第八幕 復讐
『キャァァァァァッ!』
不気味な白蛇が
だがそんな現状を知ってか知らずか、巨大な魔物を討たんとして敢然と立ち向かう魔女が、たった一人だけいた。
「うわぁ……体の構造どうなってんのよこいつ。きしょいわね」
白蛇に見つからないよう城の周りを
一つ、レイチェルには奥の手がある事。それは一定時間白蛇になる「
変化魔法は、希少な魔法であり基礎魔法の上級扱いとなっている。使用すると様々な姿に変化するほか、傷が完全に癒えるというものだ。また、この魔法には変身の前後に
そして「虚ろなる大蛇」はそれを極めたものであり、上級魔法から繰り上げて最上級魔法にあたる。陸上、海上を自由に移動できる上、高熱のガスを吐き、眼から光線を放つなど、その他様々な攻撃手段を備えている。
二つ、白帝界の全体像。もちろん、レイチェルの宝玉の隠し場所も記載されていた。だがそこへたどり着く道は複雑で入り組んでおり、魔法による監視や罠まで配置されている。これを目指すのは現実的ではない。
最後に、その他の細かい情報が記されていた。
これらの情報からまずレイチェルに血争劇をしかけ、奥の手を引き出させるまで削る。
「んで、あいつの罰則といえば恐らく魔力出力の低下ね……ちょっと割にあわないと思うけど、そのくらいヤバいやつってことよね」
戦略を練っていると、突然白蛇が動きを止めた。
「ミツケタワ、クソガキ」
構えようとするも視界がぼやけ、杖のコントロールがふらついた。
「ハハ、長くは持たないわね……でもアタシはっ、絶対に挫けないわ」
歯を食いしばって、無理やりに立て直した。
「モエツキナサイ」
光る眼から、熱線が放たれた。持ち前の反射神経で回避した後、振り返ると熱線は水平線の遥か向こうまで届き
「うっわ、こんなんかすっても消し炭確定ね……エグ」
向き直ると、何故か視界が暗くなる。
白蛇が
「カミクダイテヤルワアアア」
「噓だろ!?」
杖の
「
左手を顎にそえて、再び戦略を立てる。
「よし」
なぜか孤城から離れ、
白蛇の
「さて、次はどうくるかし――」
リザが白蛇の次の行動に思考を巡らせようとした瞬間、
「早ッ――!」
頬を
「ぐうっ……!」
空中を
「これがいくつもの攻撃の選択肢から続くってワケね。ふざけんな! 『
「どれも一発直撃したらアウトね……。マジのクソゲーだわ、笑えてくる」
集中を深めて、見る。
よく見る。
次の一手は――。
「ッ! 見えてても関係ないってか! クソがあああああ!」
海面がまるで、満天の星空のようにキラキラと
そして千を超えるホーミング型の光線が姿を現した。
城に向かないように
「ッアアアアアアアアアアア!」
残り四百。
三百。
二百。
しかし、ほんのわずかによろめいたその時。
「しまっ――」
光の中へ消えるリザ。
落下地点を予測した白蛇が顔を出した。
「クライツクシテヤル」
しかし、海上に落下するはずのリザの姿はどこにもない。
「ドコヘイッタ……?」
白帝界の屋上に、少女は立っていた。
「ゼェッ……『逆進点』……ッハァ、ここが
事前に用意した避難先であるへ瞬間的に移動し、ホーミング弾を直撃したように見せかけた。作戦を完遂させるために限界まで城から遠くへ引きはがし、時間を稼ぐ必要があったのだ。
「あれっ」
両脚に力が入らず、倒れる。
もはや彼女の限界は、とっくに超えていた。
「…………」
心の底を、果てない闇が支配していく。
――もう諦めよう。痛い。辛い。
……いや、■す。■してやる。
だがそれでも彼女は。
「……っうぅ、頑張れアタシ……!」
ガクガクと震える脚を何とか抑え、杖を支えにして立ち上がる。
吸って、吐いて、深呼吸し、杖を突きだして構える。
「『詠唱、開始』」
青髪の魔女に
「『
「『我、
「『
「『凍てついた世界で
「『今こそ氷の加護の
大気が
「コンドコソ、ニガサナイワ」
口を開くと、そこに
……感情が、膨れ上がっていく。
――アタシの名前返しやがれよクソが! 出力足りねぇよ!
ムカつく、憎い、悲しい。
……絶対に■してやるからな……! 畜生、畜生、畜生!
そして。
――ミハイル、アタシ、アタシは!
誰に届くでもない、心の奥底の本音を全力で叫んだ。
「アタシは、負けたくないー!!!」
互いに
「リザ様!」
再び、呼びかけに応える聖者。
上空から、聞き覚えのある凛と透き通った声が響き渡ったのだ。
リザが振り返ると、杖に乗った猫耳のミハイルが尻尾を振りながら宝玉を放り投げていた。
ミハイルは、いつものにこやかな笑顔で。
「頑張ってくださいましー!!!」
リザは、
「うん!!!」
宝玉が輝きだし光の粉となって散り、青髪の魔女を包んだ。
そして
全身全霊で、会心の一撃を叩き込む――!
「『
「『
衝突する絶大な魔力。
「ッアアアアアアアアアア!」
「グオオオオオオオオオオ!」
その果てに。
カッ、と青い閃光が貫いた。
「ガアアアアアアアアアア!」
晴天の
◇◇◇
「ハァ……ハァ……アタシの、勝ちね」
「……そうね。そして私の負けよ」
倒れ伏したレイチェルに馬乗りになり、杖を縦にして突きつけるリザ。
「さぁ、刺しなさい。あなたの復讐劇はこれで
青髪の魔女は
そして高揚感を抑えたような声色で、告げる。
「ええ、そうね。さようなら、レイチェル。ヒヒッ……」
一転、心の
「これで■ね」
放たれる、残酷な氷魔法。
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