幸せな「お姫様」 カルメ

カルメは齢 10歳で芸能界に入った。


彼女を指さし誰もがこう言う。


「幸せなお姫様だ。」と


カルメは心から思う。


そんな訳が無い。

触れたもの全てを金にする呪いがあるせいで

演技をするにも気をつけなければいけない。

流れた涙がサファイアに変わるから、目から宝石に至るまであらゆるCMを請け負う。


世界中がカルメの美しさに美しい、見るだけで幸せだ。そんな事を言ったところでカルメは満たされなかった。


でも、一つだけ自分を満たす者は自分であった。

厚くメイクをすれば周りを金に変えなくて済む。

良い革手袋をすれば男も女も虜に変える。


カルメがそう捉える事で世界は変わった。


”私が周りを金へ変えているのでは無い。”


何度、目からサファイアを流したとしても、この事実はカルメにとって揺るがないものだった。


”周りが私を愛してしまうから。”


この世に生きる物はカルメに触れた途端に金へ変わり果ててしまうのだ。


カルメはまだ知らない。

自分カネ以上のものがある事を

他人ひとに恋をするという事をまだ知らない。


まだ幸せを掴む鴎に姫は出会えていない。

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