第十五話 共通の憧れは嬉しい

「どしたの、大丈夫?」

「いえ、感極まってしまって……」


 気がついたら目の前にはペタさんがいて、私の涙を指で掬ってくれていた。しまった、御師匠様がいなくなってかなり経つのに、まだ涙してしまうとは。しっかりしろリア。

 私はここで、任務をこなすと決めたじゃないか。御師匠様を信じて待つと決めたじゃないか。


「そんなにルウベス様に憧れてる人、アタシ以外に初めて見た」

「私もです」

 そう言えば彼女はニッと笑う。持っている羽で私の涙を吸った。


「へぇ、いいね、アンタ。その熱量気に入った!」

「えっ」


 彼女はすごく楽しそうだった。聞けばルウベス様の話をできる悪魔なんてなかなかいなかったのだと。魔族に至ってはその話をするなと叱られる始末だったらしい。……お気の毒に。

「これからも話しよ。ルウベス様のことも、そうじゃないこともさ。あ、敬語はなしで呼び捨てね」


「はい……あ、うん。よろしくね、ペタ」

「よろ〜」

 差し出した彼女の手をそっと握ると、力強く握り返された。こんなに話が盛り上がる女の子のお友達は、下界に来て初めてなので大変嬉しい。しかも彼女とはルウベス様の話ができる。控えめに言って最高だ。


「ああ、いた〜。もう、探したよリア」

「ユーデ!」

 そこにユーデが現れて、私たちを見る。彼は私の顔を見て驚いた顔をした。

「泣いてるじゃん。だからついていくって言ったのに」

「ち、違うのこれは」

「そーそー。これは感涙だから」

「かんるい?」


 ユーデとペタが自己紹介を済ませる間に私はハンカチで涙を拭う。二人も相性は悪くないようで、すぐに打ち解けていて安心した。

 攻撃に発展しなくてよかったと息を吐く。


「うわ、もう一時間以上話してるじゃん!」

「しー。見つからないように帰ろ」

「うん」

 話し込んでいるうちに随分と時間が経ってしまっていた。慌てて体育館倉庫から出て三人とも寮へ向かうことにする。帰り道までまだ、この時間が続くのだ。

 少し嬉しいです。夜に子供だけで、なんだか悪いことをしているみたいで。


「そういえばさー」

 歩きながら、ユーデが首を傾げた。

「ペタはなんで体育倉庫で羽と遊んでんの?」

「えー? 外の方が月明かりが綺麗だし、あそこ最近、球技大会の道具が増えて隠れやすくってさ〜。反対側の窓は丸見えだけどね」


 確かに二つある窓の中、一つは道具が積み上げられていた。

「あーね。球技大会、もうすぐだもんねー」


 球技大会。確かにそんな知らせを見た気がする。別に球技は得意でも不得意でもないので、そつなくこなせることだろう。ただ、正体がバレないように気を配ればいい。

 二人はすっかり球技大会の種目について盛り上がっていた。


 まあ、次の行事はあまり目立たずに過ごしましょうか。

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