第32話 さぁ、どう来る……?
それから更に数時間経って……メイド喫茶は無事に終了した。俺がメイド服のまま教室の片付けを行っていると、クラスの女子が俺に話しかけてきて。
「隆太君、お疲れ様。なんか噂によると、歴代最高の売上だったみたいだよ! これも全部、隆太君のお陰だね!」
「いやいや、そんなことないよ……」
……なーんて口では言ってるが。99%くらいは、自分の力だってことは分かりきっていた。でも……なんか認めたくないんだよな。
男のメイドが需要あるってこと知ってしまったし、ほんのちょっとだけ楽しいと思ってしまった自分がいるし、新たな扉開いちゃいそうだし……いやいや、しっかりしろ隆太。俺は喜んでメイド服を着るような男じゃなかっただろ。
「……そうだ、音ノ葉がどこ行ったか知ってる?」
丁度良かったので、その女子に音ノ葉の行方を聞いてみることにした。終わってから一度も姿を見ていないので、心配……というかサボってるだけなんだろうけど。すると彼女は、廊下の方を見ながら。
「えっと、隣の教室で寝てるみたい。きっと疲れちゃったんだろうね」
「そっか……」
確か俺らのクラスの隣は休憩室だったな。そこで休んでるんだろう……まぁ、あいつもメイド喫茶の調理やホールを担当しつつ、俺が催眠や危ないことに巻き込まれてないかずっと監視してくれたみたいだし。
それを休憩なしで最初から最後までやってたから、疲れるのも当然か。少しくらいは寝かせてやろう。思った俺は起こしに行くわけでもなく、また掃除を再開した。するとその少女は、俺に近づいてきて……。
「ね、ねぇ……隆太君。この後……時間ないかな?」
震えた声でそう言ってきた……えっ? まさかこのタイミングで催眠を使うつもりか……? まぁメイド喫茶も終わって人も少なくなっているし、それにずっと目を光らせていた音ノ葉もいない……催眠を使うなら、絶好の機会だよな。
でもピンチはチャンス……俺だって催眠持ちを消す、絶好の機会なのだ。でも音ノ葉がいないから……滝宮さん達にヘルプを頼もうかな。
「分かった。ちょっとだけ待ってて」
「うん……」
そして俺は一旦トイレに行って、滝宮さん達に『催眠をかけられるかもしれないから、ヘルプ頼みます』とメッセージを送信した。そしたら『音ノ葉は?』と当然の疑問を投げられたので、『今ちょっと動けそうにないです』と返事をした。
そしたら『了解、松丸と向かう』と返してくれた。よし、これで多分大丈夫だろう……そのまま教室へ戻ると、なぜかさっきまで掃除をしていた他の生徒がいなくなっていて、その少女一人だけになっていた。
「……?」
どういうことだ……? 事前に他の女子と協力してもらい、出ていってもらったのか。それとも催眠で出て行かせたのか……まぁ何だっていいか。
俺は一歩ずつ踏み出し、その少女へと近づいていった。さぁ、どう来るか……不意打ちか? 脅しか? 暴力か……? 俺は彼女の行動を待った…………。
「…………」
「…………」
……なんだ? 様子を見ているのか……? でも視線も定まってないし、息も荒い……緊張しているのか? 続けて俺は彼女の言葉を待った────
「りゅ、隆太君……! あ、あの。その……えっと……」
「…………」
「す、好きです!! 私と付き合ってくれませんか!!」
「…………えっ?」
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