第7話

「トモくん、今日、何の日か覚えてる?」

「もちろん。今日は、付き合って1か月の記念日だろ?」

「嬉しー! 覚えていてくれたんだ!」

「忘れるわけないじゃないか、ユミ! 愛しの君とのことだもの!」

「…………………………………………………………………………………………チッ」

 こっわ。

 分かりやすくいちゃつくカップルとすれ違った青は、目が死んでいた。

 いや、まぁ、何とも言えない気分になるかもしれないが、そんな対応することもないんじゃないか。

「なんやねん。人前でいちゃつくなや。ぽちを解き放つぞ」

 それは、俺が困るんだが。なんだ、噛みつけばいいのか?

「だいたい、ああいうのはすぐに別れるねん。3か月目には倦怠けんたい期や。んで、しょーもないことで喧嘩して、はいさよならや。いい気味や」

 なんか勝手に別れさせている。俺は、よく分からないが、そういうのもなんだろうか。

「いいか、ぽち。お前が他の犬と付き合うことになっても、さっきみたいなアホ2人みたいになったら、あかんで。愛を示すのは、ふとした時でええねん」

 今まで恋人にいたことがない青に、何がわかるんだ。あと、犬同士で付き合うっていうのもなんだ。聞いたことがないぞ。

 しばらく、バカップルにイラついて大股で歩いていた青だったが、だんだんと落ち着いてきたのか、歩く速度がいつも通りになっていった。

「ふぅ、心が穏やかになってきたわ。さっきのバカップルも、許せるかもしれん」

 恨みすぎだろ。何が青をそこまでさせるんだ。

「しかし、恋人か……。考えたこともなかったな。まぁ、私なら本気出せば、恋人の一人や二人、簡単にできるやろうな」

 なら、本気出せよ。そして、恋人は1人じゃないと問題なのは、気づいてるか?

「私の恋人……。資産1億で、子供好きで、イケメンで。あとは、家事も手伝ってくれて、化粧品とかにお金かけすぎても何も言わなくて……」

 ……あー、青に恋人ができるのはまだ先になりそうだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る