告白

 半畳の部屋が息苦しく思えた。

 本棚に隙間なく並んだアルバムに驚く透夜と戸鞠さん。

 小さなテレビとテーブル、それとイス。

 重々しく真面目な表情を浮かべる常務に釣られて、表情筋が硬くなる。


「かなえ、透夜君、こんな時間に申し訳ない」


 頭を深く下げた。


「お、お父さん、どうしたんですか? それに、ここは」

「……」

「柊木智里が使っていた書斎」


 覚悟を決めた途端、淡々と切り出す。

 智里の名前を出すと、戸鞠さんは俯いた。


「あの写真の……」

「僕の書斎を勝手に出入りしたのは、咎めない。ただ、これから僕が言うことをしっかり聞き、よく考えてほしい」

「……はい」


 ずっと強張り、恐怖に呑まれそうな瞳孔をした透夜。

 誰よりも不安げな我が子を黙って見守るしかない不甲斐ない父親だ。


「柊木智里はかなえの本当の、血のつながったお母さんで、君を生んで、亡くなる直前まで傍にいて、愛情を注いでくれた。智里は五十嵐さんの、前妻だった……」


 瞳孔が大きくなる。言葉は喉で塞き止められ、震える呼吸だけが聞こえた。


「つまり僕とは、血の繋がりが」

「やめて!!」


 拒絶する強い言葉だった。

 戸鞠さんの細く、品のある口調は大きくなった。

 唇が震え、両耳を塞ぐ。

 常務も初めて聞いた戸鞠さんの声に、目を伏せる。

 どんどん空気が重くなっていく……分かっていたが、それ以上の強い言葉に何も言い出せない。

 抱き寄せた透夜は、強張りながらも俺と常務を睨んだ。


「父さん、幸太郎さん、俺達って本当に?」

「……えぇ、DNA鑑定の結果報告書があります、間違いありません……本当はずっと黙っているつもりでした。住んでる場所も、学校も違います、いずれは海外に引っ越す予定でした。でもまさか、よりによって……」


 変わらない結果に愕然としているが、それでと透夜は前を見る。


「でも、俺別れたくないです。兄妹とか他人とか関係なくて、ずっと一緒にいたい」

「透夜……」


 見守ることしかできない。


「わ、私」


 戸鞠さんは、ゆっくり吐き出した――。




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