記録:十五頁目
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『お久しぶりです、本当にお久しぶりです、シエル』
あれからどれだけ謝り倒しただろうか……ようやくお許しをもらえたボクは熱い抱擁をもらっていた。
機械の体だから硬いだろうと想像してたけど、胸部装甲が柔らかいおかげで強めに抱きつかれても痛くはない。
地球ではもちろん画面の中だけの存在だったけど、こうしてシェリーの声を聞くと心の底から安心感が湧き上がってくる。
「今の名前はシェリアリアっていってね、こっちの世界のお兄ちゃんとお姉ちゃんには【シェル】って呼ばれてるから、シェリーにもそう呼んでもらえると嬉しいな」
『シェリアリア、シェル、前世と似たようなお名前なんですね』
そうなんだよね、実はボクも気になってたところだったりするんだけど……。
「偶然だと思うよ? 名前が書かれた紙が一緒にあったみたいだし、たぶんこっちの家族が付けてくれたんだと思うけど、前のボクの名前は知りようがないわけだし」
『そうなんですね。 でもお顔はシエルの時の面影がしっかり残っていますよ?』
「そうなの? 鏡見たことないからわからないんだよね……」
『チグサさんとスグサさん、お母様のお顔にそっくりですし、幼い頃の顔立ちを思い起こさせます』
「なんでシェリーが子供の頃のボクの顔知ってるの!」
『タケルさんがシエルが生まれてからのお写真をインプットしてくださったので、その範囲であれば私も知ってるんですよ?』
たけにぃちゃんなにやってんの?!
ビックリしすぎて自然と体を離そうとしてしまうと、ギュッと抱きしめ直されてしまった。
ナデナデ追加です、これは暫く終わりそうにないな……。
「シェリアリア、そろそろトリアを紹介してもらえないでしょうか?」
「あ、ごめんごめん。 シェリー、この小さな妖精の女の子はトリア、この森に来てからずっとお世話になってる子だよ」
「初めまして、シェリー」
『初めまして、電脳精霊:シェリーと申します。 前世でずっとシエルのサポートをしてきた元サポートAIです』
「奇遇ですね、トリアも神界で働いていた、シェリアリア専任の元サポートシステムなんですよ」
何故だろう、二人の背後に何か獰猛な生き物が見えるような気がする。
バチバチと火花が散りそうな空気に血の気が引くのが分かったボクは、チワワみたいにプルプルするしかできませんでした。
それからあーだこーだ話してたけど、最後は見つめ合って握手してた、怖い。
「トリアは今日から、この森の住人です。 ライブラリへの接続権限を失ってただの妖精族になったので、何処にでも行ける自由な存在になりましたから」
「ライブラリが何なのかよく分からないけど、リュクリルラースも歓迎してるし大丈夫そうだね。 これからもよろしくね!」
「よろしくお願いします、シェリアリア、シェリー」
『よろしくお願いします』
一見和やかに挨拶をしてると、リュクリルラースが何やら新しい果物を持ってきてくれた。
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名前:ヌラリル
説明:種が小さくて可食部が多く、水分が多い上に中心部に蜜が貯まるため非常に甘い
一言:見た目と食感は葡萄ですが味は林檎ですよ
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赤いツブツブが沢山付いた房を渡されて、てっきり葡萄かと思ったら葡萄じゃなくて林檎だったらしい。
……見た目が葡萄で味が林檎とか頭がどうにかなりそうで怖いんですけど?
というか、一月以上ずっとポンギョだったのに、なんで今さら別の果物くれたんだろう?
「ありがとう、美味しくいただくね」
『きゅきゅっ♪』
『召し上がれ、と言ってますよ』
「え? 分かるの?」
唐突にシェリーが通訳してきてビックリした。
『はい、そういうスキルがありますので。 ……これでシエルも使えるようになりましたよ』
シェリーの指が額に伸びてきて、チョンッと触れられると視界が真っ白に染まる。
本当に一瞬のことで、気が付くと元の景色に戻っていた。
いや、元の景色じゃない……右上に日付と今の時間なのかな? それが表示されてる。
視線を動かしても同じ場所にあるから、すっごく変な感じ!
