キック・ザ・ドラゴニュート ~戦傷で両脚の自由を失った俺が征服者の竜人を強化外骨格の全力で蹴り飛ばすまで~
マガミアキ
プロローグ
人類は、竜人との戦争に敗北した。
はるか空の果てから、突如として襲来した人のようで人でないもの――竜人。
人類は国家・民族・文化の垣根を越えて共同戦線を張り、竜人の侵略に立ち向かった。
だが圧倒的な力の差を前に、人類側は次第に敗北を重ねることになる。
俺――ユーリ・ラピッヅが徴兵されたのは、開戦から五年が経過した時のこと。
人類の敗色はすでに濃厚だった。
俺は後方の補給部隊に配属が決まった。
そして着任直後、部隊はたったひとりの竜人によって壊滅する。
竜人が身にまとう強化外骨格――“竜骨”は、彼らの存在を象徴する兵器だ。
そもそも強大な竜人の身体能力をさらに増強し、凄まじい機動力と火力で戦場を
俺の部隊は、竜骨から放たれた熱線砲によって基地ごと焼き払われたのだった。
燃え盛る壁のような炎を背に、竜骨の禍々しい影が視界の先で黒々と揺れている。
それはまるで、恐竜の化石が竜人を包み込んでいるようにも見えた。
その光景を見ているということは――つまり俺はまだ生きていて、意識もあるということだ。
だが全身の感覚は無く、どこをどう負傷したかも分からないまま地面に倒れて動けずにいた。
竜人は展開させた竜骨を収束させながら、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
逃げたくても動くのは視界だけだ。
その視界が、竜人の両目を捉えた。炎を受けて赤く光る目の奥に、細長い瞳孔まで見える。
不気味なほどに整った顔立ちをしているのが、竜人達の特徴だ。
目が合ったのも束の間、熱風に煽られた竜人の長い髪がその美麗な顔を隠した。
竜人が足を止めることもなかった。
俺の存在を気に留めるでもなく、そのまま俺の頭をまたぎ越していく。
遠ざかっていく足音を耳にしながら、俺はいつまでも灼熱の地面に這いつくばっていた。
その時の俺が感じていたのは、命を拾ったことに対する安堵というより――。
存在を無視されたことに対する、言いようのない屈辱だった。
つづく
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