第三十一話 堕天
「……ん」
ぼんやりと意識が浮上する。力を使いすぎて一瞬意識を飛ばしていたようだ。ルウベス様は、ラウーンは、どうなったのだろうか。ダメだ、体が重くて持ち上がらない。体を起こして周りを見ることはできそうにない。
コツ……コツ……
「(足音……?)」
開けた視界から、街灯の灯りが差し込んでくる。誰かが立っているようだ。その明かりに照らされた顔には、見覚えがあった。
「デフェル……様」
「ああ、可哀想なリア。こんなに力を使ってしまって。意識を保つのも難儀なことでしょう」
そっとしゃがんだ体から懐かしい匂いがした。このお方は中級天使デフェル様。大変立派なお方だ。私に下界に向かうよう命じた方でもある。愛しむような表情が向けられた。そっと手が頬に添えられる。
ああ、助けが来たのですね。
「救われた顔をしていますね。ああ、なんて、なんて……可哀想なのでしょう」
ゴッ!!!
「っ!」
何が起こったのか、理解するまでに時間がかかる。背中を強く打ち付けて、やっと視界が鮮明になった。私の体が蹴飛ばされたのだ。デフェル様に。どうして? 何でデフェル様がこのようなことを?
「うあっ!!! ゲホッ……!!」
何度も、何度も相手の手足が体にぶつかる。体力が尽きて抵抗ができない。
次の攻撃が来るまでに立ち上がれない……! しかしこのままでは……!
「リア!!!!」
誰かの声がする。これはキラアかな。ゆっくりと目を動かすと彼の体は濃い紫色の魔力で拘束されていた。彼だけじゃない。ラッグ先生も他のみんなも全員だ。これも全てデフェル様がやったこと?
ルウベス様とラウーンの姿は見当たらない。
「どうして……このような……」
声が震える。私を見てデフェル様はとても嬉しそうに笑った。絶対におかしいのに、まだ縋ろうとしてしまう。先ほど見たルウベス様の冷え切った笑みよりも、気持ち悪く感じた。ラウーンの顔を思い出す。ああ、ちょっと嫌な気分になった。
「……堕天したのですよ。もう私は、魔王様の忠実なる僕だ」
冷たく言い放ったその言葉に、その場にいたもの達はざわざわと騒ぎ出す。
だてん……? デフェル様が……?
「よくもラウーン様を殺ってくれましたね。あなたを相当苦しめてやらなければ」
だてんというものは魔王の僕に成り下がること……? なのかな。
それとも、味方を攻撃するような思想を持つこと……?
ああどうしよう、視界が暗くなってきました。もう抗う力ないようです。どうせなら、ルウベス様にやられたかったな。そしたら私の気持ちの浮かばれると言うものだ。
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