第1話 新たな始まり
姫路市の静かな朝、翔太はベッドの上で目を覚ました。窓の外からは鳥のさえずりと、遠くで聞こえる車のエンジン音が混ざり合い、一日の始まりを告げている。カーテンを開けると、青空が広がり、爽やかな風が部屋の中に吹き込んできた。
翔太は軽く伸びをし、日課となっている朝の散歩に出かける準備を始めた。彼の住むアパートから姫路城までは歩いて15分ほど。城の周りを囲む公園は、彼にとってお気に入りの場所だった。緑豊かな木々と美しい花々が広がるその公園は、彼の心を落ち着かせ、創作のインスピレーションを与えてくれる。
朝の澄んだ空気の中、翔太はゆっくりと歩を進めた。足元には小さな花が咲き誇り、風に揺れる姿が可愛らしい。彼はいつものようにスケッチブックを持ち歩き、気に入った風景を見つけると、その場に腰を下ろして絵を描くのが日課だった。
今日もまた、姫路城の美しい姿を前にして、翔太はスケッチブックを広げた。城の白い壁が朝日に照らされて輝いている。彼はその光景を丹念に描き写しながら、心の中で今日の予定を整理していた。
午後からは、就労継続支援B型事業所への出勤が待っている。翔太はこの事業所での仕事にやりがいを感じていた。部品の組み立てや袋詰め、チラシの封入といった作業は、彼にとっては集中力を高める訓練でもあり、自分の手で何かを作り上げる喜びを感じる時間でもあった。
特に最近では、オリジナルのアクリルスタンド制作に挑戦しており、自分の絵をデザインに活かせることが楽しかった。スタッフや同僚たちとの交流も、彼の社会性を育む大切な場となっていた。
スケッチを終えた翔太は、カフェに立ち寄ることにした。お気に入りのカフェ「コーヒーの森」は、公園の近くにある小さなカフェで、地元の人々に親しまれている。店内に入ると、いつもの窓際の席に座り、カプチーノを注文した。スタッフの優しい笑顔が、彼を迎えてくれる。
カプチーノを飲みながら、翔太はスケッチブックを再び開き、描いたばかりの姫路城の絵を見直した。微笑みながら、今日も新しい一日が始まったことを実感した。自分のペースで、少しずつ前進していく。その積み重ねが、翔太の人生を豊かにしていくのだ。
カフェでのひとときを楽しんだ後、翔太は家に戻り、午後の出勤に備えることにした。今日もまた、新たな挑戦と学びが待っている。彼は心を躍らせながら、事業所への道を歩み始めた。姫路の風が、彼の背中を優しく押してくれるかのように。
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