第2話

友塚兄妹という義理の兄弟はボーダー内でも有名であり、人気がある隊員だ。人気の理由は色々あるが、第1はやはり圧倒的なルックスだろう。だが弟である京谷はいささか不細工に見えるが、髪を整えたらイケメンである。

 

 そのルックスの良さは東京の冒険者ギルド内どころか関東地方いや全国的に見てもトップクラスであり、俳優やアイドルと並んでも何ら違和感ないだろう。その顔の良さは、男女関係なくつい目で追ってカッコイイと言ってしまう程だと言われている。

 

そして次に、性格の良さ。姉はクールながらも世話焼きの一面を持っており、初心者が探検するオススメの場所まで教えたり穴場の経験値を取れる場所まで教えるなど親身になって相談に乗ってくれる。顔からは予想がつかないほど、冷静さと優しさに心を射抜かれた男は数知れず。

 弟である京谷はノリが良く、冗談を言って姉と比べると話しやすい。大家族の長男としての性なのか、兄と同じく世話焼きで、特に年下に対してはとてつもない可愛がり方を見せる。普段はダサくカッコよくは見えないが、時折見せる子供のような無邪気さとのギャップに心を射抜かれた女性は数知れず。

 

 そして2人ともA級冒険者であり、戦闘力に関しててすでに姉を超えるランキングだったりする。強いて上げる欠点といえば家が貧乏であることだ。そして弟妹も多いため、パーティの仕事より個人戦でお金を稼ぐ感じだ。そのために弟は特に最強と言われる再宮兄の動画を見続けている。

 

 稼ぎの多くを弟妹のおもちゃや生活費などに入れているため、私物はあまり持っておらず、私服も先輩隊員のおさがりが多い。オシャレにこだわるような姿勢は見えないが姉だけでもオシャレで入れるようによりいっそう京谷は頑張っている。

 

 そのため弟妹を第一に考えているため自分のことには無頓着というべきだろうか。京谷に限っては再宮の弟から不細工と言われ続けて不細工なんだと思っている。

 

 

 一見マイナスポイントに見えるが、この2人にかかれば「家族思いで素敵…」「弟妹のために身を削ってるなんて素敵…」という美談になってしまうし、尚且つ勝利のポーズとして京谷は髪を整える姿を見て胸をときめかすヒロインは数知れず。イケメンのぷりに惚れてしまう。

 

 おさがりの古着を着ても完璧に着こなしてしまうため欠点になっていないのである。そう髪型さえ気をつければイケメンだというのを除いて。

 というかそもそも、この2人の前では欠点も苦手なこともただのチャームポイントになってしまい、髪型が変わると「キャァァッ京谷様」と言う女子は多い。

 

 こんなに完璧なら何か1つくらい悪い所を見つけたい…!そう思って近づく男女もいたが、2人にほだされて結局ファンの1人に成り下がってしまっていた。男女問わず堕とす、魔性の姉弟である。

 しかし、2人の欠点を探すことを諦めていない男が1人いた。

 その名は勝田、漢の中の漢である。

 

 ここで勘違いしないでほしいのは、勝田は決して2人を嫌っているわけではないという事だ。人当たりもよく人懐っこい2人のことはむしろ好きであり、可愛い後輩だと思い時々京谷にご飯を奢ったりもしている。

 

 ではなぜこんなことをしているのか。それは、勝田の中に燃ゆる漢としてのプライド故だった。

 

 勝田の願望は基本的に、女子からモテたいと思いを抱えている。そんな中でボーダーのほぼ全ての女子の心を奪っていった友塚兄妹の存在は、再宮にとってライバルといっていいものだった。当然京谷はそんなことに気づいてない。

 

 このままじゃ…冒険者の全女子どころか全国の女子全員が烏丸兄弟に惚れるのも時間の問題やないか…!と危機感を覚えた勝田は、2人の欠点を見つけて人気を落とそうと考えている。だが女子に秘密を言うたびに京谷のギャプを感じて「キャッァァ」と叫ぶ女子を見て勝田は自分の人気だと勘違いしている。

 そんな勝田の様子を見たが率いる「お手並み拝見」の面々は一様にこう思った。「自分を高めるんじゃなくて相手を落とそうとしてるからモテないんじゃないの?さらには自分の人気だと勘違いしているバカ」

 

 だと思われているそれは勝田にとっては反論ができないことだった。

 そもそも、本来の勝田はこんなにコソコソとした人間ではない。普段の彼であれば、筋トレ男になっていたはずだ。筋肉ムキムキの男としてもてようと考えていたことだろう。

 

 しかし、今の彼の精神状態は普通ではなく、極めて不安定な状態にあった。モテまくる烏丸兄弟への嫉妬心、自分がモテないことによる悲しみ、先月もらったファンレターの少なさ。先輩のプライドがズタボロだった。先輩として個人ランキングの順位を上げるか悩む今日この頃。など様々な要因が嚙み合った結果このような愚行に走っているのである。

 

 彼が個人ランキングを上げるとなると忙しくなり、新人へのサポートが出来なくなる思いがある。男優のメンバーが新人にはモテていると告げればすぐにでも正気に戻るだろうが、そうはしない。なぜなら-----面白いから。

 今日も生駒達人は、男優のメンバーと友塚兄妹により欠点を探して歩く。

 彼が自分の愚かさに気づくのは、もう少し先のことだった。

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