催眠アプリが流行っている貞操逆転世界に転生してしまった

第21話 女の着替え見るくらいで照れないでいいってば

　──

　それから俺は色々と話を聞いてみたが、有力な情報は掴むことが出来ず……ってかなんなら、俺が男の写真を集めたがってる変態だと勘違いされまくったんだけど。大丈夫かこれ。

『隆太様、もう遅いですしそろそろ引き上げませんか？』

　音ノ葉からメッセージが届く。まぁ彼女も付き合わせちゃってるし、一旦仕切り直して明日からまた情報収集するべきだろうか……。

　思いつつグラウンド周辺を歩いていると……部活終わりだろうか。テニス部の集団が校舎の影になっている部分で、着替えをしているのが見えた……って、なんでこんなところで着替えてんだよ……！？

「……あ、江野君ー！　今帰り？」

　それで俺の視線に気がついたのか、同じクラスの女子が下着姿のまま手を振ってきた……え、ちょ、そんな格好で話しかけないでくれって……！！

「えっ、いや、ご、ごめん。見ちゃって……」

「えー？　かわいい。女の着替え見るくらいで照れないでいいってば。ウチらいつもここで着替えてるしさ」

　え、ええ……こんな誰でも通るようなところで？　……でもそうか。思い返せば前世でも、男はどこでも着替えてたっけ。女子は教室で、男は外で着替えるなんてザラにあったし……本当にまるまる概念が入れ替わってるんだなぁ。

「……じゃあ更衣室は？」

「それは男子が使ってるよ。流石に男子を外で着替えさせるなんて出来ないしさー」

「なるほど……」

　……ってか待てよ。ふと思ったんだけど……その映像を売ってるやつって、どこでどんな風にして集めているんだろうか。そう例えば……男子更衣室なんかは、格好の餌場じゃないだろうか……まさか。まさかな……？

『音ノ葉、テニス部の更衣室前に怪しいのがいないか調べてみてくれ』

　念の為、俺は音ノ葉にメッセージを送ってみる。すると即座に返事が返ってきて。

『変なのいました！』

　と、写真付きで返事が返ってきた。どうやらそいつは窓から中を覗こうとしているようで……怪しすぎだろ。もっと上手いやり方はねぇのかよ。でも十中八九、こいつが売人で間違いないだろう。

『すぐ向かう』

　そう返信して、俺も更衣室前まで走るのだった。

　──

　そしてテニス部の更衣室の近くまで来た俺は、音ノ葉と合流して……まだ中を覗こうとしている盗撮魔へと、声を掛けてみた。

「おいお前……なにしてんだ？」

　するとその女は飛び跳ねるように驚いて、後ずさりして。

「うえっ！？　なっ、なんでこんな時間に人が……！？」

「お前を探してたんだよ。念の為聞いておくが……お前が男子生徒の写真や映像を売っているヤツで間違いないよな？」

　俺がそう聞くと、女は額に汗を流しながら頷いて。

「そ、そうだけど……もしかしてこのことを先生に言うつもり……？」

「場合によってはな……お前が一週間前に撮った動画を見せてみろ。俺の予想が正しければ、お前の記憶にない動画が残ってる筈だ」

　早速俺は本題に入り、一週間前の映像を見せるよう要求する。女は不思議な顔をしながら、スマホを確認すると……どうやら本当に記憶にない動画があったみたいで。

「あっ、ホントだ！？　なんだこの動画……？」

「実はその日、球技大会があってな。色々あって、その日の記憶を俺らは消されてる。ちなみにだけど……お前、催眠アプリ持ってるか？」

　そう聞くと、女は途端に黙り込んで……。

「……」

「正直に言わなかったら、全部先生と警察に報告しますわよ？」

　ここで音ノ葉の追撃が入る……俺らが催眠を持っていることは、なんとなく分かっていたのだろう。観念したかのように、女は呟いて。

「そ、それは…………持ってるよ。まだ使ったことないけど……」

　……後々使うつもりなんだろうなぁ。まぁ今はそんなことよりもだ。

「とにかく映像を見せてくれ。お前に拒否権はないぞ」

「わ、分かったよ……でも本当に球技大会なんてのがあったら、私は絶対カメラ回してるだろうね。男子の着替えや濡れ透けなんか狙えるだろうし……」

「今回ばかりは、この変態がいてくれて助かりましたね！」

「ああ……」

　あんま素直に喜べないんだけどな……そして俺らは三人でその映像を見ていった。内容は数少ない男子生徒達が、バスケットボールをやっている映像で……やっぱり本当に大会は行われていたのか。ってか俺も映ってるし。

「うおっ、隆太様の腹チラ……ヤバすぎですわ！！」

「おお、この映像を撮った人センスあるね。あ、私か……」

「…………」

　まぁこのバカども二人は放っておいて……俺は隅々まで気を配って映像を見ていった。だが、大会は通常通り行われていて、気になるところは特に何も無かった。

「んー、普通ですね。この映像にはヒントはないかもしれませんわ」

「ああ……でも実際に球技大会があったことは分かった。この情報は大きいぞ……念の為に最後まで見てみよう」

　そして俺らは最後の表彰式のところまで映像を見ることにした。相変わらず男子生徒を中心に、ローアングルの映像ばっかで見づらいったらありゃしなかったが…………って、ん！？

　突如、映像が真っ暗に変わった。停電……？　いや、まさか……！！　

「えっ、何が起こってるんですか！？」

「……おい、ステージのスクリーンを見ろ！　あれに映ってる映像って……催眠アプリを発動した時に出るやつと同じじゃないか！？」