第三十三話 神々の境界

『リア……リア』

『目覚めよ』

『目を覚ましなさい、中級天使リア』


「んん……?」


 暖かな場所で目が醒める。初めて来る場所なのに居心地が良かった。どこだろう?

 それにこの声の主たちは誰なんだろう……?


「ここは……えっ!?」


 私ははっとして辺りを見渡した。……下界じゃない。澄んだ空気。

 居心地がいいのは、きっとここが天界だからだ。でもなぜ? 私は下界でデフェル様と戦っていたはずなのに。


『お気づきですね、此処は天界です』


「その様……でございますね。しかし、私はここに来たことがありません。ここは一体、天界のどちらなのでしょうか?」


 そう問うと、話しかけてきていた一人が答える。髪が長く、ずーっと下まで続いている。なんだか全身が光っていて神々しい。


『ここは神々の境界です。上級天使以上の階級でなければ入ることは許されません』

「え」


 神々の境界といえば、ルウベス様が神の御言葉を賜る場所だ。話でしか聞いたことはない。そして目の前の三人は、上級天使にはいない顔だ。ということは……!

 この目の前に御座す存在が神……ということになりますか。なんとまあ、とんでもないところに飛ばされてしまいましたね。


『整理できていないところだろうが続けよう。リア、下界での出来事を覚えているか』

「……はい、覚えております。私は、魔族と手を組んだデフェル様と戦っておりました」

『そうですね。そして戦いの末、貴方は倒されてしまったのです』


「倒された……そうでしたか」


 確かにあの時、自分には抗う力が残されていなかった。そうか、私は消滅してしまったのですね。だから、天界に……。あれ?

 そこまできてまた新しい疑問が出てくる。では、他の殺されてしまった天使たちもここに来るということか。だが周りには、三人の神と私しかいないようだ。


『勝手ながら、例外的に召喚させてもらった。リア、貴方は悪の存在も味方につけ、それを傷つけぬ様に戦った。身分にとらわれない働きは見事だった』


「もったいなき御言葉でございます」


 頭を下げるが、神々からはなんのリアクションもない。当然の様に話は続く。


『そこで、我々の力で貴方には、存在し続けてもらうことにしたのです』


「え?」


 先ほどの長髪の髪が私の前で手のひらをかざす。すると、私の体は光り始めた。そのままものすごい速さでその場所から離れていく。しかしその間も、遠くならずに神々の声が聞こえていた。


「ちょっと……待ってください!」


 私の意思と反して、体だけが飛ばされ続けていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る