第2話 新たな友人

午後の陽射しが暖かく照らす中、翔太は就労継続支援B型事業所に到着した。事業所の入口には、「ひまわり作業所」の看板が掲げられている。ここで働くことは、彼にとって大切な日常の一部だった。


「こんにちは、翔太くん。今日はどんな気分かな?」と、支援員の田中さんが笑顔で迎えた。


「こんにちは、田中さん。今日は調子がいいです。新しいアクリルスタンドのデザインに挑戦してみたいと思っています」と翔太は答えた。


「それは素晴らしいね。きっと素敵なデザインになるよ。さあ、早速始めようか」と田中さんは励ました。


翔太は作業室に入ると、自分のデスクに向かった。デスクの上には、昨日までに描きためたデザイン案が並んでいる。彼はその中から一つを選び、今日はそれを元にアクリルスタンドの制作を進めることにした。


作業に集中していると、隣のデスクから静かな声が聞こえてきた。「それ、すごく素敵なデザインだね。」


翔太が顔を上げると、そこには彩子が座っていた。彼女は内向的で大人しいが、翔太とは絵を通じて共感し合える友人だった。彩子もまた、自分のデスクで手芸品を作っている。


「ありがとう、彩子さん。今日は新しいデザインに挑戦しているんだ。彩子さんの手芸もとても素敵だよ」と翔太は照れくさそうに答えた。


「ありがとう。最近、いろいろな技法を試してみてるの。お互いに頑張ろうね」と彩子は微笑んだ。


作業が進むにつれ、翔太は自分のデザインに集中しながらも、彩子との会話が楽しく感じられた。彼女との交流は、仕事の合間にちょっとしたリフレッシュになっていた。


「そうだ、翔太くん。今度の展示会に出展する作品の準備は進んでる?」と彩子が尋ねた。


「うん、少しずつだけど進んでるよ。展示会で自分の作品を発表するのは緊張するけど、楽しみでもある」と翔太は答えた。


「私も同じ気持ち。お互いに頑張って、いい作品を展示できるようにしようね」と彩子は励ました。


その日の作業が終わる頃、翔太は完成したアクリルスタンドのデザインを手に取り、満足感を感じていた。新しい友人と共に過ごす時間は、彼にとって新たなエネルギー源となっていた。


事業所を出た翔太は、再び姫路城の方向へと歩き始めた。夕暮れの柔らかな光が城を照らし、彼の心にも温かさをもたらしてくれた。今日一日が充実していたことに感謝しながら、翔太は明日への期待を胸に、ゆっくりと家路に着いた。


姫路の風がそよぐ中、翔太の心には新たな友人との出会いと、これからの挑戦への期待が広がっていた。

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