第六章 憧れの仮装パーティ

第二十話 仮装パーティは目前です

 私は、キラアに何の仮装をするのか聞いたのだ。

 しかし彼は今、何と言った? 聞き間違いかもしれないので聞き返すけれど、目がマジなのでもしかしたら聞いた通りかもしれない。


「だから、弾丸」


 私が戸惑っていると、キラアの後ろでユーデとペタが肩を竦めている。どうやらキラアだけが仮装パーティの意味を少し履き違えているようだった。

 来週開催される仮装パーティは、笑いを取るためのものではなく、ダンスを楽しむためのもの。パーティ会場で踊る弾丸など見たくない。景観が激しく崩れる。

 そもそもどうやって弾丸を表現するつもりなのか。


「誰か止めてあげてよ。おかしいことは教えてあげないとかわいそうだよ」

「どういう意味?」

 そう言うと二人は肩を振るわせて笑っていた。笑い事じゃない。友達を社会的に殺す気か。


「ごめん面白くて」

「あ、もしかしてガチ? ボケかと思ってた」

 ユーデとペタは何の仮装をするか決まっているが、当日まで内緒らしかった。私もそろそろ考えなければ。あまり衣装などもないけど。キラアに仮装パーティの雰囲気を教えつつ、寮の自室に戻る。


「何故だ……」

 私の部屋には、数々の煌びやかな衣装が整頓されている。その全てに見覚えがなかった。

 以前勝手におにぎりの具が勝手に変わっていたことを思い出す。この部屋に見えざる何かでも住み着いているのだろうか。まあ、衣装に困っていたのは事実。あるものは遠慮なくお借りしますけれどね。

「うーん」

 私は何枚もの衣装の前で頭を抱えた。


 仮装、何にしよう……。


 用意されたどれもが白基調のドレスだった。神々しい存在をどうしても連想してしまう。でもそれでいいのでしょうか? しばらく考えてもいい案は降ってこない。

「う〜んんんん……」

 こうなったら直感に従おう。ええい、ままよ。

「よし」

 こういうのは逆に捻らない方が良いと聞く。なので私は、私らしさを最大限に活かせる仮装で行こうと決めた。



「おお……!」

 そしてパーティ当日。会場には仮装して仮面をした学生達で溢れていた。もちろんジュースだが、ウェルカムドリンクを選んで中に入っていく。その様子を遠目に見ながら、私は待ち合わせ場所で友人達を待っていた。


「リア! お待たせ」

「ペタ!」

 待ち合わせ場所に最初に現れたのはペタだった。彼女は結構際どい格好をしている。

「……もうしかして、バニーガール?」

「ぴんぽんぴんぽん! 大正解! 超良くない? たまたま見つけたんだ〜」

 彼女はポーズしてウインクしてくる。ぐっ……悪魔め。可愛すぎる。


「似合ってる。超良い」

「でしょ〜。リアは天使様じゃん! 羽もめっちゃ可愛い〜」

 何故か部屋に置かれていたドレスから一番気にいるものを選び、私は天使の仮装とすることにした。実際天使なのだから完成度は高い。背中からは小さな羽が生えている。ドレスを着ると魔法で浮かび上がる、レプリカの羽らしい。

「おーい!」

「ごめんお待たせ」

 そして待ち合わせの時間ぴったりにキラアとユーデが訪れた。

「おお!!」

 二人の仮装の完成度に、私は思わず感嘆の声を上げていた。

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