踊る宝石
天川裕司
踊る宝石
タイトル:(仮)踊る宝石
▼登場人物
●如月夢子(きさらぎ ゆめこ):女性。25歳。独身。専門ショップ店員。
●鵜園 誠(うその まこと):男性。30歳。父親が社長で御曹司。本編では「誠」と記載。
●岡野百合子(おかの ゆりこ):女性。25歳。夢子の級友。
●片瀬(かたせ)シゲル:男性。25歳。夢子の級友。本編では「シゲル」と記載。
▼場所設定
●専門ショップ:夢子が働いている。都内にある一般的なイメージで。
●街中:デートや待ち合わせ場所など一般的なイメージでお願いします。
●別荘:誠の別荘。横には断崖があり海が広がっている。
NAは如月夢子でよろしくお願い致します。
(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3633字)
イントロ〜
皆さんこんにちは。
ところで皆さんは、
「運命の分かれ道」というのを信じるほうですか?
生活していると、いろんな分かれ道があると思います。
あの時こうしておけばよかった…
こうしてればもっと幸せだったのに…
そんな経験は無いでしょうか?
今回はそんな運命の分かれ道に差し掛かり、
とんでもない悲劇に遭ってしまった
ある女性にまつわる意味怖のお話。
メインシナリオ〜
私の名前は如月夢子。
今年25歳になる独身の女だが、私は今、
自分の人生でとても華やかな舞台に立っている。
誠「夢子、もう君を離さないよ」
夢子「誠さん、嬉しい…」
そう、少し前に出会った
誠さんというとても素敵な人から私は告白され、
それからスピード結婚の形で私達は入籍する事になったのだ。
私の人生で、
まさかこんな華やかな舞台が待ってくれていたなんて…
本当にこれまでの人生がまるで嘘のように思えてくる。
(回想シーン)
私はこれまで、そんな出会いを1度もしてこなかった。
学生時代、私の元に寄ってくる男と言ったら…
キモオタ「夢子ちゃあん、付き合わなぁい?」
男友達「お前って男みたいな性格だよな、なんか異性としての魅力がねーんだよな」
シゲル「き、如月さん!ボ、僕と!付き合ってくれませんか!お願いします!」
キモオタ、私を女として見てくれない男友達、
そして全然冴えない私の理想から駆け離れたようなそんな男。
そんなのばっかに言い寄られていたのもあり、
「私って男運ないのかなぁ」
なんて本気で思い込んだ時期もあり、
心のどこかでこんな華やかな恋愛、
結婚を諦めていたところもあった。
だからこそ余計に嬉しい!
夢子「誠さん!私、精一杯良い奥さんになるからね!」
僅か25にして、私は勝ち組人生への切符を手にしたのだ。
ト書き〈再会から悩み〉
でもそんなある日の事。
夢子「え?シ、シゲル君?」
シゲル「やっと見つけたよ!夢子、ここで働いてたんだね」
私がパートで働いてた専門ショップに、
突然、高校の時の級友・シゲル君が現れたのだ。
そう、このシゲル君こそ、
全然冴えない私の理想から駆け離れたようなそんな人。
でもこの日見たシゲル君はあれから少し成長したのか。
それなりに立派なスーツを着込み、
学生時代から比べればかなり良い男…
ちょっと心騒がされるような
そんな男性になっていた。
そして…
シゲル「百合子から君のこと聞いてさ、ここで働いてるって分かって。かなり迷ったんだけど、できたらもう1度告白したい…ってそう思ってさ…」
夢子「え…?」
驚いた。
百合子も高校の時の級友で、私とシゲル君の共通の友達。
シゲル君は本当に誠実で優しい人だった。
私の為なら自分を犠牲にしてでも何かしてくれる…
そんな人で、
高校の時でも私にネックレスをプレゼントしようと
朝早くから砂浜まで行って綺麗な貝殻を拾い集め、
それを綴って自家製のネックレスを私にくれた。
でもそのネックレス、今はもうどこかへ行って無い。
思えば高校の時、私はちょっと酷い女だったのかも。
シゲル君が何かしてくれてもそれを当たり前のように受け取り、
全然感謝していなかった。
ト書き〈シゲルと会う〉
それから少し、シゲル君と何度か会った。
別にデートって訳じゃなく、懐かしさもあり、
シゲル君の方から会いたいと言ってきてくれたから。
でもやっぱり憂鬱。
気持ちは誠さんの方にやっぱりあって、
今目の前にいるシゲル君は他人の気がしたから。
でもそんな私に…
シゲル「これ、どうかな?夢子の為に作ってみたんだけど…」
そう言って見せてくれたのは、
ドングリの実で綴ったアミュレット。
夢子「わぁ…」
実はどんぐりには少し思い入れがあって、
今は亡き私の父さんが初めて私の為に作ってくれた
小物やブレスレットやペンダント。
それが全部ドングリの実で作られていて、
私は子供ながら、それを貰ってとても喜んでいた。
そんな話を高校の時、ふっと誰かに話した記憶があった。
多分それが百合子とシゲル君だったかも。
「覚えててくれたんだ」
そんな気持ちも浮かびつつ…
夢子「…フフ、やっぱりシゲル君、変わらないね。手作りで私の為に…」
そのアミュレットはとても綺麗に作られていた。
お店で売ってる物より価値のあるものに見えた。
ト書き〈トラブル1〉
でもそれから数日後。
