四枚羽根ばかりに気を取られるな!
「あんな見た目でも主砲の他にプラズマを自在に操れるのか!」
ドラグアは龍を模したような、生物とも機械ともいえないような奇妙な四枚羽根のマニューバクローズ。おそらく四枚羽根によるイオン放射によって飛翔力を得ているのだろう。
原始的な見た目とは裏腹に、ロストテクノロジーで構成されている可能性が高かったと帝国兵たちは判断した。
「四枚羽根はどんな原理で飛んでいるんだ!」
ドラグアはスラスターを使っている気配がない。
「羽根からプラズマを噴射しているようだ。空気流をイオン化してプラズマに変換することで推力を得ている!」
「あいつらは燃料不要で大気中を飛べるのか!」
ドラグアの構造は莫大な電力を必要とする。推進剤不要の航行など大型艦でしか不可能なはずだった。
「四枚羽根ばかりに気を取られるな! 背後の支援機や地上からも狙撃してきているぞ!」
帝国兵の指揮官が動揺する部下たちを叱咤しながらも、警告を発する。
どうやら敵主力機は囮ではなく、斬り込み隊長。帝国兵のマニューバクローズ全機を撃墜することも可能かもしれない。
「ダメです! 地上からの対空射撃も凶悪ですよ!」
「あいつは囮にみえて、俺達を相手にするほどの戦闘力を秘めたマニューバクローズということだな」
「俺の部隊十二機であの四枚羽根をやる。空中戦が可能な敵機体はおそらく三機だ。お前たちは地上へ強行着陸しろ。突破して無人機と合わせてあの怪しい島に乗り込んで制圧だ!」
たかだか三機のマニューバクローズに、為す術もなかったとは宇宙皇帝セヴェルスに合わせる顔がない。
四枚羽根のドラクアを無視してクラフ島に乗り込む帝国兵。指揮官部隊の精鋭はドラクア撃破に専念する。
大量のアサルトマニューバクローズが散開して、クラフ島へ降下を目指す。
「こいつらは手強い。宇宙艦に支援を要請する!」
宇宙戦艦による対地攻撃は最後にしたかった。数多くの死者がでてしまい、リソースの喪失を意味する。侵攻した意味がなくなるのだ。
しかし島一つ落とせない現状、帝国兵は宇宙戦艦に頼るしかなかった。
「今から120分後に宇宙艦は到達する。それまでに俺達で落としたいところだ」
これだけの兵力で、島一つ制圧できなければ無能の烙印を押される。
ライカの敵の動きが変わったことを察知する。
「飽和戦術の一種か? 数にものをいわせて強行突破すルつもりか!」
帝国兵のアサルトマニューバクローズは大きく散って、クラフ島に集約するかのように降下を開始している。
『ライカ! 魔神に囲まれているぞ。ドラグアが製作された時期に近い、強力なタイプだ。さしずめエリートマニューバクローズだな』
ドラグアの魔砲一撃では破壊できないタイプのマニューバクローズが十二機。どうやら帝国兵の量産機とは技術レベルそのものが違うようだ。
背後にるリスペリアとフィネラも慎重に距離を取る。下手に支援すると自分たちが足手まといになるからだ。
「地上はみんなを信じるしかないか。いくぞジュルド!」
『おう!』
ドラグアと宇宙帝国のエリート部隊が搭乗したアサルトマニューバクローズ死闘の戦端が開かれる。
「レーザーはおそらく効かない。実弾か荷電粒子砲を使え!」
指揮官の号令をともに、ドラグアに向けて三次元空間を活用した集中砲火が放たれる。
ありえない機動力ですべての砲弾を回避するドラグア。敵が予測した未来位置よりもさらに加速して、加えて変則的な動きを行っている。
「落ちろ!」
魔砲の直撃でも、ノックバックが発生して交代するだけのエリートマニューバクローズは、スラスターを全開にして姿勢を保つ。
「雷霆!」
すかさずジュルドの力を用い、雷撃魔法を直撃させる。二段構えの攻撃にエリートマニューバクローズが爆散する。
『MPを使い過ぎだぞ!』
「わかっている! しかしあれぐらいの威力がないと、こいつらは倒せない!」
「MPを回復します!」
ザラが高速飛行で駆け抜ける。遠距離からライカのMPを回復させるリスペリア。ザラに対してレーザービームが照射されるが、振り切って逃げ切る。精霊機装のレーザー兵器対策は万全だ。
すかさずライカがザラを狙っているエリートマニューバクローズに魔砲を連続して撃ち込み、撃墜した。
「降下中の敵は――」
『案ずるな。フィネラとディーリットに任せるがいい』
「そうだな。大軍にはあの二人がうってつけだ。ここでエリート部隊を倒す」
焦るエリート部隊。こうまで機体差があるとは想像できなかったのだ。
「ちぃ! やはりレーザーは効かんか。荷電粒子ビーム対策もされている。ならば斬りつけろ!」
エリートマニューバクローズがサーベルを引き抜く。高威力の高周波ブレードだ。
「接近戦か! 精霊騎士をなめるな!」
ドラグアは柄だけの剣を取り出すと、プラズマの刀身が延び、長剣となった。
斬りかかったエリートマニューバクローズを一刀のもとに斬り倒す。
「ちぃ! あの四枚羽根、超高温のプラズマブレードのようだぞ!」
「凝縮系のプラズマブレードなど我々にとってもオーパーツではないですか!」
指揮官の言葉に、エリート兵が悲鳴をあげる。
謎の四枚羽根は、想像を超えた性能を誇っているように見えた。
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