第18話 桜子

門司港の夜が静かに深まる中、香織はオフィスで新たな証拠を探すために懸命に働いていた。大嶋理事との対決は一段落したが、彼の本当の目的を暴くための決定的な証拠がまだ見つかっていない。涼介と健一もまた、それぞれの方法で情報を集めていた。


香織の心の声: 「大嶋理事の行動には必ず裏がある。もっと深く調べなければならない。」


涼介がふと思い出したかのように話し出す。


涼介: 「そういえば、大嶋理事がよく利用しているスナックがあるらしい。そこのママが何か知っているかもしれない。」


香織の心の声: 「スナックのママ…。確かに、彼の素顔を知っている人間がいるかもしれない。」


香織は健一に調査を依頼し、スナックへ向かう準備を始めた。健一は慎重にスナックの場所を確認し、香織に情報を伝えた。


健一: 「香織さん、スナックの名前は『ルビー』です。ママの名前は桜子さん。彼女なら大嶋理事の素性を知っているかもしれません。」


香織の心の声: 「ありがとう、健一さん。この情報が重要な手がかりになる。」


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スナック『ルビー』に到着した香織は、慎重に扉を開けた。薄暗い店内には、静かな音楽が流れており、カウンターには数人の常連客が座っていた。桜子はカウンターの向こう側で微笑みながら香織を迎えた。


桜子: 「いらっしゃいませ。初めてのお客様かしら?」


香織: 「はい、少しお話を伺いたいのですが。」


桜子の目が鋭く光った。


桜子: 「何かあったのかしら?」


香織は大嶋理事の名前を出し、彼の行動について尋ねた。桜子は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻した。


桜子の心の声: 「またあの人のことで聞かれる日が来るとは思わなかった。でも、あの男には色々と関わりたくない…。それでも、真実を知るために話すべきなのかもしれない。」


桜子: 「彼のことを知りたいのね。でも、何を知りたいのかしら?」


香織の心の声: 「この瞬間が大事だ。慎重に、しかし決然と。」


香織: 「大嶋理事の不正行為について知っていますか?彼が信用金庫で何をしようとしているのか。」


桜子はしばらく黙っていたが、やがて重い口を開いた。


桜子: 「彼は…実は、信用金庫の内情を知っている人物を操っているの。彼が秘密裏に動かしている資金の流れを追うと、真実が見えてくるかもしれない。」


桜子の心の声: 「あの人がどれだけ悪いことをしているか知っている。でも、ここで話すことが私にどんな影響を与えるのか。リスクは大きいけれど、もう黙っているわけにはいかない。」


桜子はさらに詳しい情報を提供してくれた。大嶋理事が頻繁に出入りしている銀行口座の番号と、取引先の名前を聞いた香織は、その情報を持ち帰り、涼介と健一に報告した。


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オフィスに戻ると、香織たちは桜子から得た情報を元に、具体的な調査を進めた。健一がパソコンで調べると、大嶋理事の不正取引の証拠が次々と浮かび上がってきた。


健一: 「香織さん、これが彼の不正行為の証拠です。これで彼を追い詰めることができます。」


香織の心の声: 「ついに掴んだ。この証拠があれば、彼の嘘を暴くことができる。」


涼介もまた、感慨深げに香織を見つめた。


涼介: 「香織、これで大嶋理事との戦いに勝つことができる。あなたの信念が実を結んだんだ。」


香織の心の声: 「涼介、ありがとう。あなたと一緒に戦えたことが、私にとっての救いだった。」


香織たちは新たな証拠を手に、次なるステップに進む決意を固めた。信用金庫の未来を守るため、彼らの戦いはまだ続く。

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