因果

「…………これから、言います」


 覚悟を決めろとは言ったけど、急すぎやしないか。


「え、これから? 今?」

「えぇ、今から。貴方と透夜君も一緒に」

「ここで?」

「ここで」


 行動力が高いというか、血迷ってるというか……。

 まだゲストルームにいるはずだ。

 どうしよう、合体してたら。

 気になり始めたらどうにもノックしづらいな。


『透夜君は映えスポットとか興味ありませんか?』


 扉越しに戸鞠さんの声が聞こえてきた。

 良かった……。


『あんまり、かなえと一緒ならなんでもいいし』

『透夜君テキトー過ぎますよ、ふふ』

『本当のこと』


 仲良しカップル……なのに。

 力の抜けたノックをしてしまう。


『はい』


 扉を開けると、ベッドで寝転ぶ2人がいた。

 同じスマホで動画を見ている。


「あ、おかえりなさい五十嵐さん」

「寛いでるところ悪いんだけど、2人とも、話がある」


 透夜は動画を止めた。


「今から?」

「今から、だ」


 2人を書斎の前まで呼んだ。


「割とマジで真剣な話するからな」


 これから話すことを、知っている透夜の表情は強張っている。

 透夜は不安がばれないように、戸鞠さんの手を握る。

 不思議そうに傾げる彼女は、そっと握り返す。

 あぁ、これから先のことを考えさえなきゃいけない、重さが体に圧し掛かってきた。

 なんて最低な、父親だろう。

 改めて、俺のしたことが、こんな風に返ってくるなんて……あまりにも残酷な仕打ちじゃないか。

 透夜と戸鞠さんが選ぶ道は、別離か維持か。

 

 書斎の扉を、震える指先で開ける……――。

 


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