赤ずきんの 元彼 悪魔・ブヱル

代々、狼病を患う赤福あかふく真幸まさきには変わった彼氏が居た。


悪魔・ブヱルである。


赤福が草花を愛するようにブヱルも

また草花を赤福と共に愛していた。


2人の出会いは

童話『赤ずきん』そのものだった。


近所に住む祖母の家に祖母の中華屋のお皿といつも作ってくれるお惣菜のお礼に果物や自家製パンを届けに行く道すがら公園で満開に咲くバンマツリの花に赤福は惹かれたのだ。


「お嬢さん、お嬢さん。お使いはいいのかい?」


バンマツリの中で昼寝をしていた悪魔ブヱルが赤福に訊ねる。


「バンマツリの妖精さん。

私はあなたに見とれているの。」


馬鹿な赤福。

バンマツリに隠れた悪魔を妖精と見間違えた。

その態度を面白くからかってやろうと悪魔ブヱルはこう答える。


「ああ、そうだよ。

僕がバンマツリの妖精だよ。」


何度もバンマツリの妖精のフリを繰り返しても、悪魔ブヱルを妖精だと信じる赤福に彼自身だんだん無性なやるせなさに近い怒りが芽生えだした。


この悪魔、少年に恋をした。


─君が好きなのは

バンマツリで僕では無いのでは?


また悪魔はイタズラ心で

赤福に呪いをかけ嘘をつく。


「良かったね、バンマツリが咲く時期じゃなくとも…これからはずっと、君は僕のそばにいられるよ。」


赤福は初めて口から花を吐く。


悪魔ブヱルはいつもなら人間をいじめる楽しい光景のはずなのにどこか満たされることはなく赤福の吐いたラベンダーを持ち、その場を後にした。


悪魔ブヱルは知らない。

何でもない人間から呪い返しが来ることを。


赤福はまだ気づいていない。

悪魔もまた気づかない。


お互いに愛という呪いが

自分に掛かっていることを知らない。

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