第3話 引っ越しでも………?
引っ越し先を決めた後。今日は引っ越す日だ。宮野花乃に知られないように、見られないようにこっそりと家から出て、車に乗らなければいけない。もちろん、雪乃を殺した恨みは晴れない。一生晴れないだろう。なぜなら、私の大切な妹。お母さんとお父さんの大事な娘。雪乃は、本当に天使だった。雪のように白くてきめ細やかな肌に、輝いている目。いつか、アイドルにスカウトされるんじゃないかと家族で話して、笑い合ったほどだ。私は、暗い表情のまま家を出て、車に乗った。お父さんが運転をしてくれる。こうして、引っ越しが始まった。でも、車の後ろにツインテールの女の子が立っていた。車が走れば女の子も走る。もしかして、と思ってよく見てみると、それは………。
「え……。ウソ、でしょ…?み、宮野花乃…?え?」
その子は、宮野花乃だった。確かに、幼稚園の仲が良かった頃にはよくこの車で色んな所に連れて行ってもらった。同じ車だから、きっと宮野花乃も気付いたに違いない。
「お母さん!どうしよう…!宮野花乃が…!私たちを追いかけてる!」
「え…?」
お母さんも、ゆっくりと振り向いた。そこには、不気味に少し笑っている宮野花乃がいた。手には、何と色々と凶器が握られている。バットや包丁…。雪乃が殺された時の凶器は、これだった。やっぱり、宮野花乃は私たちを殺そうとしている。私たち一家を、皆殺しにするために…?でも、こんなに早くも見つかってしまうとは。
「…警察に通報すればいいんだわ!道路に、凶器を持った女の子がうろついているって!」
お母さんが、車の外に聞こえないようにできるだけ小さな声で言った。私も、うなづく。
「それが1番いいよ。ここで車を止めて車から出ると、もう命の終わりだからね。あんな凶器が握られている宮野花乃には、敵わないよ…」
「きっと、このまま、走り続けても無駄よ。だって、追いかけているんだもの。新しい家まで、ずっと着いてくるに違いないわ。そうしたら、あの子たちも引っ越してくるかもしれないわ。…‥。どうしましょう。やっぱり、警察に通報した方がいいわ。じゃあ、通報するわね。静かにしてちょうだい。」
お母さんは、そう言って、バッグからスマホを取り出した。そして、警察と電話が繋がった。
「あの、警察の方ですか?!」
「はい、もしもし。そうですが?何かありましたか?」
女性の警察の落ち着いた声を聞いて、お母さんもようやく落ち着きを取り戻す。
「道路に、凶器を色々と持った女の子がうろついているんです!私たち、車の中にいて、走っているのですが、車が走るとその子も走り、車が止まるとその子も止まるんです!それに、しかも……」
お母さんが、警察に事情を説明した。娘がその子に殺されたこと、次は私たちの命を狙っていること、捕まえてほしいこと。
「…事情は分かりました。今から、そちらに向かいます。決して、走らないでください。そして、車から出ないでください。場所を教えていただいてもよろしいでしょうか。」
「はい、村山ビルの、隣の家の前の道路で、木のところです。なるべく、早くきていただけると幸いです。」
お母さんが、落ち着いたような声で言った。私は、小声で
「…。絶対にドアを開けないでね。…絶対に。」
と、お母さんに言う。お母さんは、「そんなの分かってる」と言いたげな顔をして、こくりとうなずいた。警察が来るまでの時間。私たちは、車の中で静かに、あまり宮野花乃に顔を見られないように、シートベルトを外してしゃがみ込んだ。外では、そんな私たちをカバーするかのように、厚い雲が辺りに広がっていた。
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