第3話

 

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 「ん?再宮弟と京谷じゃないか。何話してるんだ」

 

 勝田がラウンジを歩いていると、再宮と京谷が何やら話しているところを目撃する。

 そこまで珍しい絡みというわけでもないが、目当ての獲物の京谷を見つけられたのは運がいい。京谷たちに話しかけようかと思ったが衝撃的な発言を聞いてしまい固まって身動きが取れなくなり、自販機の陰に隠れている勝田の姿は、完全に不審者と言って差し支えないものだった。

 

 「じゃあ早速、個人戦するか!パーティに入隊祝いに」

 

 (ん?…今なんて言うた?個人戦。あの二人が激突するのか!!)

 

 どうやら既に会話は終盤だったようで、勝田が聞き耳を立て始めたタイミングで会話は終わり、2人は個人のランキング戦をする室内へと入ってていく。


(やばいこれはチャンスだ女子に京谷が遂に再宮を怒らせたと言えば、人気は落ちる。俺の時代の幕開けだ!!)

 

 自販機の陰で考え続ける生駒。相変わらず不審者である。

 そのあまりの不審者っぷりに周りは引いていた。いじめでも起こすのではないかと囁かれた

 

 (…そういや、再宮兄が船橋に移籍するっちゅう話やったな…。パーティに入る祝い…ってまさか今の会話…再宮兄が代わりに俺様最強に入るっちゅう話か!?あかん…もしそうだとしたら大ニュースだ…!)

 

 考えがまとまり、一つの結論に辿り着いた勝田。自分の推理に確信を持った勝田は、心の中で自画自賛する。

 

 (いや、これは現世に蘇った日本のコナンドイルと呼ばれてしまうな、これは)

 

 日本のコナンドイルは探偵ではなく推理小説家である。

 

 (こうしちゃおれん!コナンドイルとして、この推理を誰かに聞かせなあかん!)

 

  コナンドイルなら是非とも彼にこの小説を書いてほしい。

 

 「あの…かつた先輩?」

 

 不審者らしき勝田に話しかける少女がいた。ポニーテールで可愛らしい、衣装を着ていてすごくイイ。

 

 「美和ちゃんじゃん。おつかれさん」

 

 完全に不審者であった勝田に声を掛けるという天使ぷりの持ち主は、c級位の再宮の弟が率いる男優の天使様だ。しかも見た目と同じく、圧倒的な包容力と母性を持ち合わせており、年上年下関係なく、女子は皆美和ちゃんにメロメロである。

 自販機の陰に佇む不審者と天使様のこの二人。この二人が仲良くなったのも京谷のおかげとも言える。ここが冒険者ギルドではなかった場合第三者が見れば通報されてもおかしくないシチュエーションだ。だが、幸い2人は冒険者ギルド内でも顔が広いため通報されることはなかった。

 

 「そんなところで何してたんですか?」

 

 質問と共に、美和の純粋な視線が勝田に突き刺さる。

 

 (確かに男がポツンと立っていて怪しい。少しでも誤魔化さなくてはならないな。)

 

 「ち…ちょっと話しかけようとしたら話しかける隙がなかったんや。だからちょっと自動販売機と睨めっこして休んでたんや。まぁワイの負けたわ」

 

 

 「え!?大丈夫ですか!?あ、だから戦闘服を着て自動販売機と睨み合いをしていたんですね。バカみたいですね」

 

 美和は笑いながら頭大丈夫かと心配した表情で声を上げる。どうやら、

 まさか信じてもらえるとは思っていなかった勝田は嬉しかった。真実を言ったら嫌われるだろうと想像していたが運が良くイイ方向へといけた。信じてくれた天使に感謝を言いつつ


(お礼になんか教えてやろう。せっかく出し現世に蘇った、コナンドイルが名推理を話そうじゃないか)


 と考えた勝田は

 

 「んぐう…」


 やはり個人情報を話すのは気が引ける。だがこれは女子には話さなくてはならないことだと思い勇気出して話すことにした。

 

 「え?大丈夫ですか!?」

 

 「もう大丈夫やから心配せんでええよ」

 

 「そうですか…無理はしないでくださいね…!」

 

 「もちろんや」

 

 その笑顔のあまりの眩しさに思わずたじろぐ。なんやこの子…ええコすぎるやろ…!と心の中で叫びつつ、美和との会話を続けていく。

 

 「ほんで美和ちゃんは?何してたん?」

   

「今から女子会なんですよ〜」

「そうか。俺も女だったら混ざりたいけどな。女じゃないからなぁ」

「勝田さんが女だったらみんな困っちゃいますよ。多分勝田さんは男で良かったと思います


 

 勝田は美和と雑談を続けながら、言うか?言わないかをずっと悩んでいる。さっきの話コナンドイルとしてめちゃくちゃ言いたい。しかし、勝田も一応常識のある人間である。それに加えて妬み嫉妬もあるとはいえ大事な後輩には変わらないあ。確定していない情報、自分が推理した情報を勝手に人に言いふらしていいものかと葛藤する。

これがもし、自分の隊の人間に言うのであれば「へ〜そうなんすね。カッちゃんさん名探偵やないですか」「絶対嘘やろ」みたいな軽い感じで終わるから良いのだが、美和に言うとなると話は別だ。

 

(やべぇめっちゃ言いたい。かっちゃんさんの名推理を披露したい…!)

 

しかし、俺は自分の欲望に抗えない。

美和なら口止めしておけば誰にも口外することはないと信じようと思い自分に言い訳した。

 

「あんな、美和ちゃん。聞いて欲しいことがあんだけど」

 

「?なんですか?」

 

唐突な話題転換に美和が首を傾げる。勝田は慎重に言葉をつなぐ。

 

「これはただの俺の推理だけど、京谷がが俺様最強に入るかもしれん」

 

「京谷君て。個人ランキング2位の京谷ちゃん!?」

 

 予想より反応が大きいことになった情報を手にした。美和は勝田の推理力を褒め称える。だがしかし、京谷がパーティにはいるのは2、3年ぶりのことだ。今まで全ての誘いを断っていたことを考えるとこの反応も当然だろうと納得した。更に京谷はパーティに何らかのトラウマがあり、それを改善するお手伝いをしようと思い沢山の少女たちは夢を広げて話しかけるのだった。

 

「どうやワイの推理は。そして多分、再宮兄の代わりで入るんちゃうかな」

「そ、そうなんですね…」

 

「てか、美和ちゃん。お時間大丈夫?天使様だからみんな遅れると心配して悪い男に誘惑されたとか言われるかもやしこれから女子会なんやろ?ほな先に行ってきな」

 

「え、あ、そうでした!すみません!失礼します!」

 

 女子会があることを思い出したのか、美和は勝田に礼をし、パタパタと走り去っていく。その様子を見届けた勝田は、再宮弟と京谷の戦いを生で見ようと現地に赴いた。

 

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