第十七話 初見のスポーツは度胸が命

 悪魔の学校では数日にわたり球技大会が開催される。悪魔のスポーツはよく知らないけれど、クラスのみんなで一番を目指すのは悪くない。できる限り努力してみよう。控えめに。あくまで目立たずに。

「キラア、これってどういうルール?」

「え、リア……パピナロ知らないの?」

「うん」

「めずらしー」


 その”パピナロ”なるスポーツもだが、他の競技も全部知らないものばかりだった。しまった、スポーツは予習不足だった。

 複数ある競技から、みんな出たい競技を選んでいるが、正直何を選んで良いか判断できない。


「パピナロはね、リレーでリボンを渡していってね、塔の上を目指すの。塔のてっぺんにあるボールをとったチームの勝ちなんだよ。アンカーはビョーンってジャンプして、塔の先端部分を登らなきゃいけないの」

「トランポリンで飛ぶんだよ」

「へぇ〜」

 本当に初めて聞く内容だった。塔を登るなんて、結構過酷な競技だ。


「……ーーでいいんじゃない?」

「そうだね、賛成」

 クラス委員の子が競技名簿を持ちながら私たちのところにやってきた。その目線は私を向いている。


 ……なんだかすごく嫌な予感がした。


「ねえ、リアちゃん。パピナロのアンカーやらない?」

「あ、アリかも!」


 嫌な予感は当たった。さらにその提案に友人がノリノリという事実。

「えっ」

「リアちゃん身軽だし、運動神経いいし、トランポリンで高く飛べそうだし」

「まー確かに、リア軽そうだし」


 期待の眼差しが私に向いている。ああ、こう言った顔を天使は裏切れないというのに。さすが悪魔だ。

「わ、かっ……た」

「よし! ありがとう! 絶対優勝しようね!」

 爽やかな彼女の声を聞き、私は呆然とその場に取り残された。アンカーなんてすごい、と二人に褒めちぎられて少し調子は取り戻したが。まあ仕方がない、控えめなアンカーで行こうと決めた。

 

 あっという間に球技大会当日になり、パピナロの試合が始まった。相手は三年生のクラスで一時はどうなるかと思ったが、クラスメイトは結構優秀なようで、私のクラスが優勢となっている。体の大きさにかなり差があるのにすごい。

「…………」

 私はトランポリンの目の前で、ユーデを待っていた。


「奇遇だね。君がアンカーをするなんて思っていなかったよ」


 隣のトランポリンから、ピャーナ先輩が余裕の笑みで微笑んできていた。相変わらず、一枚上手というオーラをコートに仕立てて羽織っているような雰囲気だ。たまに校内で会う時、いつもこのように笑いかけてくれている。

 お揃いの髪色からくる親近感でも抱かれているのだろうか。まあ、助けていただいたご恩は忘れていませんが。


「ええ。お手柔らかにお願いします」

「うん、そうする」

 嘘でしょうね、多分。わかります。強者はそういう冗談をよく言うんです。


「リア!!!」

「ユーデ!」


 思ったよりも早く、我が友ユーデくんのご登場だ。ユーデは恐ろしく足が長いので、一歩一歩の差が大きいのだろう。憎い奴め。


 先輩のクラスの選手はまだ来る気配がない。私はリボンをユーデから受け取り、思いっきりトランポリンに飛び込んだ。

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