没落魔女(ウィッチ)の復讐劇
楪 紬木
第一幕 開幕
嵐の夜、
鋭く巨大な
その城の屋上直前、いくつかの石柱に支えられる円型フロアにて。
己の全てを懸けた血で血を洗う
「よくも、よくもやってくれたわねッ……! 卑怯なことしやがってこのクソアマ……!」
少女の可愛げのある
とんがり帽子が特長的だが、
しかしながら顔立ちは可愛らしい。
彼女の現在の
「あら、弱みを見せたらそこを突くのが
屋上へと繋ぐ
黒々とした瞳は切れ長。ウェーブのかかった白銀の長髪。
ボルドーリップが塗られている
銀色の装飾が散りばめられた真紅の派手なドレスは露出が多く、その
ややもすれば、薔薇と
彼女は真名をレイチェル・エル・エスパーダ七世といい、
「つまらなく、あっけないけれどこれで幕切れね。さようならリザ・ノートン……いいえ、リザ」
レイチェルが指を鳴らすと。
耳鳴りのような音を立てて優に百を超えるルビー色の結晶が
「――ッ、ハァッ!」
リザは、這った状態からその身を真横へ
それと同時に、手元へ
「もう二度と会うこともないでしょう……あれだけの才能がありながら残念ね、ウフッ、ウフフッ」
これでもかと
◇◇◇
嵐の中、青髪の魔女は杖の浮遊する出力を必死に上げながら行く当てもなく、敗北までの全てを思い出し歯嚙みして移動する。
「奪られた……全部……。居場所も!」
彼女が奪われたものはまず、「
リザには魔女としてずば抜けた才能があったため衣食住、そして魔法の研究に困らない「
「唯一できた、友達も!」
次に「友」。
白帝界での生活の中で、どこからか城に迷い込んだ黒猫と友達になる。これまで孤独にただ
「――ッ、アタシの、アタシの大切な名前もッッッ!!!」
そして「
この世界で魔女同士のみ行われる血争劇という勝負に負けること、それは「相手に家名を奪われる」ということ。勝敗は、この機構を作った原初の魔女という概念がいくつかのルールを
リザが今まで
そして、リザにとって大きな意味を持つのは家名そのものだった。彼女は生まれつき母親しかおらず、幼少期から魔女としての生き方を説かれながら大事に育てられてきた。また、白帝界への招待は母の謎の失踪と引き換えに送られてきたものだ。彼女は直感で母が自身の命と引き換えにくれたものだと理解し、覚悟を決めた。
「フーッ……決めた。絶対に許さない。あぁっ、ふざけんじゃないわよ! どんな手を使ってでもアイツに復讐してやるわ! 絶対に、絶ッッ対に!」
吐き気を
……しかし、その魔女はいまだ幼い少女。
その感情は少しずつ、少しずつ崩れ去っていき。
「……くっ、うっ、うぅううう……うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
彼女はこの日の怒り、憎しみ、悲しみ、そして悔しさを決して忘れないだろう。
ここから、何もかもを奪われた彼女の復讐劇が幕を開ける――!
◇◇◇
眩しさに目を細めたくなるような
長髪を左右に
『ねぇママ、どこにいくの? 待ってよ! ねぇ、ねぇってば!』
喉が張り裂けんばかりの呼びかけも
『行かないでッ――!』
叫ぶと同時に、ベッドから上体が跳ね起きて目が覚める。
「ハァ……ハァ……。夢、ね……」
自身の今の気分とは裏腹に陽光が射す窓を強く
「おはようございます、ご主人様。どこにも行きませんよ。昨晩、あれだけの傷を負いましたからね。悪夢を見るのも無理はないです」
窓の方向から振り返ると。
リザは昨晩、手元にあった数少ない銅貨で自然豊かな山奥にある
「……は?」
「なんでしょう、ご主人様。朝食の用意ならできていますよ。どうぞごゆっくり。」
目の前の皿には、ふわふわなトーストやアツアツの目玉焼き。それが
「いや……誰よ、アンタ。怖いわ」
当然の感想である。
朝食をとりながら簡単な事情を説明する為の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます