見えない狂暴

天川裕司

見えない狂暴

タイトル:(仮)見えない狂暴


▼登場人物

●川上信二(かわかみ しんじ):男性。20歳。大学生。

●池川朱里(いけかわ あかり):女性。20歳。大学生。信二の彼女。

●小野佳代子(おの かよこ):女性。20歳。信二と中学時から一緒。


▼場所設定

●A大学:信二達が通っている。一般的な私立大学のイメージで。

●信二の自宅:一般的な都内のアパートのイメージでOKです。

●街中:街頭のある夜道など一般的なイメージで。

●佳代子のアパート:都内のアパートのイメージでお願いします。


NAは川上信二でよろしくお願いいたします。

(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3740字)



イントロ〜


皆さんこんにちは。

皆さんは気の優しい彼女と、気の荒い彼女なら

どちらが好きですか?


まぁ普通は気立てが良くて常識もあり空気を読めて、

いつでも優しくしてくれる彼女の方が良いですよね?


今回はあるカップルにまつわる意味怖のお話。


気の荒い彼女には少し距離を置き、

用心した方がやはり良いようです。



メインシナリオ〜


俺の名前は川上信二。

今年20歳になる大学生だ。


俺には今付き合ってる彼女がいる。

名前は池川朱里。

彼女とは大学で知り合い、今年で交際2年目。


朱理は気立てがよくて優しくて、

一緒にいてとても安心できる。


少し気の弱い所はあるが、

そんな所すら愛しく思え、

俺達は何となく将来の約束までしていた。


でも俺には1つ問題があった。

それは…


佳代子「ねえ!いつになったらあの女と別れてくれるのよ!ええ?!もしこのままずっとあの女と別れないって言うんなら、私にも考えがあるわよ!」


佳代子の存在だ。

佳代子とは中学から一緒だった。


こいつはとにかく気が荒く、

何でも自分の思い通りにならなきゃ気が済まない。

そして思い通りにする為には手段を選ばない。


本当に今まで、

こいつが犯罪に身を染めて来なかった事が

不思議なくらいだ。


俺は悉くこれまでこいつを避けてきた。

俺とこいつの関係が始まったのは、やはり中学の頃。


彼女の方から俺に告白してきて、

俺が2秒でフッた瞬間から、

こいつは付きまとい出した。


こいつと付き合うぐらいなら猫と付き合った方がマシだ。


当時からこいつの周りではヤバい噂が立っていたのだ。

何かでこいつが落ち込んだ時、必ずと言って良いほど

決まってこいつの周りでは猫や犬などの小動物が死んでいた。


俺の友人の話では…


「あれ、佳代子がやったんだぜきっと…あんなヤバい性格の持ち主だ。ああ言う事をやったって不思議じゃないだろ…」


こんな噂がまことしやかに立てられており、

それを信じるに充分な証拠も確かにあった。


佳代子は近所にいたのだろう野良猫を

乱暴に抱き抱えたまま自分の家に連れて行く…

そんな様子を撮った動画があったのだ。

その動画を撮ったのはまた別の友人。

彼女の近所に住んでる友人だった。


そんな過去を引きずっての今。

高校まで一緒だった佳代子は、

なんと大学まで同じ大学に入学してきたのだ。


佳代子「ねぇそんなしんどい思いするくらいなら、私と付き合った方が得よ?気持ち良い思いも出来るし、そうしたら私だってあなたに尽くすわよ?アンタにとってもそっちの方がいいんじゃない?」


だから1つの望み「朱理と付き合うのを諦めろ」…

こんな事を平気で言ってくる。


もうこいつはまともじゃない。

サイコパスだ。

もちろん警察に通報する事も考えた。


でも曲がりなりにも学校生活を共にしてきた級友。

なかなかそこまでの踏ん切りが付かない。

実際こんな状況になってしまえば、

次の1歩を踏み出すにも勇気が要るものだ。


ト書き〈トラブル:信二のアパート〉


朱理「大丈夫?最近疲れてるね。はいコーヒー」


信二「ああサンキュー」


俺はこの日、朱理と一緒にいた。

朱理も俺も都内のアパートに住んでおり、

俺の部屋の合鍵を朱理には渡していた。


そしてついにトラブルが起きた。


なんと俺のアパートからの帰り道。

ちょうど街頭の下に差し掛かった頃だった。


朱理「きゃあ!」


朱理が何者かに刃物で切り付けられたのだ。


(病院)


信二「大丈夫か朱理!」


朱理「う、うん大丈夫」


朱理から電話を貰った俺はすぐ朱理の下へ駆けつけた。

幸い命に別状ない。

犯人は腕を切り付けたあと逃げ去ったらしい。


信二「あいつに違いない、絶対、佳代子だ…」


朱理は犯人の顔を見ていないと言う。

でも男ではなく女だった…と朱理は言った。


咄嗟の事で動揺もしていたのだろう。

またショックで記憶が交錯していると言うのもある。

俺は朱理の心情に配慮し、それ以上は聞けなかった。


でも俺達をこんな風に襲うとすれば、佳代子以外に考えられない。


ト書き〈数日後〉


それから数日が過ぎた。

あれから目立った事は起きてない。

またあれから佳代子の姿も見ていない。


事件の事は警察に通報したが、まだ解決には至ってない。


きっと佳代子は逃げたんだ。


「絶対、佳代子(あいつ)が犯人に違いない…」

俺はずっとそう思い続けていた。


その日のバイトを終えてアパートに戻ってきた俺は

心身共に疲れ果てていた。


信二「ああ…眠い」


とにかく眠たくて仕方がない。

アパートの階段をやっとの思いでよじ上り

部屋に辿り着いた俺は電気を一応つけた後、

ベッドに体を投げてバタンキューの勢いで眠った。


途中、電気が明るく感じ、消そうとしたが、

電気のリモコンはクローゼット近くの棚に置いたまま。


「まぁいいや」


やっぱり起きるのも面倒臭くそのまま寝ようとした。

その直後、朱理からメールが入った。

思いっきり重たい瞼をなんとか開け、文面を読んだ。


(メール内容:セリフの形で)


朱理「佳代子さん、自殺したらしいわよ!ニュース見て!」


衝撃な事が書かれてあったのには違いないが、

でも俺はどうしても眠たい。

携帯を手からすり下ろし、そのまま寝てしまった。


そして起きた時。

さっきのメールの事を急に思い出し…


信二「マジかよ!?」


明け方に起きた俺は電気をつけ、すぐテレビをつけた。


するとちょうどニュースをやっていた。


キャスター「ここで速報をお伝えします。昨日未明、東京都内の緑町で、女子大生が何者かに刺されて亡くなっているのが発見されました」


ちょうど朝の6時半にやってきた速報。


信二「佳代子…」


亡くなった女子大生は佳代子。

しかもそれは変死の状況で発見された。

アパートで1人亡くなっていたと言う。


佳代子の死体の横には刃物が置かれてあり、

その刃物からは指紋が検出されなかった。


余りに信じられなくて俺は放心状態。

その状態ながら、俺はもう1度何気なく、

さっき朱理から送られてきたメールを見直した。


昨日の夜10時に送られてきたそのメール。

よく見ると、もう1通朱理からメールが来ていた。

さっき送ってきたものらしい。


(メール内容:セリフの形で)


朱理「私はいつでもあなたと一緒。私はあなたに守られているし、私もあなたの事をいつでも見守ってるわ。これからもずっと一緒にいましょうね」



解説〜


はい、いかがでしたか?

今回は解る人にはすぐピンと来たでしょう。

それでは簡単に解説します。


佳代子は確かに気が荒く、その様子から信二は

佳代子の事をサイコパスだと思っていました。


そして佳代子のサイコパスぶりは、

ついに朱理と信二の間にまでやってきました。


そして朱理はある夜、

信二のアパートからの帰り道に襲われます。

これを受け信二は…

「佳代子が絶対に犯人だ」

と思い込みました。


ですがここまでの流れを見た上で、やはり妙ですよね。


朱理は街頭の下で襲われたと言いました。

そして男ではなく女だと断定しています。


明かりのもとでそこまで判っているのに、

本当にその犯人の顔は判らなかったのでしょうか?


そして佳代子の死を知らせた朱理のメール。

これもおかしいですね。


佳代子が亡くなった事を知らせるニュース報道は、

朱理がメールを送ったその翌日の朝に

速報の形で伝えられています。


速報とある限り、他に情報が漏れる筈ありません。


にも関わらずなぜ朱理が、

「佳代子が死んだ事」を知っていたのでしょう?


そう、つまりそれは朱理が犯人だったからです。


朱理が佳代子のアパートへ忍び込み、

そこで佳代子を殺していたからその事実を知っていました。

自分の腕を切りつけたのも朱理による自作自演。


罪の意識に襲わせ自殺に見せ掛けようと、

佳代子がやったように仕組んだのです。


また佳代子の遺体の横に置かれてあったナイフには、

指紋が付いていませんでした。


普通、佳代子が自殺したのなら、

そのナイフには佳代子の指紋が付いている筈です。


つまり佳代子を殺害した後、

自分が犯人だとバレないように

朱理が自分で指紋を拭き取っていた…

と言う事。


この時点で佳代子が自殺ではなく、

佳代子を殺した犯人がいる事を立証していますね。


更にもう1つ悍ましい経過がありました。

それは部屋の電気。


信二は眠る前、電気をつけたままにしていました。

ストーリーからもわかるように、

そのアパートの電気はリモコンで操作するもので、

電気をつけたり消したりするための紐が付いていません。


そしてそのリモコンは、

クローゼット側の棚に置かれていました。

それをベッドから起きてわざわざ取りに行くのが面倒臭く

信二はそのまま眠りにつきます。


でも起きた時、信二は電気をつけて、

テレビをつけました。


リモコンが遠い所にあって1度も触っていないのに

なぜその部屋の電気が消えていたのでしょう?


そう、この電気は朱理が消していたのです。

実はこの時、

朱理は信二の部屋のクローゼットの中にいました。


佳代子を殺害した後、

そのままいつも通りに信二の部屋を訪れた朱理。

信二はまだ帰っていなかったので、

合鍵を使って部屋に入っていたのでしょう。


でもやはり罪の意識で怖くなったのでしょうか?

それでとりあえず身を隠していたのでしょうか?


それとも…

いきなり出てきて信二を驚かそうとしていたのでしょうか?


佳代子ばかりがサイコパスだと思っていた信二でしたが、

実は朱理の方が強烈なるサイコパス…

きっと余りに身近過ぎて、

信二はそれに気づく事が出来なかったのでしょうね。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=Au0E4puVE64&t=301s

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見えない狂暴 天川裕司 @tenkawayuji

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