第10話:その子は仙狐。
「うそ〜ナマタんちって、それってお金持ちって言うか富裕層じゃん」
「雲の上に人だね」
「そか・・・貧困層のうちとはかけ離れてるからちょっと引いちゃうな」
「引かないでよ・・・僕のせいじゃないんだからさ」
「それにいくらお金があっても役に立たなきゃ意味ないし・・・」
「僕の病気がもっと早く発見されてたら肝臓の移植だってあったんだろうけど
もう無理だし・・・だからいくらお金があっても命までは救えないからね」
「まあ、そうだけど・・・ないよりはいいでしょ?」
「まあね・・・あ、そうだ今度さ僕、独り住いしようと思ってるんだ・・・」
「なんで?」
「残りの半年、好きに自由に暮らしたいんだ・・・自分のことは自分でやってさ」
「ナマタのご両親よく許したね」
「それは僕が余命半年だからだよ・・・僕の好きにさせてやろうって両親とも
思ったからじゃないの?」
「そうだ次のデート、鴨志田さんを僕の新しいマンションにご招待するから」
「うん・・・まあいいけど・・・それより」
「鴨志田さんじゃなくて、もうレイラって呼んでいいからね」
「わ、分かった・・・じゃ〜レイラ・・・ちゃん」
「ちゃんはいらない」
ってことで初デートはつつがなくトラブルもなく楽しく終わった。
街ブラして店内の空気がめっちゃ悪いアニメイトに入って昼飯にパスタ食って
午後からゲームセンターのクレーンゲームでレイラは狐のぬいぐるみをゲットした。
で、晩飯にカレー食ってレイラは生太と別れた。
そしてその夜のことだった。
風呂に入ろうと、ふと脱衣所の鏡の前を通った時、鏡に誰か映った気がした。
そういうことに少しナーバスになってるレイラ。
ヤダな〜と思いながら再度鏡を見た。
そしたら・・・鏡に?・・・「え?狐?」レイラはそう思った。
クレーンゲームでゲットした狐のぬいぐるみじゃなかった。
鏡には着物を着た白い毛の狐がレイラを見ていた・・・で、しゃべった。
「あなたの体を借りてごめんね」
「私は仙狐」
「名前を
「え?・・・私、やっぱり狐に体を乗っ取られてたんだ・・・」
「そうですよ・・・私は、もともと中国から日本に渡って来た狐の妖怪なの」
「人も来ないような秘境の洞窟で修行してたんだけど、一度でいいから街に
降りて遊んでみたくなってね」
「でね、あなたが毎日、あの神社の前を通って帰ってるのを見てて体を借りようと思って偽のお稲荷様作ってあなたに憑依したの」
「狐の姿のままじゃ人の世界では暮らしていけないでしょ?」
「でも、借りてた体そろそろそ、あなたに返そうと思った、んだけど・・・」
「今、あなたに体を返したら支障があるでしょ?」
「え?なんでですか?」
「あなた、今、
「あなたが今男性にもどちゃったら、生太くんとの関係も終わっちゃうと
思って・・・どうしようか迷ってたとこ・・・」
「さすがに生太くんもあなたが男だったら付き合わないわよね」
「あ、そうか・・・ナマタとのことがあったんだ」
「それをあなたに聞こうと思って姿を現したの」
「どうする?・・・あなた次第だけど・・・私はあなたの体に入ったままでも
いいけど・・・一緒に行動してたらなにかと便利だから・・・」
「ナマタと約束したし・・・半年はナマタの彼女でいてやらなきゃ」
「迷惑じゃなかったらこのまま私の中にいてもらってもいいですか?」
「ナマタとの約束、果たしてやりたいんです」
「私の彼が亡くなるまでは、私の愛情で持ってナマタを支えてあげなきゃ」
「そう、じゃそう言うことなら・・・」
レイラはなにげなしに愛情って言った。
彼女は建前だけじゃなく本気で生太のことを好きになってるのかもね。
つづく。
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