028:思わぬ可能性
028:思わぬ可能性
香川県高松市に本拠地がある《高松蓮能会》は、四国内の
そんな高松蓮能会の〈蟹沢 國彦〉会長のところに、3代目林会の石井会長から連絡が来た。
「3代目林会うて言うたら、徳島県にある本宮会系の組織やな?」
「そうです。どうやら手打ちした後に、面倒事が起きて助けて欲しいっていう事らしいんです」
「そういうたらニュースで見たな。確かハジかれたんは、百鬼会・会長の舎弟やったか? ほんで仲介役になって欲しいってわけか………」
「どうしますか? 変な事に巻き込まれるのも面倒な気もしますが、無碍にするわけにもいかんですよね?」
蟹沢会長は3代目林会の存在は知っていたが、何で電話して来たのかと話を整理してみると、百鬼会との揉め事の仲介をしてくれないかという事だった。
相手が百鬼会だと分かって、無碍にもできないが面倒事に巻き込まれるのも勘弁して欲しいと思いながら、どうしようかと若い衆と共に困っている。
2人して困っているところに《2代目松山行進会》の会長である〈岡田 聖〉がやってくる。この岡田も四舎連盟に加入しているのである。
「どうした? そなぁに深刻そうな顔して、何か問題でも起きたのか?」
「岡田か。お前が、ここにくるの珍しいな」
「同じ四舎連盟の友達に、そなん事言うなんて冷たい奴やなぁ!! 何か用事がなきゃ、ここに来たらいかんってのか?」
「当たり前じゃろ!! 組事務所に、そう簡単に来られちゃたまったもんじゃねえよ!!」
岡田は中々にフットワークが軽い男らしく、四舎連盟の加盟組織のところに入り浸っているらしい。
岡田は蟹沢たちが暗い顔をして、どうしたのかとド直球に質問する。そんな風に質問された蟹沢は「馬鹿正直に聞いてくるなよ」と思った。
しかしこれは四舎連盟にも大きく関わってくる事だと判断して仕方なく岡田にも話す事にした。
「へぇ百鬼会と揉める事態になって、その仲介を四舎連盟に頼んで来たってわけか………そりゃあ確かにめんどい事じゃろうな」
「何他人事みたいに言よるんだ? お前だって四舎連盟の一員なんやぞ? この状況、どうしたらええのか考えてくれよ」
「ほんなら受けるべきやないか? このまま四国で抗争なんてされちゃあ、なし崩しに百鬼会の足掛かりになってしまうけんな」
思っていたよりも岡田は、蟹沢の質問に対して真っ当な意見を述べて来たのである。
こういうところがあるから岡田は、38歳という若さで愛媛の老舗組織である松山行進会の2代目を継ぐ事ができたのだろうと蟹沢は思った。
「それにしても栗原組だっけか? その栗原組は、なんで手打ちした後に襲うたんじゃ?」
「そりゃあ戦後から、ずっと小競り合いしとったんやけん漁夫の利でもしよう思うたんやないか?」
「いや全くもって漁夫の利になんてなってないじゃろ。むしろ筋違いだって責められる事じゃ………もしも復讐しようにも渡世の道から外れた方がリスク高いじゃろ」
「そりゃ……確かにそうやな。じゃあ何で栗原組は、新谷組長を襲撃したんや?」
話題はどうして手打ちが成立した後に、組長を襲撃した理由は何なんだというところになった。
栗原組と〈新谷 英五〉の2代目松竜組は、戦後から小競り合いを起こして来た組織として有名だが、それでも任侠の道を外れてまでやる事ではない。
じゃあ何で栗田組は手を出したのだろうか。
「もしかしてだぞな? もしかしたら裏で絵ぇ描いとる人間がおるんやないか?」
「なっ!? そなん事して利益になる奴なんておる思うか? 百鬼会と本宮会がぶつかって利益がある奴なんて………まさかっ!?」
「そのまさかだ。裏で絵ぇ描いとる人間がおると仮定して、その可能性が高いのは《西日本親和会》の誰かって話じゃ!!」
西日本親和会と東日本親和会は、同じ系列の親睦団体で共通している事は《反百鬼会》を掲げてる事だ。
もしも裏で絵を描いた人間がいるとするのならば、百鬼会に不利益がある事に利益を感じるのは反百鬼会を上げている誰かだろう。
そんな結論に至った2人は、何ともいえないような雰囲気になって静まり返る。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は四国侵攻に向けて、華龍會から連れて行くメンバーの選定を行なっている。
若い奴らは自分が行きたいという事を、目でアピールして来るので決めかねている。それでもメンバーは選べとオヤジやオジキ、それに兄貴にも言われているから無理にでも決めるのである。
「今から徳島に連れて行く人間を発表する!! これは俺の独断と偏見で決めたメンバーだ!!」
『はいっ!!!!』
「和馬副会長、宮木舎弟頭、野中理事長、大鈴理事長補佐、青坂理事長補佐、花里組組長、今蔵組組長の計7人に若い衆を連れて行く………残りの吉田、隅田、菅、黒江、坂根、宇野には関西に残って奈良県の統治を進めてもらう事にした!!」
『はいっ!!!!』
中々難しいところではあったが、これまでの結果や期待値、そして適性などを考えて独断と偏見で決めた。
選ばれたメンバーは「やってやる!!」と、やる気になっているのを見て予想通りだと思った。何よりも残されるメンバーの方が気になっていたが、残るメンバーは残るメンバーで奈良県を片付けようと、そこまで落ち込んでいる様子では無かった。
良かったと思ってひと段落したので、俺は選んだメンバーを兄貴やオヤジ・オジキたちに報告する為、小野の運転で広瀬組の事務所に足を運ぶ。
「連れて行くメンバーは決まったんか? どれどれええメンバーを選んだかな………おぉこれから期待されてるって話しとったメンバーたちやんけ」
「それだけではなく、期待しているメンバーも選んだんで活躍してくれるかと思います。まぁ残るメンバーの方をケアしたいところですけど、思ったより落ち込んでいなかったんで安心しましたけど」
「そんなんで凹んどったら、これから先が思いやられるやんけ? 花菱のとこに限って、そんなみみっちい奴がおるとは思えへんけどな」
「そう言っていただけて嬉しいっすよ」
さすがはオヤジで俺たちの扱い方を理解している。
冗談混じりな事を言いながらも、キチンと俺たちのフォローをしてくれる最高のオヤジだ。
そんなオヤジに、お礼をするっていうほどの事では無いが若頭にしてやろうと思った。
そんな風に思っている時にある事を思ったのである。
それは今回の作戦を総指揮を取るのは、オヤジなのかというところである。もしも成功したら、空いている若頭の地位に就けるかもしれない。
「いや、総指揮を取るんは俺ちゃうぞ? 山﨑の兄弟が任されてんで。俺は副官として兄弟のフォローをするようにってオヤジにも言われてんねん」
「そうですか、オヤジが総指揮じゃなかったですか。ちょっと残念な気分ですね」
「自分の考えは分かってんねん。今回の作戦で俺が指揮を取って上手ういったら、空いてる若頭の席に就けるかもわかれへんって思てるんやろ?」
「オヤジには敵いません(笑) どうにかオヤジを、次期若頭にしてみせますよ!!」
オヤジには考えが読まれていて、さすがは百鬼会の中でもトップレベルで頭がキレる人だと思った。
そして遂に百鬼会の四国侵攻の日がやって来る。
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