第23話 黒幕の正体は?
「ああ、なるほど……! 確かに私、集会の時とかにも持ち込みますから、その時も持ち込んだ可能性は十分にありますわ!」
「私も記憶が無いからなんとも言えないが……禁止されようが平気で持ち込みそうなことはするだろうな」
二人とも確信まではしなかったが、そういうことをしそうだと自分でも認めてくれた。やっぱり共通点は『スマホを持ち込んでいた人』で間違いないだろう。
「ああ。映像撮ってたアイツはもちろんのこと、芹沢や篠田は素行はあんま良くないし、教師ならスマホは常時持ち歩いてる可能性は高い……催眠アプリを入手する条件は、これで間違いない筈だ!」
「なるほど……! じゃあスマホを常に持ち歩いている人が、催眠アプリ持ちの可能性が高いってことですね!」
「そうなるな」
催眠持ちを絞り込みやすくなったから、この情報はかなり大きい……これでまた、催眠撲滅に一歩近づいたな。
「だけどこの黒幕の方はどうするんだい? こっちはほぼノーヒントだろう」
「確かにそっちも気になるな……もしも俺らがここまで真相に近づいてると知ったら、記憶を消しに来るだろうし」
俺らが催眠を消すのに夢中で、その催眠を配った黒幕に感づかれたら、一巻の終わりだし。やはりそっちも無視は出来ないよな……やはり催眠持ち消しと黒幕探しは、同時進行で進めていったほうがいいだろう。
「じゃあ分かれて調査しよう……滝宮さんは催眠持ちを消してってください。俺と音ノ葉はその黒幕を探してみます」
「分かった」
すると聞いた音ノ葉は、嬉しそうに両手を合わせて。
「隆太様……やっぱり私を選んでくれるんですね!」
「……いや。だってお前、滝宮さんと組まないだろ」
「はい。当然ですわ」
──
それから俺と音ノ葉は数日間掛けて、スクリーンを自由に扱えそうな教員や生徒会などを中心に情報を探ってみたが……特に有力な情報を手に入れることは出来ずにいた。それで今日は報告会ということで、部室に集まっていた。
「そっちの調子はどうだい?」
「いや……確かに催眠持ちはいたけど、親玉みたいなのは見つけられなかった」
「そうかい。まぁ焦っても仕方ないからね」
そう言いつつ、滝宮さんは上品にコーヒーを口にする。それとは対照的に、音ノ葉はメロンソーダをシュワシュワさせながら、こう呟いて。
「んー……やっぱ黒幕が教師や生徒会って線は違うんですかね。もう一度考えを改める必要があるかもしれませんわ」
「でもヒントが少なすぎるしなぁ……」
言いつつ俺は何度も見た、盗撮女から貰った球技大会の映像をスマホで流す。俺らとは次元の違うレベルの催眠、そして何か言い争う声……あともう少し何か分かればいいんだけどな。……と、そこで滝宮さんは俺らにアドバイスをするように。
「なら考え方を変えてみるのはどうだい? 黒幕は催眠アプリを配ったのではなく、意図せず配ってしまったものだと考えたらどうだろう」
「意図せず? あっ、もしかして……音ノ葉達のスマホに催眠アプリが入ったのは、事故なのか?」
「可能性はあるね。本当に催眠アプリを配りたいのなら、全員にスマホを持ってこさせたりするだろうし、記憶を改ざんするのも意味が分からないからね」
確かに……ただ催眠アプリを配りたいだけなら、記憶を消す必要はないし。一部にだけ配りたかったとしても、球技大会全部の記憶を消す理由が分からない。
「えっ? えっと……じゃあ黒幕っていうのは、何かがあって催眠の力を持っちゃって。それを全員にかけようとしたけど、ミスってスマホを持ってる人にも配っちゃったってことですか?」
「ああ。一斉に全生徒に催眠をかけられるくらいの力があるのなら、なんだって出来そうなものだが……言い合いになっているのが確認できたから、多分何かしらトラブルが起こったと考えられる」
「じゃあ逆にそいつは焦ってるかもしれないってこと?」
「ああ。なんなら黒幕も私らと同じことをしてるかもしれないね」
俺らと同じことって、まさか催眠を消していってるってことか……!?
「え、じゃあ味方ってことですか!?」
「あくまで可能性の話だがね。虎視眈々と私らを狙っている可能性だってある」
「でも……これだけ催眠が流行ってるのに、被害が思ったよりも出てないのは俺も気になっていた。自分の記憶はあまり信頼出来ないとは言え、催眠の脅威を知ってる俺らがこれ以上偽の記憶を持ってるとは思えない」
記憶が改ざんされている可能性もあるけど……今のところ俺達は、俺以外に催眠をかけようとしている場面は、ほんの数回しか見たことがない。催眠持ちの割合から考えると、その回数は明らかに少なすぎるのだ。
「む、難しいですね……要するに黒幕も催眠を消して回ってるってことですか?」
「そうかもしれないってこと。でも俺ら以外に催眠を消してる人物なんて見たことないけどな……」
「私達とは違うやり方なんでしょうか?」
まぁまだ黒幕が味方だと決まったわけじゃないけど……その可能性がある以上、確かめる必要があるかもな。でもどうやって確かめればいいんだろうか……と思っている時に、滝宮さんが口を開いて。
「……なら。釣ってみればいいんじゃないかい?」
「え?」
「私らが江野に催眠をかけると宣言したら、黒幕が止めに来るかもしれないだろう?」
「なるほど……いい考えかもしれない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます