第14話:消えたガン。

「ナマタ・・・次の病気の経過観察っていつ?」


「え〜と二週間後だったと思うけど・・・」

「今度は CT撮るって言ってたから、その結果を見て放射線治療がはじまる

かも・・・」


「いい結果が出るといいね」


レイラは早く生太の検査の結果が知りたかった。


「レイラ、なんで僕の経過観察がいつ?なんて聞いたの?」


「うん、病気が悪化してなきゃいいなって思って」


「結果が出たら教えて」


「うん、分かった・・・変なレイラ、今まで経過観察のことなんか一度も

聞いたことなかったのに・・・」

「やっぱり僕の命が乗りわずかになってきたら気になる」


「残りがどうとかそんなこと思う前からずっと気にしてるし、心配してるよ」


「あ、そうだよね・・・ごめんね、気に触るようなこと言って」


「そうだよ・・・私、ナマタのことが心配で心配で心がくじけそうだよ」


レイラは、ずっと耐えていた感情が涙と一緒に溢れ出した。


「レイラ、ごめん・・・泣かないで?レイラ」

「僕はそんなに君を苦しめてたんだね・・・ごめんね、ごめん・・・」


そう言って生太はレイラを抱きしめた。


そして生太の経過観察の日がやって来た。

その日、生太は学校を休んで病院へ来ていた。

レイラは教室で生太の帰りを持つつもりでいたけど、じっとしていられず

病院へかけつけた。


生太はCTを撮った結果が出て・・・医者の見解では生太の体から転移していた

ガンの細胞が綺麗に消えてるとのことだった。

そんな不思議なことがあるのかと医者も驚いた。


その知らせを病院の待合室で待っていたレイラは生太から聞いて喜んだ。


(よかった、フーリーチンちゃんの言ったとおりだったんだ)

そこではじめてレイラはフーリーチンの言ったことを確実に信じた。


生太の体はCTの結果では良好だったが、念のため検査入院して肝臓のあたり

の細胞を取って調べるため生太は一泊入院ってことになった。

レイラは時間が許すかぎり生太に付き添っていたかったが、生太の両親が

来ていたので、遠慮した。


そして細胞検査の結果、やはりガン細胞は体から綺麗に消え去っていることが

はっきりした。


生太は、みんなと同じように健康な体を取り戻した。

そして元気に学校に通うようになった。

昼休み、レイラと生太は学校の屋上にいた。


「よくなってよかったね、ナマタ」


「ありがとうレイラ・・・」

「でもさ、不思議だと思わない?・・・体の中からガンが消えたなんて

今でも信じられないんだ、僕」


「いいんじゃない?よくなったんだから・・・」


「僕は体にいいことも健康的なこともなにもしてないんだけどな」

「絶対おかしいよ・・・治ったのはたしかに嬉しいけど・・・」

「なんでガンが消えたのか、分かんないのが納得できないんだ」


「いいじゃん、治ったんだから・・・治った原因なんかなんだっていいでしょ」


「まあ、いいけど・・・これって絶対奇跡だよ」


「ね、私に最初に告った時、余命半年の間だけ彼女になってって私に言ったよね」


「言ったけど・・・」


「どうするの?・・・もう死ぬって心配なくなったけど・・・」

「もうナマタには私は必要ないかな?」


「なに、言ってるの・・・僕はもうレイラなしじゃ無理だよ」

「それこそ死んだほうがましだよ」

「君がいたから、僕は病気にくじけないで今日まで来れたんだよ」


「そう・・・じゃ私と別れないってこと?」


「絶対、絶対・・・ぜ〜ったい別れない」

「レイラが別れるって言っても、別れないから・・・

別れないって言ってくれたら、オカルト部にだって入るし・・・ホラーだって

克服してみせるから・・・」


「あはは、面白いねナマタは」

「分かった・・・ったく、しょうがない甘ったれだわ、私の彼氏は」


つづく。


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