第十九話 お怒り壁ドン
目の前のラッグ先生は壁に手をつきながら私を見下ろしていた。とても怒っている。
「何故羽を広げなかった! あのまま地面に落ちていたら、ただの怪我じゃ済まなかったぞ!!」
「す、すみません……」
わなわなと先生は青い顔で震えている。自分の生徒が死にかけたのだから、かなり肝を冷やしたに違いない。
先生は魔族なのに、情に熱かった。魔族にも個体差があるのか。何はともあれ珍しいタイプである。あと、心配してくれるのは素直に嬉しかった。
「入学式の日にあれほど立派な羽を広げていたではないか。何のために生徒全員に習得させていると思ってる」
「びっくりして、頭が回りませんでした……」
そう言うと、先生はまた傷ついたような顔をした。
「っ……。まあいい。助かったのだからな。以後気をつけろ」
「はい」
先生は壁からそっと手を離して私から離れた。しかし眉毛がまだ怒っている。
「……無事でよかった」
最後にぼそっとそれだけ告げて、先生は本部に向かっていった。私の無事を報告してくれるらしい。
高いところから落下した私は、念の為保健室へ連れて行かれることになった。何故かその場に現れたピャーナ先輩に連れられて。
彼も塔のてっぺんで手に傷を負ったらしい。
「おかえり〜」
治療を終えて保健室から出ると、友人三人が出迎えてくれた。
「じゃあ、お大事に。俺はクラスに戻るね」
「はい。ありがとうございました」
ピャーナ先輩は入口でそう言ってこちらに背を向けた。
治療は早く終わっていたはずなのに待っていてくれて、友人たちと合流すれば、一年同士で気をつかなわいようにその場を離れてくれる。
何と出来た悪魔だろうか。この先魔の道に進むなんて信じられない。
「ええ、かっこよ。誰あれ」
「ピャーナ先輩。三年の」
先輩に向かって目を輝かせかけるペタを引っ張り廊下を歩く。彼女が見惚れた理由はわかっている。先輩の雰囲気が若干ルウベス様に似ているからだ。髪も銀髪で長いし。
「来週仮装パーティじゃん。怪我しなくてよかったね」
「うん、ありがとう」
そう。彼らの言うとおり、来週はこの学園の仮装パーティが開かれる。
とにかく悪魔の学校は行事が多かった。楽しいし退屈しないので嬉しいけれど。次の行事は全員が仮装してパーティ会場でダンスをするらしい。
去年の写真を見せてもらったが、結構煌びやかだった。仮面をつけた男女が、ざまざまなモチーフの仮装で場を彩っていた。ちょっとだけそのようなパーティに憧れていたので嬉しい。
「リアは何の仮装するの?」
横を歩いているキラアに問われる。
「何も考えてないよ。キラアは?」
聞き返すとキラアの声が元気よく答えた。
「弾丸!」
「……え?」
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