番外編 標石ー斎藤・忍 サイド
Ex01.それぞれの思惑
こちらは、最終作戦開始前から合流までの斎藤と忍視点のお話です。
本編として書かれましたが、最後の流れを邪魔しないよう番外編としてここに記しておきます。
物語の舞台裏をもう少しだけお楽しみください。
* * * * *
スクランブル交差点へのバイクの追い込み作戦が始まるより少し前、病院で忍は斎藤を見舞っていた。
「やっぱり気になりますか?」
「そりゃみんなが危険な目に合ってるのに俺だけ病院っていうのは……気にならない方がおかしいだろ?」
差し入れをもらったところで、気もそぞろな様子で窓の外をつい見てしまう斎藤。言われて人の良さそうな顔で苦笑を返す。
ため息をついてからペットボトルのキャップを捻り、斎藤はようやく忍の方を見た。
「私もです。心配ですね」
「司のことが?」
「……。もちろん司くんのこともですけど……他にも知っている人がいますし、全体的に、です」
今度は忍の方がため息をついて返す。
その様子に斎藤は今度は同士の念を込めた苦笑。同じ意味のため息の付き合いになりそうで怖い。
「見学というのはなしですか」
「……駄目じゃないかな」
「どうして?」
「戸越さん、ここから先部外者だろ? 危ないし」
「斎藤さんは部外者じゃないですし、斎藤さんがいたら危なくなさそうですが」
「!」
言わんとしていることがわかった。
分かった途端に、関係者として一概に忍の意見を否定しがたくなる。
気になるのは自分も一緒だ。
「……危なくなるようなところに行くのが、そもそも駄目なんだよ」
しかし忍は一般人なのでそこはしっかりと理由付けをする。
「危ないところには行きません。万が一危ないことがあったら、という話」
だから見学、という落としどころには辿り着いてしまった。
「……俺が怒られるかな」
「誰に?」
「司に」
分かるからこそまたもや苦笑を返して言うと聞き返されたので率直に応える。
この場合は、隊長職という意味合いでだ。彼らに上下関係はないが、かといって責任問題が誰にもないというわけでもない。
司は責任云々で怒るわけではないだろうが……
「その時怒られるのは多分、私です。斎藤さんは私を連れて行けば怒られないと思います」
これは駄目なやつだ。否定できるところがどこにもない。
斎藤が一人で行けば、なぜここにいるのか程度で済むだろうが斎藤は一人では行かない。気にかかりながらも留まることを選ぶ。
今がまさにそうだ。
忍は一人では「行けない」。一人で行くのは絶対にダメだ。それは本人もわきまえている。だからこそ
「怒られたとしても半分ずつということでどうですか」
斎藤の本心を行動に突き動かすには、それは魅力的すぎる提案だった。
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