第41話 催眠を使ったやりたいことってなんだよ
──
それから音ノ葉は、催眠アプリを持つ必要性を長々と語り出したが、当然俺に響くわけもなく……呆れた声で俺は話を要約して。
「……色々言ってるけど、要は消したくないんだろ?」
「まぁ……そういうことですけど」
きまり悪そうに音ノ葉は言う。まだ催眠を持っておきたいって気持ちも、分からないわけじゃないんだけど。
「そりゃこの力を持った人が自分らだけになったら、好き放題やりたい気持ちも分かるよ。でも……それだと俺らが消していった催眠持ちと、考えが同じじゃないか」
「……」
「俺らは催眠撲滅を掲げてここまで来た。催眠を消していった俺らが最後にこのアプリを消すことで、それはようやく達成されるんだ」
「も、もちろん隆太様の言いたいことも分かりますが……」
「分かるなら早く消せって」
言いつつ俺はスマホに手を伸ばすが、音ノ葉はそれを拒んで。
「で、でも……どうしてもやりたいことがあってですね……」
「なんだよ? まさかハーレム世界でも作る気か?」
「ち、違いますよ!」
「やましいことないなら言えるはずだろ?」
「…………」
音ノ葉は何も答えずにいた。それなりの付き合いで、音ノ葉が嘘をつけるような性格じゃないってことはなんとなく分かってるから、やましいことをしようとはしてるんだろうけど……。
……と、ここで音ノ葉を助けるように滝宮さんがこう口にして。
「……では、期間を設けるのはどうだろう」
「期間?」
「ああ。何日か後に日にちを決めて、それまでは催眠を持ったまま過ごし、最後の数日を楽しむ。そして当日が訪れたら、ちゃんと全員消すというのはどうだろうか」
「……その数日に世界がめちゃくちゃにならない保証は?」
「まぁ、そこは私らの良心に任せればいいだろう。もう我々は仲良し集団だからな。そーんな世界をめちゃくちゃにする奴なんているわけないだろう」
「大フラグ立てないで」
ずっと言ってることだけど、このアプリは人を操れるんだから、使い方次第で本当に世界を破滅させることだって可能なんだ。ってか今までエロいことだけで済んでたのが、逆に奇跡に近いくらいなんだけど……。
……で、意外にも松丸さんはその提案に乗ってきて。
「で、でも……いいかも。期間になったら私、絶対に消すから」
「松丸さんのことも信じたいけどさ……そもそも、催眠を使ったやりたいことってなんなんだよ?」
すると三人は顔を見合わせたまま黙り込んで……。
「……」「……」「……」
「それは言えないんだ」
「言えません……け、けど! 本当にやることやったら消しますから!」
「う、うん! 私も!」
「私もそれは約束しよう」
「…………」
はぁ……どうしようか。このまま話し合いを続けても埒が明かなそうだし、この折衷案を受け入れるしかないのか?
「はぁ……」
でもまぁ……これまで一緒に戦ってきて、みんなのこと信頼してるし。変なことには使うだろうけど、人のことを傷つけるような使い方は絶対にしないって信じてるから。この条件を飲むべきだろうか……。
「……分かったよ。じゃあ3日後な。3日後になったら問答無用で消してもらう。信じてるけど、万が一裏切ったらどうなるか分かるよな?」
そう言うと三人は目を輝かせて、返事をして。
「はいっ……! 分かりました!」
「うん、分かった……!」
「ああ……まぁ催眠持ってる私らの方が、絶対に力は強いんだけどな?」
「そんなことは分かってるよ。俺はお前らを信じてるからな……俺を失望させるような使い方はするなよ?」
「はい! もちろんです!」
……という感じで、今日の部活は終了したのだった。
──
次の日。俺は変装をして、三人の動向を追っていた。
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