第二十一話 ウェルカム事件

 待ち合わせ場所に現れたキラアとユーデは、クオリティの高い仮装をしていた。普段見るより随分とかっこよくなっている。キラアは何の仮装かわからないけれど。

「すご〜い! ユーデ魔王様だ!」

「そ〜。背高いから似合うって言われて」


 ユーデは魔王の仮装を選んだらしい。魔王といえば天界では最も憎き存在として神から伝えられている。だがこれは子供の仮装だ。文句なしにかっこいい。

 彼はありえないほど背が高いので黒いマントがよく似合う。写真はいつも顔が見切れるし、長時間顔を見て話すとちょっと首が痛くなる。その長身がやっと活かされた。


「キラアは……?」

「ふふん、ボクはねー……むぐっ!」

 そこまでキラアが言ったところでユーデが彼の口を塞いだ。


「当ててみて」


「えー? 何だろう」

 キラアは髪をオールバックにまとめて、青色のスーツを身に纏っていた。私とペタは分からずに首を傾げている。

「え〜、ワタシもわからない」

「まあ、そっか」


 オレも最初わからなかったし、とユーデは言う。みんながわからないと察して、キラアはもう一度口を開いた。

「えっとね、ボクの仮装はーー」

「こら、お前達。さっさと入れ」

 入り口からラッグ先生の声が聞こえる。周りを見るともうほとんどの学生が会場に入っているようだった。話が途切れたまま、私たちは会場に入り、ドリンクと食事に胸を躍らせた。キラアとユーデはクラスの男子に連れ去られたので、ペタと食べることにする。


「ひろーい……!」

 会場はお城のような作りで、地下は二階、地上は四階もあるらしい。下界にしてはかなり大きな建物だ。まあ、天界の神殿には負けますけれどね。

 何故か心の中で張り合いながら、真っ黒で美味しそうな匂いのする料理達を口に運んでいった。最近は匂いで好みのものを見つけられるまで成長している。


「見て! 天使の集団だ……!」


 ペタが指差した先に天使の仮装をした生徒達が固まっている。

 天使の仮装が意外と多いと言う情報は事前に仕入れていた。私にとってはうまく紛れ込みやすく、好都合だ。

 ただし一番上手いのは私ですけどね。何せ本物ですから。


「でもリアが一番ね」

「知ってる。ペタ大好き。ペタも可愛すぎだよ」

「あはは! 自己肯定感激高いのも最高」


 しばらく飲み食いするうちに追加の飲み物が欲しくなり、浮かれながらドリンクを取りに行く。

「あ」

「あ!」

 ウェイターさんのドリンクをキラアも同時に受け取った。

「話終わったから合流しよ!」

「うん、行こうか」


 ペタの方を見ると、ユーデがすでに合流しているようだった。このまま四人で料理を食べようと思った時ーー。


「くらぇ〜。異国の呪いの刃物じゃ〜あ」


 不穏な言葉と共に、事件は起こってしまった。

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