012 紅姫に会おう(4)お風呂に入ってもらった

赤い髪の男性

紅丸べにまるよね。

 でも、ながすぎない?」


 なんとなく、女性の声に聞こえる。


紅丸

月夜殿つきよどのが助けてくださったのです。」


ルナ

「こんにちは。 

 ルナです。

 あ、聞き取れないかな?

 またの名は、月の夜と書いて、月夜つきよと言います。」


赤い髪の男性

「月夜殿、かたじけない。」


 あ、気のせいだったみたいだ。

 男性の声だ。


ルナ

「どういたしまして。

 だけど、ボクは男性にはきらわれるようなんだ。

 元気になったら、出て行ってもらおう。


 もうすぐ夜になるから、一晩ひとばんだけはめてあげる。」


赤い髪の男性

「ご厚情こうじょう感謝かんしゃもうげます。


 月夜殿が美しい女性とは言え、恩人おんじんに手を出すようなことはいたしません。

 おんあだかえすような、恥知はじしらずなことはしません。」


月夜つきよ ルナ

「だといいけれどね。」


 ぐーと腹の鳴る音が聞こえた。

 ボクじゃない、目の前にいる赤い髪の男性だ。

 ずかしそうにしている。


月夜つきよ ルナ

武士ぶしわねど高楊枝たかようじか。

 おなかが減るくらいまで回復かいふくしてよかった。

 ちょっとっててね。」


 ボクは、冷蔵庫から弁当を取り出して、レンジでチンしてあたためた。

 そして、テーブルにいた。

 箸置はしおきの上にはし用意よういした。


月夜つきよ ルナ

「こっちにきて、すわって!」


 ボクは椅子いすをひいて、手招てまねきした。


赤い髪の男性

「とても、おいしそうな料理ですね。」


月夜つきよ ルナ

「どうぞ、食べてごらん。

 おいしいよ。」


赤い髪の男性

「かたじけない。」


 本当においしそうに食べ始めた。

 しかし、10分くらいで食べ終わってしまった。


月夜つきよ ルナ

「気に入ってくれたようで良かったよ。」


赤い髪の男性

「このうえない馳走ちそうでござった。」


月夜つきよ ルナ

「落ち着いたかな?

 あなたのことは、なんと呼べばいい?」


赤い髪の男性

紅丸べにまると申します。」


月夜つきよ ルナ

「あなたの剣と同じ名前なんだね。」


紅丸べにまるカタナ

「それがしとは、一心同体いっしんどうたいでございますから。」


月夜つきよ ルナ

「そうか、わかったよ。

 じゃあ、ひとの方の紅丸べにまる、お風呂ふろ案内あんないするよ。」


 ボクは風呂の使い方を説明した。

 そして、長く赤い髪を洗ってあげた。


赤い髪の男性

「うっとりするような香りですね。」


月夜つきよ ルナ

「ボクのお気に入りだからね。」


 もちろん、身体は紅丸に自分で洗ってもらった。


赤い髪の男性

「良い湯でした。

 久しぶりに心地良ここちよい気分になれました。」


月夜つきよ ルナ

「髪の毛をかわかしてあげる。

 この椅子いすすわってね。」


赤い髪の男性

月夜殿つきよどのに、いたれりくせりと世話せわをしてもらって、竜宮城りゅうぐうじょうにいるかのような気分きぶんじゃ。」


月夜つきよ ルナ

「それは良かった。

 浦島太郎うらしまたろうのように長居ながいしないでね。」


赤い髪の男性

手厳てきびしいな。

 約束通やくそくどおり、明日の朝には出ていく。

 心配しないでくれ。」


月夜つきよ ルナ

「よろしくね。

 さあ、出来たよ。

 手鏡てかがみを見てくれるかな。」


赤い髪の男性

「なんて美しいの、これがわたしなの。

 夢みたい。」


月夜つきよ ルナ

「紅丸さんは、ときどき女性のような声を出すね。」


赤い髪の男性

「す、すまぬ、びっくりすると、声が裏返ってしまうのだ。」


月夜つきよ ルナ

「そうなんだね。 でも好きな声だよ。」


赤い髪の男性

「てれてしまうな。」


月夜つきよ ルナ

「じゃあ、今日は、ここで眠ってね。

 なにかあったら、ボクは、この部屋にいるから、ドアをたたいてね。」


赤い髪の男性

「部屋が4つあるのですね。

 月夜、紅姫べにひめ

 えっ?」


月夜つきよ ルナ

「どうかした?」


赤い髪の男性

「知り合いと同じ名前だから、おどろいただけだ。」


月夜つきよ ルナ

「ふうん、紅丸の恋人かな?」


赤い髪の男性

「いや、恋人ではない。

 なんと言えばいいか?」


月夜つきよ ルナ

「そう、仲良くしてあげてね。

 おやすみなさい。」


赤い髪の男性

「ああ、おやすみなさい。」





 ルナ 月夜つきよ案内あんないされた布団ふとんの中に、赤い髪の男性がている。


紅丸べにまる カタナの方

紅姫べにひめさま、ご回復されて、まことに、まことに

 うれしゅうございます。」


紅姫べにひめ ヒトの方

「心配をかけてごめんね。

 紅丸。」


紅丸べにまる

「差し出がましいことを申し上げますが、姫様ひめさま。」


紅姫べにひめ

「なあに、紅丸?」

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