「うわ、なにこれ! 視界の中に時計とか表示されてる!」
『電脳精霊としての能力を共有しました。 これで私と同じことができるようになったので、リュクリルラースともお話できますよ?』
「……早急にステータスを確認することをオススメします。 シェリアリアが膨大なスキル量に及び腰になっているのは知っていますが、いつまでも避けて通れるものではありません。 今また凄まじいことになりましたし、きちんと把握しましょう」
「うえぇ…………わ、わかったよ……確認するよ……」
いやあの量のスキルは怖いよ、手に余るし錬金術とかができるって分かってればそれで良いっていうか……。
でもシェリーの言う意味も分かるし、恐ろしいアップデートがされたっていうのも嫌というほど理解してる。
『今、失礼なこと考えませんでしたか?』
「か、考えてないよ!」
と、とにかく確認しよう、腹を決めた! ボクも男なんだ!
…………ふぅ、よし……
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名前/シェリアリア・コールソン
種族/人間
性別/両性
年齢/五才
職業/
スキル/
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称号/転生者、スキル狂い、職業神の祝福、運命の方舟、精霊契約者、創造神の愛し子:
一言/更にできることが増えましたね、とても安心しましたし、より安全に暮らせそうで嬉しく思います
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ご、ご安心いただけて嬉しいです……くぅっ……!
「しょ、職業の名前になってるスキルはい、一旦置いておくね……量が多いから後でまとめることにするよ。 回避と防御が獲得できたのは素直に嬉しい」
「獲得したことは知らされませんからね、もしされていたらスキルの存在を知られているはずですから」
「あぁ、確かにそうだね、そういう意味ではもっと早く確認するべきだったよ……」
『シエルは頑張ったのですね、偉いです』
そういうと頭を撫でてくれて、それを見たトリアが真似して撫でてくれる。
うん、実際けっこう頑張ったし嬉しい、えへへ。
「刃物適正ってナイフとか? 攻撃にも使えるの?」
「いえ、包丁などの刃物に分類されるもの限定です。 非戦闘時のみ適用される適性です」
「遠距離武器適性と罠適性は?」
「遠距離武器は投擲や弓矢が該当するので戦闘に使えます。 罠は作成、設置、解除、感知が該当するので、戦闘にも使えますが探索や狩猟が主になるかと思います」
「徹底的に近距離戦闘を排除しようとしてる感じだね……」
創造神様の過保護っぷりが本当にすごい、すごすぎる。
身を案じてくれるのは嬉しいけど、あまりにも過剰、なのに回避とか忘れるっていう天然さんなのがちょっと面白い。
「収納と鑑定は言葉から分かるしいいとして、動物魅了っていうのは? 読んで字の如く?」
「魅了とありますが、洗脳系や精神操作系ではないです。 動物に類する存在に対して好感度が上がりやすくなるスキルとなってます」
強制的に好意とか感情を改変する恐ろしいタイプのスキルじゃなくて良かった。
さすがにそんなスキル持ってたくないし、それで好かれても嬉しくないよ。
リュクリルラースが良くしてくれてるのも、このスキルで好感度が上がったから、ってことなのかな?
「それで……これ一番怖いっていうか、知ってはいけないっていうか、できれば避けて通りたいのが本音なんだけど……【超越者:五不】っていうのは……?」
「はい、そのスキルは……」
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名前:
説明:不病、病に冒されることはない。
不呪、何モノにも呪われることはない。
不老、老い朽ちることはない。
不死、死して天に召されることはない。
不滅、その身は不滅、無から復活する者也。
この力への干渉は神でさえ叶わない。
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「ま、ま、ま、待って、ちょっと待ってお願い…………ボク何才?」
「五才です」
「ボ、ボク何センチ?」
『身長:九二センチ、ギリギリ三才児程、体重:十一キロ、二才半程といったところでしょうか。 痩せ気味なのできちんとしたお食事を摂りましょうね』
「詳しく……ありがとう……」
『私には見えてますので、きっちり正確な数値ですよ』
「お、おうふ……それで、ボ、ボクがななななんだって? ふ、ふ、ふ、ふろーふしとかなんとかって? え? どゆこと?」
「『そのままの意味かと』」
「い……」
「い?」
「い……」
『い?』
「なんでじゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「『いじゃないんですか!』」
ボクのミジンコメンタルは限界を迎え、咆哮として空に放たれるのであったとさ……。
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