第2話朝と昼の宿屋

 宿屋の双子の朝は早い、一番始めの仕事は日の出前に起きて両親のところにあいさつに行くことだ。


「「おはようお母さん、お父さん」」

「おはよう、二人ともまだ眠そうだな」

「おはよう、二人とも髪の毛を整えるからこっちに来て」


 そう言われ双子は眠そうにまぶたをこすりながらもお母さんに身だしなみを整えらてもらう。


 本来男の子は普段から身だしなみは整えないがフロレスは女の子のような髪型なので楽しそうなお母さんにいつも長い髪の毛を櫛で整えられている。


 次の双子の仕事は重労働の水くみだ。

宿屋の裏手にある井戸から水を汲んで大きい鍋に移さないといけない。


 まだ五歳の二人にはとても重労働で二人は井戸の縄を引っ張り水を汲んで鍋に入れるこれを数回繰り返しただけで肩で息をしながら額にはたくさんの汗を流していた。


 最後は沢山水が入った鍋を厨房のお父さんのところに持って行って仕事完了だ。

 双子は二人で息を合わせ鍋を持ち上げ途中おろして休みながらも無事仕事を完了させた。


 双子はやり切った表情をしながら二人仲良く一緒になって「「はぁ、はぁ、はぁ」」と息を切らせて座り込んでいる。


 少し落ち着いたら次は掃除だ。

掃除に行こうと意気揚々とするフロレスをみてエレーナこれはいけると思い少し駄々をこねた。


「フロ、もう昨日一生懸命に掃除したよ。今日やらなくてもまだ十分綺麗だって、掃除しなくていいでしょ」

「でも、使ったら汚くなるよ」

「そう?私から見たらもう十分きれいだからどこ掃除すればいいか分かんないだけど…」


 そう言いながら何かを訴えかけるような目でフロレスを見上げるエレーナ


 その顔を見てフロレスは呆れるような諦めたような思いを抱きながら


「はぁ、分かったよ。あとは自分でやるから姉さんは先に遊んできていいよ」

そう言うしかなかったのであった。


 それに対しエレーナは「ありがとう」と言って元気よく消えていった。


 残されたフロレスは姉さんだから仕方ないそう思いながら床やテーブルを掃除して最後に念入りに花の手入れをして回った。


 この世界では朝食は貴族や王族などの上位階級の者たちだけが食べるため平民に朝食をとるという習慣はない。

そのため宿屋は朝食の提供は無く昼も基本的に外でやっている市場で食べるため提供することはほとんどない。


 朝の仕事を終えたら双子は夕方まで自由時間だ。姉のエレーナは町の子たちと遊んだり冒険者ごっこをして遊んでいる。

 お父さんの手が空いていたら元冒険者のお父さんに剣の扱い方を教えてもらっている。


 フロレスは2つの事をしようと冒険者ギルドへと向かっていった。


 いつものように冒険者ギルド入り受付の人に宿名と自分の名前を伝えてお父さんからのお礼と空き部屋の数を伝える。

これが一つ目の目的である。


 フロレス達の宿は冒険者ギルド承認の宿屋で冒険者ギルドに紹介してもらってお客さんが泊まったら紹介料を渡す。

逆に紹介されたお客さんが問題を起こしたらギルドがお金を補填するという仕組みでお互いに手を取り合っていた。


 なのでよく出入りしているフロレスは冒険者の人達に宿屋の子供だと知られており話しかけても怪しまれず気兼ねなく話してくれる。

だから二つ目の目的もスムーズに進んでいく。


 フロレスは最近花や植物以外ではまっていることがあった。

それは商人の会話を聞くことだ。


 商人たちの会話は面白く相手の心を見透かすかのように話したり、優しい笑顔をしながら遠回しの表現で相手を騙したりする。


 ひどい時だと昨日まで泊まっていた人が身ぐるみをはがされて裏路地で寝ている姿を見たことがある。

凄い衝撃的だったのをよく覚えてる。


 相手にすると怖そうだけど話を聞く分には楽しいのだ。


 最近は商人相手でも笑みを引きつらないで楽しくやり取りができる。


 彼らは宿屋に来ると皆同じように

「嬢ちゃん、最近変わったことやおもしろいことはないかい?」

そうやって優しい顔で訪ねてくる。


 そんなときにしっかりと情報を持っていると強気に出れて楽しくなる。

なので何気ない事でもフロレスは情報を集めようと日々頑張ってる。


次は趣味の時間だ。

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