第4話 ステータス




朝を迎えて、隣で眠っているルナを起こして、ステータスを確認している。

 ルナの基本的な戦力を知ることで、これから、どういうふうに育てていくかが決まる。


「すてーたすぅ~」

 

 口に出すことでステータスが目の前に表示される。




【ステータス】


〈名前〉 ルナ(奴隷)

〈年齢〉 14

〈種族〉 人

〈スキル〉 なし

〈装備〉 なし


『綺麗』 F

『可愛さ』 D

『格好良い』 F

『セクシー』 D


 シンラさんから習ったな……こっちの世界では女性のステータスは綺麗と可愛いが強さになるって。


 『綺麗』が物理攻撃力、物理防御力。


 『可愛さ』が特殊攻撃力、特殊防御力。


 『格好良い』がスピード、持久力。


 『セクシー』が奇跡、賢さ。


 この四つとスキル、装備で勝負は決まるらしい。

 ルナを伸ばして行くなら、『可愛さ』と『セクシー』を重点的に育てた方がいいのかな?


 それともオールマイティ(全体的)に伸ばすべきか?


 この段階では判断できない。

 これからトレーニングや実戦を積ませて、どういうふうに育てるかを決めよう。


 先ずはリハビリからた。

 とにかく身体を治して動けるようになるのが先で、戦闘の事は後回しでいい。


「ありがとう。 もういいよ」

 

「はい。 ご主人様」


 今更だが、ご主人様と呼ばれるのは他の人に聞かれた時に恥ずかしい。

 別の呼び方をしてもらおう。


「ご主人様って呼ばれるのは恥ずかしいから、他の呼び方をしてくれないか」


「ふぇ? う〜ん……ではお兄様とお呼びします!」


 わ、わ、悪くない!?

 

 俺が20歳でルナが14歳なら兄弟でも怪しまれない。

 

 6歳差ならいける! ギリギリセーフ!


「それでいこう!」


「はい、お兄様! これから、よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしく!」


 



「ステータス」


 リハビリをする前に自分のステータスを開く……


【ステータス】


〈名前〉 ジュン

〈年齢〉 20歳

〈種族〉 稀人

〈スキル〉 マッサージ、ヒーリング、デコレーション


 異世界に転移して来た時から、俺にはスキルが三つもあった。

 一人の人が得られるスキルは一つまでだが、別の世界から来たからか、はたまた神様による恩恵なのか……何故か分からないが3つあった。

 

 だが、どれも戦闘用ではなく、できて後方支援。

 俺自らが戦うのは不可能だ。


 それに、こちらの世界では戦うのは女性の仕事であり、男性は守られる側なのだ。

 男女逆転世界って奴だろうか……最初ここに来た頃は、驚かされた。


 シンラさんは俺のステータスを見て、トレーナーに向いてると言ってくれた。

 だから奴隷を買って、サポートしてあげるのが俺の仕事だ。

 

「マッサージするからベッドにうつ伏せになってくれ」


「は、はい!」


 ここから始まる……トレーナーとしての第一歩が……


 女性の身体に触れるのは躊躇われるが、ルナの為なら仕方ない!


「いくよルナ」


「あっ、そんなところ……あっん」


 いや、普通に肩をマッサージしてるだけなんだから、変な声出さないでくれ。


 肩、背中、腰、手、足と順番に施術していく。


「うぅぅ……あんっ、お兄様だめぇ」


「我慢するんだ! これでルナの手足が動くようになるかもしれない」


 そう、マッサージのスキルには健康促進、美容効果UP、疲労回復といろんな効能がある。

 

 この力が有れば、トレーナーとしてサポートしていける。

 

「声がでちゃぅぅうよ……あんっっ!?」


 分かる、俺には分かる!

 どこを、どう押せばいいか……力の入れ具合、全て分かる。


「これで最後、ここさえ押せば施術は完了だ」


「だめぇ~お兄様ぁ! そこ押しちゃだめぇぇぇ……あああああああああああああああ♡」


 最後の一押し!

 フィニッシュが決まり、ルナの甲高い声が響き渡る。




「う、動きます!? 少しだけですけど動きますぅ」


 たくさん栄養をとった事とマッサージの効力で手足両方動くようになってきたみたいだ。

 

「よかったなルナ。 でも、まだ完全に動くわけじゃないから安静にするんだぞ」


「はい! ありがとうございますぅぅ、うえ〜ん!」


 治る兆しが見えて、今までの苦労した思い出が、涙になって溢れてきているのだろう。

 

 とても感動的なのだが、この後、ルナを連れ宿の食堂に行ったら、女性陣から凄い眼で見られた。


 大将からは……


「兄ちゃんよ、朝から激しすぎじゃないか……あんな小さい子に」


 物凄く勘違いされた。


 神に誓って卑猥な事は一切していない。

 だが、誰も信じてくれる人はいなかった。

 マッサージしてだけなのだが、ルナの声が大きすぎたか。


 極めつけはルナの一言……


「お兄様のいじわる〜♡」


 食堂にいる皆の目が、さらに凄みを増す。

 献身的な俺の介護は意味をなさず。

 そういう風に捉えられてしまった。


 

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