がんばれ双子譚(ふたごたん)

@8_ma

第1話宿屋の噂

 ケルド辺境伯爵領内には「狂いの森林」と呼ばれる広大な森林が存在している。「狂いの森林」では狂暴な魔物や魔獣が生態系を作っており人々に恐怖と死を与えていた。


 <魔獣、魔物あるところに冒険者あり>そんな風に人々に言われるぐらいこの世界では冒険者というのは馴染みある職業であった。

だから魔獣、魔物が多くいる狂いの森付近の都市では素材や依頼目当ての冒険者やお金のにおいにつられた商人などで年中賑やかだ。


 旅人、よそ者が多い街の中で珍しい宿屋があるという噂があった。


 「そこはなんと言っても宿屋なのに宿の中がもの凄くきれいで美しい。それから飯や酒が美味く、接客に小さくて可愛い双子の天使がいる。だから旅人、よそ者から旅の天国そう言われてる宿屋があるんだとよ」


 「おいおい盛りすぎだろ、そんなうまい話あるわけねーよ。おまえ思い出してみろよ今まで俺らが止まった宿を、どれもこれもこれだけあれば寝れんだろといわんばかりの小さくて汚い部屋にめしは獣臭い肉と薄まったエールこれが宿屋っていうもんなんだろ」


「わかってるよ。でも噂が本当だったらまさに俺らの天国だな」


「そうだな。本当だったら俺も可愛い天使に癒してもらいたいぜ」


 そんな話があちらこちらに広まるぐらいこの時代には珍しい泊まり続けたくなるような噂の宿屋、そこには皆から愛されている可愛い双子の噂が流れていた。


 「宿屋対翼ついよく亭」そんな風に噂の宿屋は周囲の人達から呼ばれている。


 この宿屋見た目は普通の宿屋で店先に吊るされている看板は宿屋を表す丸形の看板そこに羽根の絵が記されている。


 驚くことに中は新築じゃないかと見まがうぐらいきれいに保たれていた。


 そんな中でも目を引いたのが飾られてる花だ。普通の宿屋には無い色とりどりの花が咲いた鉢がいろんな所配置されていてとても華やかな雰囲気だった。

険悪な雰囲気など絶対に許さないそんな意志を全身で感じ取れるほど綺麗で華やかで賑やかな宿だと直感できる。


 そんな一風変わった宿には一風変わった者が集まるのだろう。


 見るからに強そうな冒険者のパーティーや常に楽しそうに笑ってる商人風の男など変わった面持をした者が賑やかに飯を食っている。


 そんな中に可愛らしい働き者の姿があった。

この宿屋の主の子供である双子の姉弟エレーナとフロレスだ。


 見た目は両方ともとても可愛らしく将来美人と美青年に育つだろうという見た目をしている。


 けど変わった宿と言われている宿屋の双子だ変わり者でないわけがない。


 この双子見た目がまず変わっている。姉であるエレーナは男の子のように髪は短く口調は男のように荒くしゃべる。弟のフロレスは女の子のように髪が肩にかかるぐらい伸びており口調は普通にしゃべる。


 双子は姉弟が逆に見えるような見た目をしており周りからはからかわれ楽しまれていた。


 そんな変わり者の双子でも変わり具合では弟のほうが一歩抜きんでていた。


 弟のフロレスは花や植物にもの凄く心を惹かれていた。

宿屋の花はすべてフロレスがやったことだ。

花を置くために宿中を綺麗にし始めたのもフロレスだ。

宿屋の噂をほとんど作り上げていたのは宿屋の主ではなくフロレスだった。


 そんな自分の欲望に忠実な男の子フロレス。

変わった星のもとに生まれ変わった運命を持つ男の子。

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