少女達

 しばらくして、別荘に集まりだした。


「五十嵐さん、透夜君、お待たせしました」


 戸鞠さんは、涼し気なワンピース姿で、錨のシルバーペンダントを揺らしながら透夜のもとへ。


「こんにちは」

「うん」


 手放すまいと、近づいた戸鞠さんの手を握りしめる。

 事情を知らない戸鞠さんはごく自然に指を絡めて、道中のことを話す。

 以前に兄妹みたいだな、と思ったことはあったけど、まさか本当の兄妹とは。

 俺のせいなんだけど、こんな偶然みたいなことがあるなんて……残酷だ。


「八百原さん、こんにちは」

「んーちは」


 ソファにべったりくっついている八百原さんは口数が少ない。

 服はサイズがデカいのか、見るつもりがなくても隙間から肌が覗けてしまう。

 脱いだサンダルは片っぽだけ裏返り、だらしなさが際立つ。


「来てあげたわよ、戸鞠かなえ」


 サングラスをかけて、モデルみたく歩いてきた少女が現れた。

 くびれがハッキリ分かる体型で、ねじり編みにした茶髪を下目に結んだツインテール。

 スッとサングラスを外し、強気を主張する張りのある顔つきで、戸鞠さんに迫る。


清花きよかさん、夏休みの間よろしくお願いしますね」

「もちろん、アタシが来たからには課題なんてすぐ終わるわ。ところで、お隣さんが、例の彼氏?」

「はい、透夜君です」


 自己紹介も待たず、清花さんという子はジロジロ品定めでもするように透夜を見る。


「な、なに」


 一通り観察したあと、腕を組んで強く睨んだ。


「かなえから聞いてたけど、貴方が彼氏だなんて納得できないわ」


 なんか不穏だなぁ。


「はぁ? 初対面でいきなりなんだよ」


 透夜は怪訝な顔で睨み返した。


「かなえはとっても素直で純粋よ、人を疑わない危なっかしい子。たぶらかすつもりならただじゃおかないから」


 つまり、戸鞠さんは大事にされているわけだ。

 自己紹介すらまともに進まないなか、さらに何人かやってきた。


「またやってる。清花ちゃん、これから打ち合わせもしないとだから、一旦大人の話を聞こうよ」


 落ち着いた表情の少女。

 ミディアムヘアで、毛先が内側にはねている。

 この中じゃ空気みたく大人しく、声も細い。


「ふん、あおい舞乙まおはどうしたのよ」

「一緒に着いたから、今こっちに来てるよ」


 そうこう言っている間に、舞乙さんだろう、大人びた雰囲気の少女がリビングに入ってきた。


「ごめんなさい、待たせちゃって」


 口調もどこか艶っぽい、パーマをかけた感じのロングヘア。

 これで4人の女の子が集まった。

 夏休みの間、彼女達と過ごすなんて、なんか透夜の理性が試されているような気がする。

 戸鞠さんはもちろん、あと4人も整った顔立ち揃い。

 そわそわと居辛そうに透夜は戸鞠さんの傍から離れない。


「みなさんとっても親切で、良い方なんです。きっと透夜君も仲良くなれますよ」

「え、あぁ、うん……」


 素直がよく似合う笑顔に、透夜は戸惑いながら頷いた。


 


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