第ニ幕 残滓
晴れ渡る空と広大な澄んだ湖が
そんな景色に
「ですから!
「あー、もうわかったよしつこいなぁ。じゃあそういう事にしておくってば。あ、アタシの復讐だけは邪魔すんなよ、マジで」
宿屋を
このメイドの女性はリザの「友」であると言い張っており、真名をミハイル・サーヴァンツと名乗っている。由緒あるメイド一家として生まれ育った彼女。
「まぁ、いいですわ。コホン、それではレイチェル様への対抗策ですが――」
ミハイルが腕を組み、指を振りながら
次の瞬間。
ボウッ、と弾丸のような高速の火の球がこちらへ目掛けて放たれた。
が、凄まじい反応速度でリザはミハイルを遠くへ突き飛ばし、さらに自らも少し後方へ回避した。
「ヒヒッ、丁度いい相手みーっけ。アタシの経験値の足しにしてやるわ」
キャッ、と体勢を崩すミハイル。
見上げると、杖に跨って魔女が浮遊していた。
リザは
「今ので仕留めそこなっただと? 確かに標的の家名を奪ったとレイチェル様は
白のローブを
疑問を
「『原初の魔女に誓う。我が血を懸ける』」
血争劇の、儀式である。
「ちょっ、リザ様!? 今の状態で血争劇を申し込んだら対価は――」
「いいから見てなって。今からあの雑魚、ボッコボコに叩きのめすから。アハッ」
家名のないリザにとっての血争劇での対価は――命である。
しかしリザは
「貴様、正気か!?」
白い魔女はあまりの
「……いいだろう、受けて立つ。せいぜい後悔するんだな。『原初の魔女に誓う。
覚悟を決め、魔力を込めた指先で紋様を指差しながら告げた。
紋様が砕け散り。
「舐めるなぁっ! 今の貴様に勝てる
魔女には、生まれつき備わった固有魔法と
「自作した魔法ね。中級の上振れって所かしら。確かに物量は十分だけど粗すぎるわ、あの女ならもっと精密に狙ってくる」
少し手前に着地した赤髪の魔女へと着実に歩を進めていった。
「す、凄い……! 制限された力を技術で
思わず
「そこまでだ! その状況でこれは避けれまい! 『
術者が上級魔法を唱えると頭上で浮遊していた
「リザ様ッ!!!」
響き渡る、ミハイルの悲鳴。
突き付けた杖の先から高速で放たれた、たった一つの氷の結晶が――。
パキ、と赤髪の魔女の
「ガッ……ア……!?」
「『
術者が気絶したため
確かに彼女の魔力、身体能力は大きく退化した。しかし何年も積み重ねてきた白帝界の戦闘経験そのもの、血の
「リザ様ー! 超・絶、カッコ良かったですわ!
と、ここで後方で見守っていたメイドが明るく手を振りながらわたわたとこちらへ駆け寄ってきた。
「ええ。これでやっと本調子の十分の一くらい、ってとこね」
振り返り、不気味な笑みを
リザが現状から手っ取り早く実力をつける方法は大きく分けて二つ。
一つ目の方法は、血争劇で家名の刻まれた宝玉を奪い取る事。
二つ目の方法は、誰かから
この世界では血筋によって魔女としての能力値が大きく左右される。名家であれば、生まれ落ちたその瞬間から魔女として生きる事を決定づけられたようなものである。またリザはミハイルからは意地を張って名義を借りなかった。「それは何か……嫌よ、嫌」という理由付けをして。
「……でも」
「何?」
ミハイルが何やら
「でも、可哀想じゃないですか? 家名を奪うことって」
「……ハァ?」
それを聞き、
「だって……その人にとってはとても大事なものでしょう」
「何寝言いってんのよアンタ。魔女ってのはね、奪うか、奪われるかの世界でしょ。それが当たり前、普通のこと。よく知ってるはずよね」
「し、しかし……」
二人が
「『
「ミラ! かたじけない!」
リザは勢いよく振り返る。が、もう遅かった。
「オイ待て! 逃げんじゃねぇ! クッソ、アンタのせいでまんまと逃げられたじゃない! キィー!」
激しく
「えぇっ、わ、私のせいでございますか!?」
「他に誰がいるんだよ! お前ホントいい加減にしろよ! 甘ったるい事ばっか言いやがって! 何年魔女やってんのよ!」
ズンズンと歩を進めて詰め寄った。今にも首に手をかけそうだ。
……と、ここで腹のなる音がした。
「チッ」
「あ、ああー! 確か近くの町でお祭りがやってますわ! 行ってみましょう!」
「は? 何言ってんの? 行かねぇよ」
「魔力は、栄養から生成されますわよね? 合理的では? そして何より、お金は持ってますの?」
クソッと言葉を吐き棄て、町へ向かうリザ。
それを見て、ニヤニヤしながらついていくミハイルなのであった。
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