天海楓

啓蟄やなにも這い出ぬ灰の澱


轟きし春分やまだ常夜燈


清明の褐色の風顔覆ふ


穀雨にてふと消ゆる懐かしき顔


煙立つどこもかしこも立夏なり


小満よ光芒の彼方に嵐


雨の溶く種の亡骸芒種かな


遠き水永遠に追ひけり夏至の日や


骨拾ふ壺いつぱいに小暑かな


オゾン朽ち癌の陽光のみ大暑


立秋や蔓に砕かれビルディング


処暑の暮存命の声嘶くや


白露かな世界の果てもきつと白


秋分や土に潜りて来世まで


また歳を重ねたし寒露へくさめ


霜降の防霜ファンも動かない


戦ぎたる黒き川面に立冬や


小雪か石油なき震へに毛布


大雪や穴持たず彷徨へる夜


地中より萌ゆる音する冬至かな

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天海楓 @Amamikaede

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画