一音六 女心 (4)瓶底眼鏡の巫女さん
【ここまでの粗筋】
主人公「駿河轟」は、第一高等学校の一年生。
彼女である「ベーデ」は名門女子高に通う。
互いに想いをぶつけ合いながら育つ二人。
駿河の成長を支える高校の先輩ゾンネさんに、思い付きとは言え「意見具申」ができるまでになった駿河だが。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「はれ?
「ド近よ、ほら!」
見せて呉れた眼鏡は、太目のセル・フレームだというのに、レンズが可成りはみ出ている。否、はみ出ているどころではなく、可成り分厚いレンズをセルフレームがかろうじて支えている、というほどだった。
「瓶底にならないように、少しブラウンを入れて、端も削ってるんだけど、見よ! 此の厚さ。」
「確かに、凄いですね。僕でもクラクラしそうです」
「コンタクトレンズのケアに使っている時間や、目の負担を考えると、今は無駄かなと思って。」
「良いんですか? 外見は?」
「良いのよ、これで離れていく人なら、それだけの人だから。でもレンズが曇って見え難いのはマイナスね。」
いつもの蕎麦屋の二階で、眼鏡を真っ白に曇らせながら、別人のように蕎麦をたぐっている。
* * *
翌週になると、今度は今まで綺麗にブロウして整髪剤でバシッとキメていた髪がヘアピン止めに変わった。それも黒い基本的なピンを何本も使って。
「何処かの厳しい女子校で見たことありますね、そういう髪型。」
「もう少し伸びて呉れるとまとめやすいんだけどね。」
其の言葉通り、一月も経って髪が伸びてくるや否や、お下げにして了った。
「もう、こうなると、はて、何処の何方でしたか? の世界ですね。」
「私は私だもの、楽で良いわ。時間もかからないし。」
「でも、
「有り難う、そう言って呉れるのは君だけだわ。」
「おお、三年じゃ専らの噂だぞ。一年の駿河が
「誰も壊してなんかいませんよ。肩の力を抜いたら楽になるかも知れませんよ。と言っただけです。」
「何か? お前、
「滅相もない。僕は只の後輩です。何の変わりもありません。」
* * *
十二月になり、学校の図書館で勉強している様子を見ると、最早往時の
「僕ぅ!」
「はい。」
「君、クリスマスは?」
「彼女と一緒ですが」
「あ、そうね、はいはい。…今日はトンカツでも食べに行こうか?」
そう言うと、彼女は、再び机に向かった。
* * *
翌日、僕は
「
「はい。」
「
「同性でも気になりますか?」
「ううん、まあ、質素というか、異様に隙がない状態から解き放たれたのは良いとして、落差が激しすぎるから中味は、どうなったのかな、って鳥渡心配。」
「何か変なこと、成績が落ちた、とか、ありましたか?」
「成績は落ちるどころか鰻登りよ。話していて以前よりトゲが無くなったかな、という感じくらい。」
「何か悪いことでも?」
「それは無いけど…駿河君、大抵校内では彼女と一緒に居るでしょ? 他に変わったこと知らないかな、と思って。」
「うーん、あまり遠くまで美味しいものを食べに連れて行って下さることがなくなりました。」
「それだけ?」
「強いていえばそれくらいで。」
「そう、なら良いの。ごめんなさい。」
とすれば、それを常時気に掛けていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます