第9話

 そろそろ秋が、近づいてきた。涼しい風が、吹いている。

「気持ちいいなぁ、ぽち。歩きながら寝ないように気を付けや」

 どうやるんだよ、それ。相変わらずの変なこと言うやつだ、青は。

 しかし、今日は、ツッコミをさぼっても大丈夫だろう。

「立ちながら寝るのは、できるかもだけどさ。歩きながらは、難易度高くない?」

 今日の散歩には、青の友人であるみどりも参加していた。

 というのも、今日は青とみどりが、青の家で遊んでいたのだ。で、この夕暮れの時間に帰ることになった。その際に、「暗くなってきて危ない」という話になり、ボディーガードとして俺を連れていくことになった、というわけだ。

「ところでさ、青」

「なんや?」

「ぽちって、その……、ボディーガードとして役立つの?」

 ん?

「どういう意味なん? 犬って、そこそこ強いで?」

「いや、そうじゃなくて、ぽちって小型犬だからさ。戦力的にどうなのかなーって。ぽちには、悪いんだけど……」

 安心しろ、みどり。俺は、強い。確かに体は、小さい。だからといって、この熱い魂まで小さいわけではない。他の大型の動物だって、勇敢に戦ってみせよう。

「甘いな、みどりちゃん。ぽちは、強いで? なんてったって、我が家の番犬やからな」

「……ぽち、番犬だったんだ」

 ……俺、番犬だったのか。初めて知った。

 いや、強いから番犬の役割は、はたせると思うが。

「でも、番犬って、吠えたりして不審者を威圧したりするよね? ぽちって、全然吠えなくない?」

 まぁ、吠えないな。別段、吠える必要がある場面もないしな。飯の時は、テンション上がって吠えるときあるけど。

「みどりちゃん。ぽちは、鷹なんや」

 犬だが。

「能ある鷹は爪を隠す、って言うやろ。つまり、ぽちは、いざとなったら覚醒して、ドーベルマンをも上回る戦闘力を発揮するんやで」

「そうなの、ぽち?」

 知らん。

「でも、犬なのに、鷹っていうのも……、うーん……そうやな。できる犬は声を隠す、でどうや、ぽち」

 どうって言われても。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る