誠「なんだテメエは!夢子は俺の女なんだよ!テメエなんか出る幕ねーんだよ!なんだこの貧相な小物はぁ!wこんなモン捨てちまえ!」
夢子「や、ちょっとやめてよ!」
私の携帯の着信履歴からシゲル君の存在を知った誠さんは、
ある日、シゲル君を呼び出しこっぴどく怒鳴りつけた上…
シゲル「ぐはぁ!」
シゲル君を何度も殴る蹴るしてボコボコにした。
あの日貰ったアミュレットを
私が持っていたのも良くなかったんだ。
それも引きちぎり、バラバラにしてしまった。
夢子「ま、誠さん…」
私はその日から、少し誠さんに疑問を抱いた。
まさかこんな事をする人だったなんて。
これまでの誠さんは誠実で優しかったのに。
シゲル「ゆ、夢子…」
誠「ほら夢子、さっさと行くぞ!」
誠さんは私の手を思いきり引き、
シゲル君をその場に残して立ち去った。
ト書き〈百合子に会う〉
あれからシゲル君とは連絡してない。
でも私は迷う。
誠さんとこの先一緒になって、
本当に幸せになれるかどうか。
父親が都内の一流企業の社長で、
誠さんはその一人息子の御曹司。
確かに大金持ちで、
シゲル君のステータスとはまるで違う。
私はそれから百合子に会った。
夢子「百合子、あんた確か占いに詳しかったよね?私のこの先の未来、占ってくれない!?」
百合子は中学の頃から占いに凝っており、
社会に出てから1度、
占い師として商売していた事がある。
百合子「えぇ?でも私もうやってないわよ今」
確かに百合子は今教会に通い出し、占いはもうやめていた。
でも…
夢子「お願いよ!あと1回だけ!1回だけ占ってよ!私の人生かかってんのよ!」
私は無心した。
その時の私の勢いが余りに凄かったからか。
百合子は「ふう…」と言った感じに渋々占ってくれた。
(占い)
もう捨てる筈だった占い用の水晶玉を持ってきて…
百合子「宝石の海が見えるわ…まるで踊ってるみたいに…その横に木の実が見える…両方とも夢子に持ってきたプレゼントみたいね…どちらを取るかは夢子次第、それでこの先の運命は決まるわ」
とだけ言った。
夢子「踊る宝石…木の実…」
ト書き〈数日後〉
それから数日後。
またシゲル君から電話があって、
最後にもう1度だけ会いたいと言ってきた。
私達は会う事にした。
シゲル「これ、また作り直してみたから。もしよかったら実家の方にでも置いといてよ。それ見て、時々は俺の事を思い出してほしいと思ったから…」
そう言ってシゲル君は又、
ドングリの実で綴ったアミュレットをくれた。
そしてその日の夜。
誠「ホラどうだ夢子?お前の為に買ってきた宝石だぜ?俺と居る時はちょっとでも綺麗にして貰わねーとなw」
そう言って誠さんは私の目の前に、
いろんなお店で買ってきたブランド物の宝石をドンと置いた。
私はこれまで母子家庭で育ってきたのもあり
家庭は貧乏だった。
貧乏の苦しさを知っていた私。
少しでもお金持ちになって、
お母さんに楽させてあげたいと思っていた私。
夢子「(ごめんシゲル君、あたしやっぱりこの人と…!)」
私はその時決意した。
誠さんと一緒になる事。
それまでの思い出と一緒にシゲル君を捨てる事。
ト書き〈トラブル2〉
そして数ヶ月後。
私は誠さんと一緒に彼の別荘へ来ていた。
横には海が広がり、とても綺麗な場所。
でも誠さんの様子はなんだか変だった。
急によそよそしく冷たくなったと言うか。
夜も更けて寝ようとした時。
リビングに1人残っていた彼は誰かと電話していた。
その内容は…
夢子「まさか…」
別の女の人との電話。
その内容から浮気だと思った。
私は無視できず、少し口論になってしまう。
でも彼は「そんな事してない」の一点張りで、
やがてお互いの気を静めようと
別荘近くの海岸まで散歩に行こうとなった。
その夜は月が出ていて、
海面がキラキラしていて綺麗だった。
そして断崖まで来た時…
誠「あばよ」
夢子「え?…」
私は背中を押され、
その断崖から海へ向けてまっしぐら。
その時…
夢子「あ…キレイ…宝石が踊ってるみたい…」
一瞬そう思い、闇が私の周りを取り巻いた。
解説〜
なんとも悲しい結末ですよね。
もうお分かりの通り、占いで出た踊る宝石というのは
月明かりを反射してきらめく海面でした。
波の行き交いで、反射するその月の光が動き
まるで宝石が踊っているように見えたのでしょう。
そして占いで出たもう1つの木の実というのは、
そのあとシゲルが作り直して持ってきた
ドングリの実のアミュレットの事。
このアミュレットの方を…つまりシゲルの方を取っていれば
夢子の運命はまた変わっていたのでしょう。
誠が夢子を殺した理由はやはり浮気。
衝動的に夢子を殺し、
その場をクリアしようなんて思っていたのでしょう。
自業自得とは言え、人の運命の一寸先はやはり闇…
幸福と不幸を見分ける事は、
やはり難しいものになるのでしょう。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=ToRBVYj8NDo&t=76s
踊る宝石 天川裕司 @tenkawayuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます