記録:六頁目
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〈まずは基礎知識からお教えいたします〉
「お願いします」
トリアの姿は見えないので、パネルに向かってペコリと頭を下げる。
〈この世界には人間以外にも知能を持った種族が多数存在しています。 有名な種族ですと、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、魔族、竜人族、精霊族、妖精族です。 他にも存在しますが、出会ってからのお楽しみといたしましょう〉
「けっこう多いんだね。 ファンタジーの定番どころばかりで会うのが楽しみだ」
エルフ族は肉を食べないのかな、ドワーフは酒豪なのかな、なんて考えるとすごくワクワクしてくる。
あくまで空想の存在だし地球人が考えた設定だもんね、実際どうなのかは是非確かめたい。
〈次に職業ですが、職業鑑定の儀で分かるのは遺伝であったり本人の資質によって導き出されたものが複数提示されます。 そこから希望の職業を選び技術を伸ばしていくことで、職業として固定化される仕組みです〉
「ならボクの場合は錬金術師しか提示されなかったから、他に固定化されるものがなかったってことでいいのかな?」
〈その通りです。 転生時に錬金術を希望されたようですので、それも原因の一つかと思われます〉
「でも転生の時に魔法もお願いしたはず。 だけど魔法使いは職業に含まれてなかった……錬金術の補助的に考えてたのが原因なのかな」
〈おそらくその可能性は高いです。
なるほど……そもそも魂がこの世界産じゃないから、その辺のルールがこの世界の人たちと違う可能性も全然ありえるのか。
たしかに魔法は使ってみたいけど、魔法使いになりたいとは思ってなかったし。
いや、でも話の流れで大魔法使いがどうとか言った気が……?
〈創造神アルザリアスの意思が反映された結果の可能性もありますので、答えを導き出すのは困難かと思います〉
「たしかにそうだね、そもそも答えが分かったところで何も変わらないしね」
〈はい。 では次はスキルです。 実はこの世界の人たちは、自身のスキルを知る術がないので、どんなスキルを有しているか知らないのです。 スキルの存在自体は知られているのですが、知る術が失われてしまったのが原因です〉
「なんでそんなことになってるの?」
〈遥か昔、職業鑑定の儀の際に使用する道具と同じように、スキルを鑑定する道具が存在しました。 しかし『優れたスキルを持つ者が世を導くべきだ』『劣ったスキルを持つ者は排除すべきだ』という選民思想が高まり、迫害を受けた平民を中心とした『反スキル選民派』の団体が破壊して周ったそうです。 その結果、この世からスキル鑑定の道具が消え去り、今の時代を生きる人々は知る術が無い、という状態になっています〉
うーん、どの世界でもどの時代でもそういう人たちが現れるのは常なんだろうな。
迫害があったならなおさら、避けられない流れだったのかもしれないな。
「じゃあ鑑定で知ることができるボクはかなり希少な存在ってことに……」
〈そうなりますが、言わなければいいだけでは? シェリアリアからトラブルに向かっていくタイプには思えませんし、心配はないと思います〉
確かにトラブルに突っ込んでいくつもりは全く無い。
全く無いけど、トラブルからやってくる可能性も十二分にありえるわけで……まあそれは今考えてもしかたがないことか。
とにかくスキルが分かるってことを言わなきゃ良いだけだ、うんうん。
〈スキルの種類は多岐に渡りますので、基本的なものだけお教えします。
「ボクには
〈
「近付かないから避ける必要がないとか?
〈なんとも言えませんが、不意打ちとか空からの急襲とか即座に対処できないこともありますし、とても心配です〉
何も必ず正面からやりあうだけじゃないもんな、色々な状況を想像するとすごい不安になってきた。
なにせ五才児の体なもんで、咄嗟の行動に自信が持てないんだよね。
〈ともあれ、スキルは反復練習や実践で獲得できる可能性がありますので、早めに習得することをオススメします〉
「そうだね、せめて回避と防御は覚えておきたいからそうするよ」
〈では、今実際に覚えているスキルについてですが……数が多いので簡潔に説明します。 星マークが付いたものは複数のスキルがセットになったものになります。 中でも一番多い白星のスキルは職業スキルと言って、関連する行動をすると技術力の向上が見込めます〉
「技術力の向上?
