029:いざ、四国へ
029:いざ、徳島へ!!
遂に四国へと向かう日が訪れた。
俺たち華龍會や他の組も合わせて、合計で110人を超える組員で向かう事になったのである。
まさかこんな大所帯で行くなんて思っていなかった。
一塊になって大阪港から徳島県に向かう事になっているのだが、どこから情報が漏れたかは分からないが大阪港に大阪府警のマル暴たちが待ち構えていた。
「自分らっ!! そんな大人数で、船に乗ってどこに行くんかいな? ちょい警察で話を聞こか?」
「そこどけや。俺たちが何をした? 何もしてないのに警察にしょっぴくなんて無理だろ?」
「そ そら確かにそうやが………そんな大人数で四国の人を怖がらすのはあかんやろ? それくらいの百鬼会かて分かってるやろ?」
「何を勘違いしてんのか、こっちは知ったこっちゃ無いけど、俺たちは新谷組長の見舞いに行くだけだぞ?」
マル暴の警察官たちは、四国に行かせないように抗争をさせないように交渉しようとするが、山﨑のオジキたちもスイッチが入っているので話を聞かない。
警察には見舞いに行くだけだからと言って、フェリーに乗り込むとマル暴たちも説得の為に乗り込んだ。
「警察も、こんな風に説得してくるんすね。なんか意外でした、もっとややこしい事になるかと思ってたっす」
「フェリーにまで乗り込んでくるって事は、相当警戒してるって事や。多分やけど徳島県警も港で待機してるんちゃうか?」
「本当ですか!? そりゃあ大事っすね………でも、そこまで警戒されてたら抗争なんて無理ですよね?」
「おぉ良いところに目をつけるじゃないか。まぁ大きい声では言えないが、今回の作戦に関して言えば抗争はする気ないと思うぞ」
「えっ!? そ それってどういう………」
兄貴がオヤジやオジキたちの考えを読むとすると、今回の徳島侵攻に関しては特に抗争をする気ないのでは無いかと考えているらしい。
どうしてそう思うのか、全くもって俺には想像できないので聞いてみると兄貴は難しい顔をしながらも、俺の方を見ずに説明し始めてくれた。
会長だって100人を連れて行けば、警察の目が厳しくなるのは誰の目にも明らかな為、何の為に行くのかと言えば全国への宣戦布告と言えるだろう。どういう事かというと、百鬼会に喧嘩を売れば組員総出で潰しに行くぞという事だと兄貴は考えている。
「そういう事だったんすか!! そんな風に考えてたなんて分からなかったっすよ」
「そらあ簡単に考えられるような事をしとっても、他の組織に遅れを取るからな。いろんな事を考えて会長も山﨑の兄貴も行動してるって事や」
「それを理解できる兄貴も十二分に、怪物級な人だと思いますけどね」
兄貴の頭の良さを再確認して、抗争にならない可能性もあるのだと頭の片隅に置いたところで、フェリーに焦った様子の男が1人が乗り込んでくるのである。
兄貴は男の顔を確認すると、立ち上がってオヤジとオジキのところに向かった。
関係ないが俺も兄貴の後ろについていき、オヤジとオジキに何をいうのかを聞いた。
「兄貴さん方、あの男に見覚えはおまへんか?」
「ん? あの男か? 確かに言われてみれば知っているような知らないような気がするなぁ………」
「なんや俺たちの知り合いだっけか?」
「間違いやったらアレなんですけど、本宮会の副会長に似てまへんか? なんて言うたかな………あっそうや。井口です、〈井口 英嗣〉でっせ!!」
兄貴が気がついて報告しにいった理由は、乗り込んできた男が現在進行形で揉めている栗原組の上部団体である本宮会の副会長である〈井口 英嗣〉がいたからだ。
本宮会の本拠地は兵庫県の愛知であり、ここにいるはずでは無い為、聞く必要があるとオヤジとオジキが言って直接話を聞きに行くのである。
「なぁアンタって本宮会の井口副会長さんだろ? どうして大阪にいるんだよ?」
「え? あ あぁ確かに井口や………たまたま別件で大阪に来とる時に、百鬼会さんが徳島に向かうっちゅうんで急いで乗り込んだんよ」
「わざわざ敵対してる組織の乗る船に来るなんて、アンタも自殺願望者か?」
「ちょ ちょっと待ってくれてや!! わしも会長も百鬼会さんとは、まともにやり合おうなんて思てまへん」
オジキが本人である事を確認してから、どうして大阪に来ているのかと聞いたら、まだ息を切らしているらしく息を整えてから理由を話し始める。
別件で大阪にいるのと、本宮会は百鬼会とやり合いたく無いというのを旨を全身を使って主張する。
オヤジとオジキは「何言ってんだ?」という感じで見ているのに対して、兄貴は一歩下がったところで何かを探ろうかという目をしている。
「なっ!! 本宮会の方も、やり合うつもりはあれへんって言うてるんやから今からでも大阪に戻ろか!!」
「戻るだと? この井口の言い方を聞いたか? やり合うつもりは無いって言ったんだぞ?」
「え? そら抗争の意思があれへんって事やろ………ここは百鬼会の深い懐で堪忍したれや」
「なぁ刑事さんよ、なんで被害者である俺たちが上から目線で、やるやれへんを決められなあかんのやって話やねんな」
マル暴は本宮会には抗争の意思が無いのだから、ここは穏便に済まそうと必死に説得して来る。
しかしオヤジとオジキは、井口副会長が言った「まともにやり合うつもりはない」という言い方に、イラッとして断固として四国に向かう事にした。
「まぁまぁ兄貴さん方。ここは井口副会長の意見っちゅうのも聞いてみまひょうや」
「わしの意見? 今回の小松島抗争に関しての意見を言うたらええんけ?」
「そやかてええけど………本宮会として今回の手打ち後の襲撃事件は、どんな風に捉えてるんや?」
兄貴はオヤジとオジキを落ち着かせるように、ちょっと後ろの方に移動させてから井口副会長に話しかける。
手打ちをした後に襲撃するなんて、誰の目にも悪だと分かる事なので、とてもじゃないが下の人間だけのせいには到底できやしない。
だからこそ兄貴は、栗原組と3代目林会の上部団体である本宮会は、どんな風に事件を捉えているのかと淡々と井口副会長に詰めるのである。
「今回の事は本家である本宮会の意向とは反して、若い衆がやったちゅうんは事実ではあるけど………下の人間の指導を怠ったのは、わしらやと理解しとる。本宮会長も心を痛めとった」
「そうですか。ちゃんと理解してるみたいやなぁ………詳しい話は徳島についてからしまひょ。井口副会長は命を狙われかねへんさかい、別室に移動してもうてもええか? もちろん料金は、俺たちが持つんで気にせんといて下さい」
「わ 分かった。そのお心遣いをお受けす………重ね重ねにはなりますが、ほんまに今回は誠に申し訳おまへんでした!!」
船内がとんでもない空気になったまま徳島県行きのフェリーが、大阪港を出発するのである。
俺は徳島で、どんな事になるのかと唾を飲む。
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