門番は小さい声で紅丸に伝えた。


月夜

「ありがとう。

 紅丸、しのびませてもらおう。」



 月夜と紅丸は階段を探して、地下牢に着いた。


月夜、右と左と前と、どれを選ぶべきだろう。


妖刀斬 紅丸

「月夜様、紅丸、左の道の奥からなにかを感じます。」


紅姫 紅丸

「月夜様。」


月夜

「ありがとう。行こう。」



 門番が二人いるろうおくに正座で座っている美男子びなんしの姿が見える。


月夜

「男性かあ。 残念。」


紅姫 紅丸

黄花おうか様につながる情報じょうほうられるかもしれませんよ。」


月夜

「そうねがうよ。

 じゃあ、門番をひとりずつ倒そうか?」


紅姫 紅丸

「いえ、おまかせくだされ!


 【意識飛ばし】 ×2 」


 門番のふたりは気を失って、倒れた。


月夜

「すごいよ。 紅丸。」


紅丸

「これくらい、簡単でござる。」


黄庵

「あなたがたは、いったい。」


月夜

「たすけに来たよ。」


黄庵

「わたしに、なにをもとめますか?」


紅丸

黄花おうか殿について知っていることが有れば、教えて頂きたい。」


黄庵

「おうか、というのは、薬草の名前でしょうか?」


月夜

「女性のなまえのはずなんだけど。」


黄庵

「思い出すまで、お時間をいただけますか?」


月夜

「うん、ゆっくりと思い出してね。」



3人は、奉行所の庭まで出てくることが出来た。


悪代官

「おのれ、なにやつじゃ!

 者ども、出会え!出会え!

 曲者くせものを切り捨てよ。」


月夜

つかまえよ。

 じゃないってことは、くろだね。」


紅丸

「月夜様、黄庵殿、拙者におまかせあれ!」


 紅丸は、せま剣士けんしたちをせた。


紅丸

峰打みねうちです。

 全員、気を失っているだけです。」


月夜

「紅丸様、素敵すてきです。」


黄庵

「こんなに強い剣士は見たことが有りません。」


 とつぜん、月夜の方に、短剣が飛んできた。


月夜

「あまい。」


 ボクは、短剣を叩き落した。


紅丸

「月夜殿、申し訳ござらん。

 御無事でなによりです。」


月夜

「さすがは奉行所だね。

 残心ざんしんをわすれたら、生きて帰れそうにないね。」


妖刀ようとうの剣士

流石さすがだな。

 深酒ふかざけをしないで良かった。」


 紅丸のほほにひとすじのあせが流れた。


紅丸

「月夜様、お気を付けください。

 あれは、妖刀です。


 わたしの旅の目的は、理性りせいをうしなった妖刀をくだくことです。」


妖刀の剣士

「お前の妖刀の方が少しだけ強いな。

 だが、剣士としては、俺の方が少し上だな。」


妖刀斬 紅丸

「月夜様から魔力を頂いていなかったら、拙者に勝ち目は無かった。

 月夜様、感謝いたします。」


紅丸

「剣士 紅丸 参る。」


妖刀の剣士

「お前ごときに名乗る気は無いな。」


紅丸

「くっ」


 ふたりの戦いが始まろうとしていた。

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