〈勘違いされがちですが違います。 スキルを習得するタイミングというのが、習熟度が一人前になった時なのです。 どのような事柄でもそうですが必ず最初は素人です、そこから練習を重ねて初心者になり、更に練習を重ねてようやく一人前になります。 ある意味スタートラインに立ったと言えるタイミングですね〉
「なるほど、そこから更に練習を重ねることで練度が上がって、よりできることが増えたりするわけだもんね。 強制的に使えるようになるものではなくて、積み重ねてスキル化されただけで、そこから更に伸ばせるかは本人次第ってことか」
〈さすがです、その通りです。 特にシェリアリアは付与されただけで全てを一人前に扱えるというわけではないのです。 当然スキルによる補助や補正はありますが、全てゼロからと同じと思ってください……訂正します、【
「あ、前世の経験はちゃんと引き継いでくれてるんだね、無駄にならなくてよかった。 それにしても基本全部ゼロからか……まあ元々無かったものだし、どうでもいいか! 補正が入るならむしろド素人よりちょっとは上手くできるかもなわけだし!」
ポジティブに考えよう、せっかく自由に歩き回れるようになったんだし楽しまないと損だ。
なにより、始まったばかりの第二の人生をネガティブ思考から始めたくないしね!
〈そうです、その意気です。 では最後に称号ですが、これは取得条件が厳しい場合が多いので所持者は非常に少ないです。 スキルと同じように把握している人はシェリアリア以外存在していませんが……〉
「称号は知る方法はあるの?」
〈存在自体が知られていないので、確立される以前の話です。 称号も多岐にわたりますし、もし【ロリコン】とか【ストーカー】なんて記されていたら人生終了の可能性も……知れることが必ずしも良いこととは限らないので、私からはなんとも言えないですね〉
「な、なるほど……。 ボクにそういう称号が付いてなくて本当に良かったよ……」
〈一つ豆知識ですが、教会が保有している【
「へぇー!」
〈その魔道具化する際に称号を除いたようです。 どうやら自身を鑑定した際に【シスコン】だとか【
「へぇー……」
たぶん、前世のねぇちゃんとにぃちゃんには【ブラコン】が付いてる気がするなぁ……。
溺愛っぷりが半端じゃなかったし、かなり高い確率でそうだと思う……。
いや、ものすごく愛されててボクも本当に嬉しかったけどね、称号として残るのはどうなのかなってちょっと複雑な気分に……。
でもちーねぇちゃんなら『私の愛が認められたんだな!』とか喜びそうかな?
〈これでチュートリアル第一回:ステータスを確認しよう、は終了となります〉
「あ、うん、ありがとうございました」
慌ててパネルに頭を下げる、思考に飲まれすぎたかな、反省反省。
〈続いて次のチュートリアルを……と思ったのですが、太陽もだいぶ傾いてきたので食料の確保をしないといけないですね。 チュートリアルも大事ですが、食事も大事ですので〉
「そう言えばお腹空いてるかも……誘拐される前に孤児院で朝食を食べたきりだったし」
〈時間的に夕食になりますが、逃すと明日の朝食まで何も食べないことになってしまいます〉
「よし、外歩いて食べ物でも探そうか」
そう言って立ち上がろうとしたら、足が痺れて尻もちを突く。
そういえばずっと正座してたんだった、いててててて!
あはは、これも経験したことないことの一つだし、ちょっと嬉しい!
……やっぱ痛いや、いてて。
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作者のつぶやき
職業について。
【職業鑑定の儀】で提示されたのが剣使い、槍使い、荷物持ちだとします。
職業:剣使い、槍使い、荷物持ち
スキル:なし
職業が固定化されていない間は複数を仮で持っている状態になり、スキルも未取得状態です。
※ただし五才までにめっちゃ計算問題やってて暗算とか算術を持ってる、とかなら別
「お父さんみたいな長剣術師になるんだ!」と長剣で練習に励んだ場合……。
職業:
スキル/
適正系/
と適正を手に入れて職業が固定化され、更に練習に励むと
職業:
スキル/
適正系/
戦闘系/
と長剣がスキル化して職業進化を果たします。
当然、短剣や大剣で練習していれば適正も変わりますし、剣士以降の職業も変化します。
取得したスキルによってはシェリアリアのように複合職になったりします。
聖属性魔法をスキル化して剣術と交えて高めれば聖剣術師……だったり。
暗殺特化で短剣の方が向いてるのに、長剣を極めちゃって暗殺剣術師なんていう奇天烈な職業になるパターンも。
・まとめ
職業候補は、適正を手に入れると固定化される。
適正を持った状態でスキル化すると職業が進化する。
更に高めたり、別のスキルを手に入れると正統進化、分岐進化、複合進化などする。
作品中にも変な職業のキャラが出てきたりしますw
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